Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

3日目《予定〈ライブリハ〉》 4日目《予定〈ライブ(夜)〉》 5日目《予定〈ライブ(昼)〉》

6日目《予定〈なし〉…休養日》

沖縄でのライブを大きなトラブルもなく無事に終え、ようやく沖縄で初めての一日休暇となった日…
宿で朝ご飯を食べ終えた夏樹と菜々は、プロデューサーの送りでゆいレールの駅にいた。
「夏樹も菜々も、本当にここで良かったのか?」
夏樹「ああ、ありがとなプロデューサー。ここに送迎が来てもらうことになってるからさ」
「くれぐれも安全運転で気を付けて。東京とかと違って多少道が滑りやすいのは頭に入れておいてな」
夏樹「命預かってるからな、そこはちゃんと心得とく」
菜々「プロデューサーさんは李衣菜ちゃんとみくちゃんの方をお願いしますね」
夏樹「ああ、あの二人昨日もテンション高いままで寝るの遅かったみたいだったからな」
菜々「あれはテンション高かったの一言で良かったんでしょうか…」
「ん?何かあったのか?」
夏樹「ま、行ってみれば分かると思うぜ」
「よく分からんけど了解したよ。それじゃあ18時にまたここに迎えに来るからな」
夏樹・菜々『はーい』
プロデューサーが帰ったそこに入れ替わりで送迎の車が到着した。
ショップ店員「予約の木村様ですね、確認のため免許証をお願いします」
夏樹「あ、はい」
ショップ店員「木村…夏樹…はい、確かに。ではショップまでお送りしますので、そちらは同乗者の方ですか?」
菜々「はい」
ショップ店員「でしたらご一緒にどうぞ車にお乗りください」
二人は送迎の車へと乗り込んだ。
 
ショップ店員「免許証の確認をいたします。コピーを頂きますがよろしいでしょうか」
夏樹「はい、お願いします」
ショップ店員「では保険に関する書類ですのでこちらに目を通してください」
夏樹「はい…あの、この免責とNOCについて詳しくお願いします」
ショップ店員「こちらですね、まずNOCは………」
 
ショップ店員「………こちらでの手続きは以上です。何か他にご質問はありますでしょうか」
夏樹「ありがとうございます。これ以上は特にありません」
ショップ店員「では装備は一式お持ちとのことですので、お貸しするバイクの方へご案内いたします」
夏樹「菜々、行くぞ」
菜々「はーい」
 
