Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

6日目夜

その夜のそれぞれの部屋。
李衣菜とみくの部屋では…
みく「こっちでやる宿題粗方片付いて良かったにゃーっ!」
李衣菜「私もとりあえず残りは戻ってからで充分になったー!」
みく「李衣菜チャン必死だったモン。表情が鬼気迫ってたにゃ」
李衣菜「アハハ、何かゴメンね」
みく「でもこれで撮影後の休みはかなり自由にできそうだね」
李衣菜「うん。そっちの日こそプロデューサーにどっか連れてってもらおうよ」
みく「今日は行けなかったからそうしよっ」
李衣菜「あの水族館は…全く反対側なんだっけ」
みく「ここからだと本当に沖縄縦断になっちゃうみたい」
李衣菜「でも沖縄らしい場所へ、宿の人とかに聞いて行って見たいな」
みく「うんっ、残り少ないけど楽しめればいいにゃ」
李衣菜「あと帰る日入れて4日かあ」
みく「長いようで短かった気がするねー」
李衣菜「ライブまでは本当に駆け抜けちゃった感じだもん」
みく「今でもまだファンの歓声が耳に残ってるよ」
李衣菜「菜々ちゃんも可愛かったね。ファンの声凄かったし」
みく「夏樹チャンのギターもかっこ良くて、本当にアスタリスクに加わってくれて良かったにゃ」
李衣菜「私達も負けらんないね!」
みく「もちろんにゃ!」
チュッ
二人は同意の印という名の唇を互いへ押した。
みく「にゃはっ、自然にしちゃったね」
李衣菜「あー…みくちゃんは嫌だった?」
みく「ううん。李衣菜チャンだから…構わないよ」
李衣菜「ああもう!やっぱりみくちゃんが一番可愛いっ」
みく「李衣菜チャンだってみくには一番かっこいいにゃっ!」
李衣菜「みくちゃん…」
みく「李衣菜チャン…」
見つめあう二人。ただそれは長くは続かなかった。
みく「あーっ!」
李衣菜「へ?いきなり何なのみくちゃん」
みく「いくら李衣菜チャンがせっかちサンでもその前に、ちゃんと明日の準備してからにゃ!」
李衣菜「そっか、すっかり忘れてたよ…ってその言い方は酷くない?」
みく「そんなこと言って、いっつも李衣菜チャンの方からがっついてくるのに…」
李衣菜「それは…みくちゃんの時だってあるじゃん」
みく「お互い様なのにゃ」
李衣菜「まあいいや。それで明日必要なのは何だっけ?」
みく「明日は…」
クローゼットの中を見るみく。
みく「これがみくので、これが李衣菜チャンかな?」
まずは水着が二着出された。
みく「それから…これで用意してもらったのは最後だにゃ!」
みくがクローゼットから出したのは…
みく「はい李衣菜チャン。今度こそは忘れずに書いてこうねっ」
李衣菜「名前書く用のペンはどこだっけ」
みく「えっと…あ、一緒に箱も入ってたにゃ。たぶんこの中に…あったっ」
李衣菜「また書いていかないで何か言われたくはないもんね」
みく「うん。はい、李衣菜チャン」
李衣菜「ありがとー」
みく「これ着たらブルマの時より何か言われちゃうかもにゃー」
李衣菜「水着の時言われてたからこれだともっとかも」
みく「本当に今でも学校で着るようなのだモン。ブルマはそうでもないけど」
李衣菜「その違いって大きいよね。他の人のでも昔見てたってだけで想像ができちゃうし」
みく「想像力が強い人はそれを制服着てるみく達にでも頭の中で転写しちゃうんだって…」
李衣菜「はいペン、みくちゃん。…このスクール水着もプロデューサーの趣味とかなのかな?」
みく「…っとビニール剥がして…。グラビアのコンセプトはPチャンが打ち合わせたのかにゃ?」
李衣菜「最初はそのはずだよ。私達が参加したのはある程度固まってからだし」
みく「ということは、Pチャンとか担当の人の趣味…かもしれないね」
李衣菜「プロデューサー…着るのは私達なのに…」
みく「美波チャン達みたいに変な小道具あるよりはマシだと思ってやろうにゃ」
みくは李衣菜と自身のをラックへと掛けた。
李衣菜「…そうだね…ランドセルとかセーラー服とかハイソックスとか…」
みく「あれってカメラマンさん達の趣味丸出しで考えたんだって…」
李衣菜「あの後しばらくは目が死んでたよ、美波さん達…」
みく「遠い目してたね…」
李衣菜「私達はそんなことないようにちゃんと言うとこは言おうね」
みく「うんっ、李衣菜チャン…」
李衣菜「ねえ…みくちゃん、今何か想像してたでしょ」
みく「そ、そんなことないにゃ。そういう李衣菜チャンもそんな顔してるしー」
李衣菜「私はその…もうっ!」
チュウッ
李衣菜はみくのその唇を自らの唇で埋めた。
李衣菜「はあっ…みくちゃんをみんなのに重ね合わせちゃったのは本当だもん」
みく「ぷはっ…みくも李衣菜チャンで…想像してたにゃ…」
李衣菜「みくちゃん…」
みく「李衣菜チャン…」
今度こそその見つめあいの火種は情欲の温度を上昇させていった…
 