ショップ店員「お貸しするのはこちらのバイクです」
夏樹「いつもと同型ってわけにはいかなかったけど、同じ会社のが残ってて良かったですよ」
菜々「そうだったんですか?ナナ、よく分からないですけど…」
ショップ店員「では、返却予定時間にお待ちしています。それとあの…」
夏樹「はい?」
ショップ店員「一昨日のライブ、最高に気持ちよかったです」
菜々「えっ…店員さん、来てくれてたんですか?」
夏樹「ありがとうございます、生の声が聞けて嬉しいですよ」
ショップ店員「行く前に突然すみませんでした。では良い旅を」
夏樹「こちらこそ大切に乗らせてもらいます。グローブはしたし…よし、メット被ったら行こうぜ」
菜々「はいっ、夏樹さん!今日は楽しみましょう!」
二人を乗せたバイクがショップから走り出していく…
………
さてその一方で李衣菜とみくはというと…
みく「んんっ…もう朝かにゃ…」
まだ寝惚け眼のみく。木曜のリハ、金土のライブと打ち上げを終えてすっかり力が抜けているようだ。
みく「結構太陽昇ってるんだね…ふにゃあぁぁぁぁ…」
一つ伸びと大あくびをしたみく。その横では…
李衣菜「…くぅ…すぅ……んぅ…」
みく「李衣菜チャン、まだ寝てるけどかーわいいにゃ。昨日までお疲れさまだったモン」
サラサラサラサラ
みくはそっとその髪を撫でてあげた。
みく「…今何時だろ…………え゛っ!?もう9時過ぎてる!?朝ご飯終わってるにゃ!」
※0日目でも書きましたが、東京と沖縄の日の出は夏でおよそ1時間の差があります※
李衣菜「もう何みくぅ…うるさいよー」
みく「李衣菜チャン起きるにゃー!もう朝ご飯終わってるんだよー」
李衣菜「えー?んーっ!今何時ー?」
李衣菜もようやく伸びをして起き上がった。
みく「もう9時過ぎてるんだにゃ…どうしよう」
李衣菜「まだ太陽あんな場所じゃん…嘘吐いてるでしょ」
みく「みくも太陽の位置で勘違いしてたけど本当にゃ、今テレビ点けるから」
ピッ
李衣菜「あー、本当だ。ご飯って9時までだよね」
みく「みく、もうお腹ペコペコだよ」
李衣菜「しょうがないからプロデューサーに頼もうか」
みく「Pチャンゴメンなさいにゃ…」
李衣菜は枕元に置いてあったスマートフォンでプロデューサーに電話を掛けた。
李衣菜「あれ?出ない…どうしたんだろ」
みく「李衣菜チャン、繋がらない?」
李衣菜「もしかして運転中かな、一回切っておこうっと」
みく「こんな朝早くからみく達置いてどこ行ってるんだろうね」
♪〜
李衣菜「あ、掛かってきた。もしもーしプロデューサー?」
「もしもしおはよう、李衣菜ゴメンな。ちょうど今出先だったんだ」
李衣菜「おはようプロデューサー。やっぱり運転中だったんですね」
「それでどうした?何かトラブルでもあったか?」
李衣菜「トラブルってほどじゃないんですけど…さっき起きたばっかりで朝ご飯食べ損ねちゃって…」
「そういうことか。今スーパーに停まってるから買っていくよ」
李衣菜「ありがとー。あ、みくちゃんに代わるね」
みく「Pチャンおはようにゃ」
「おはようみく」
みく「あのみくはお魚のだけはやめて欲しいなって」
「それは分かってるから心配するな」
みく「それでどうして外にいるの?」
「ああ…ちょっと野暮用でな。買ったら10分くらいで帰れるから待っててな」
みく「李衣菜チャン、10分で来れるって。李衣菜チャンにもう一回代わるね」
李衣菜「プロデューサー、どこで待ってればいいですか?」
「3階の練習してた場所あったからそこで待っててもらえれば持ってくよ」
李衣菜「はーい、じゃあ待ってます」
電話を終えて通話を切った李衣菜。
李衣菜「3階のライブ練習してたとこに持ってきてくれるって」
みく「ちゃんと財布とかも忘れずににゃ」
李衣菜「うん」
 
「ただいまみく、李衣菜」
みく「Pチャンお帰りなさいにゃ」
李衣菜「プロデューサーおかえりー」
「はいこれ、色々買ってきたからそっちで選んでくれないか?」
みく「はーい。みくはサンドイッチにしようかにゃ」
李衣菜「私はおにぎり貰おうっと」
みく「あ…Pチャン、お金はどうすればいい?」
「それくらいなら仕方ないから、領収書貰ってあるし後でちひろさんに経費で落としてもらう」
みく「ありがとにゃ…」
「でもどうしてこの時間まで寝てたんだ?」
李衣菜「ライブまでやってたぶん疲れがどーっと出ちゃったんです」
みく「だって李衣菜チャン結構動いてくれたモンね」
「ライブはみんな最高のパフォーマンス見せてくれたからな」
みく「Pチャンありがとにゃ」
李衣菜「客席のボルテージも凄かったね。アツく盛り上がれました」
「今日はここまでの疲れを取って欲しいっていう休養日だから自由にしてていいけどさ」
みく「今日はPチャン何してるの?」
「ここまでの4人の仕事について事務所への報告と今後の打ち合わせ以外は俺も休養日だよ」
李衣菜「そういえばなつきちと菜々ちゃんってどこ行ったんだろ。プロデューサー知らないですか?」
「え?居ないってことは二人でどこか行ったんじゃないか?」
みく「そっかー、李衣菜チャン今日はどうする?」
李衣菜「んーっ!ちょっと休んだら宿題でも片付けようかなー」
みく「あー、そうだね。持ってきたのに全然やってなかったモン」
「出かけたくなったら言ってくれよ。時間が合うようなら連れていくからさ」
李衣菜「えっ、いいんですか?プロデューサー」
「レンタカーも借りてあるしそれくらいはな」
みく「それじゃあ食べたら急いで宿題片付けるにゃ!」
李衣菜「うんっ!」
 
自分達の部屋へと戻ったみくと李衣菜。
みく「李衣菜チャンは何やるのにゃ?」
李衣菜「私は体育はもう出来るようになってるし、5教科の半分ずつと絵画も今日やっちゃいたいな」
みく「みくは課題プリント全部を粗方片付けちゃおうかなって。李衣菜チャン、難しいところは教えてにゃ」
李衣菜「えー」
みく「だって李衣菜チャン、学年では先輩でしょー」
李衣菜「分かってるって。教えられるとこなら教えるから…音楽音楽っと」
みく「こんな時夏樹チャンとナナチャンがいてくれたらねー」
李衣菜「私にも教えてくれる先輩がいたのに。本当に二人ともどこ行ったんだろう」
みく「…ってそういえばサトウキビ畑行く前に二人って何か言ってなかったかにゃ」
李衣菜「予算がどうとか当日の天気がどうとか…言ってたね」
みく「もしかして、あのナナチャンのパンツって…!」
李衣菜「あのなつきちが別に持ってた大きなカバンの中身って…!」
みく「きっとそうだよ。あれって中にはきっと一式入ってて…つまりは…」
みく・李衣菜『あの二人、バイク乗りに行ってるんだ!』
みく「ということは、さっき電話でPチャンが言ってた野暮用って…」
李衣菜「たぶん二人をショップとかに送りに行ってたんだね」
みく「ナナチャン達ってみく達より青春してる気がするにゃ」
李衣菜「なつきち達はなつきち達の青春、私達は私達のさ…」
チュッ
向かい合わせに座っていた李衣菜は身体を伸ばしてみくに口付けをした。
李衣菜「青春しようよ」
みく「もう…李衣菜チャンったらぁ…」
李衣菜「宿題…始めよっか」
みく「そだね」
二人がペンを走らせる音、それのみがしばらくの間部屋に流れていた…
………
夕方…
夏樹「んあーっと、一週間近く乗ってなかったから今日は気持ち良かったぜ」
菜々「んーっ…もう沖縄に来てそれくらい経ったんですねえ」
大浴場の浴槽の中で伸びをした二人。
夏樹「明日からまた撮影か」
菜々「リフレッシュできましたし気を引き締めて頑張りましょう、夏樹さん」
そこに…
ガラガラガラ ガラガラガラ
李衣菜「あー、なつきち達いたー」
みく「ナナチャン達にゃー」
夏樹「おう、だりー達か。珍しいな、アタシ等と同じ時間帯なんて」
みく「宿題やってから明日の撮影場所でちょっと二人で楽しんでたにゃ」
菜々「明日?明日はプールと…あっ、親水公園ですか」
李衣菜「足だけ入れる水辺もあったから暑かったしちょうど良かったよ」
みく「日曜日だから子供たちも多かったにゃ」
李衣菜「公園部分も結構広かったし、明日はどんな撮影になるか楽しみだな」
夏樹「沖縄に居られるのもあと明日から3日半だし、もう少し思い出作れればいいな」
菜々「そうですね」
李衣菜「ところでさー、なつきち達は今日どこ行ってたのー?」
菜々「え?プロデューサーさんは李衣菜ちゃん達に何か言ってませんでした?」
みく「何にも言ってくれなかったにゃ。何してたかはみく達の想像で合ってるとは思うけど」
夏樹「ま、おそらく想像の通りだ。沖縄の風は気持ち良かったよな、菜々」
菜々「はい!夏樹さんの後ろで感じた空気は最高でした」
李衣菜「菜々ちゃんいいなー。なつきち最近全然乗せてくれないもん」
夏樹「アタシにも乗せる人を選ぶ権利ってのがあるんだからな」
みく「李衣菜チャン…可哀そうだけどこれはしばらく無理そうだにゃ…」
李衣菜「みくちゃーん…」
みく「ナナチャン、サトウキビ畑の時のパンツもそういうことだったのかにゃ?」
菜々「バレちゃってました?はい、これのためだったんです」
李衣菜「なつきちのあの荷物もだよね?」
夏樹「ああ、あれの中身はグローブとか二人分のヘルメットだったぜ」
みく「準備万端で来てたんだにゃ…」
李衣菜「撮影明けも行くの?」
菜々「今のところその予定でいいんですよね?」
夏樹「天気とアタシ等の体調次第だけどな…さてっと、明日は水着だから一応やっとくか」
菜々「スタイリストさんも女性ですけど、その場でやってもらうのは恥ずかしいですもんね」
夏樹「手伝ってもらえるか…?」
菜々「もちろんです。その、ナナのもお願いします…」
夏樹「ああ………」
みくと李衣菜も二人が何をしているかを見て、慌てて自分たちも思い出したかのようにそれをやり始めていた…
 
6日目夜/7日目へつづく
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2016・07・31SUN
飛神宮子
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