一方の夏樹と菜々の部屋では…
夏樹「宿題か…忘れてたわけじゃないんだけどな」
夏樹はスーツケースの中から本や書類の山を取り出した。
菜々「どうします?今からでもやりますか」
夏樹「菜々の邪魔にならないか?」
菜々「気にしないでください。それに今日はナナも楽しんじゃったんですから」
夏樹「もし分かんないところがあったら教えてくれよ」
菜々「ナナに分かるような問題でしたら構いませんよ」
夏樹はプリントに手を付け始めた。
菜々「ナナは明日の準備もしてますね」
ナナは明日の撮影の準備のため、クローゼットを覗いた。
菜々「明日は、用意してもらった水着とこの水着と…濡れて汚れてもいい服装なので…」
そのまま手際よくラックへと掛けていく。
菜々「夏樹さーん、明日の服はどうしますー?」
夏樹「ああ、鞄のそっちに入ってるTシャツとジーパン出しといてもらえればいいや」
菜々「それじゃあ洗濯したのと入れ替えておきますねー」
夏樹「ありがと、頼むー」
菜々「それとこれに名前書いてください」
菜々は夏樹のところにペンとある物を持ってきた。
夏樹「明日か…」
菜々「はい…屋内の方で使うんですよね」
夏樹「来るのは分かってたから覚悟は決めてたけど、こうして見るとなあ」
菜々「そうですね。ナナはお腹出ないのでまだマシに思ってましたけど…後で見たら結構恥ずかしかったです」
夏樹「菜々はこっちは仕事での経験者だったか。よし、木村…っと、はい菜々」
菜々「こっちに掛けときますね、ナナも…今回は体操着が漢字なのでこっちも漢字で…よしっ」
夏樹「あー菜々、ここ分かる?」
菜々「ちょっと待ってくださいね…はい、えっと確かこれは…教科書あります?」
夏樹「ほい」
菜々「この辺の…はい、これを使えばできたはずです」
夏樹「ああ、どうりで。ちょうど仕事で休んだとこだった」
菜々「学生でアイドルの人はそこらへんが大変そうですよね」
夏樹「こっちも好きでやってることだしさ、両立させるのに必死だぜ」
菜々「頑張ってください、夏樹さん」
チュッ
菜々は夏樹の頬へとそっと唇を付けた。
夏樹「ああ…」
その唇に発奮したのか、持ってきた課題の半分程度を(菜々との共同作業で)終わらせてしまった夏樹であった…
 
7日目/7日目夜へつづく
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2016・07・31SUN
飛神宮子
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