Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

2日目《予定〈撮影〉…午前 チア+テニス/午後 サトウキビ畑》

みく「ふわぁ〜…まだ眠いにゃ…」
菜々「もっとシャキッとしましょう!ほら李衣菜ちゃんも!」
隣の部屋へ朝ご飯の誘いのために起こしに来たみくと夏樹だったのだが…
李衣菜「だってぇ、昨日はみくちゃんが寝かせてくれなかったからー…」
夏樹「お前たち、程々にしとけよ。お盛んなのはいいけど、隣の部屋まで聞こえてるんだぜ」
菜々「朝ご飯に誘おうと呼んだらこれって、どうしましょうなつきちさん」
夏樹「首根っこひっ捕まえてでも連れて行こうぜ。時間も逆算するといい位だろ」
………
夏樹「やっぱりアタシはチアリーディングってガラじゃないな。似合ってはいないだろ?」
菜々「そんなことないですけど…髪形ちょっと下ろした方がいいかもしれないですね」
四人の姿はテニスコートのスタンドにあった。その身はチアリーディングの衣装に包まれている。
夏樹「そっか、リーゼントじゃ合わないな」
李衣菜「私あのタワーみたいなのやってみたいなー」
みく「あれはこの人数でしかも未経験のみく達には危険すぎにゃ!」
菜々「ケガでもしたら、ライブ出られなくなっちゃいますよ李衣菜ちゃん」
李衣菜「分かってる、冗談だってば」
夏樹「でも全員で何かの振りは合わせたいな」
李衣菜「昨日そこまで打ち合わせできなかったもんね、どうする?」
みく「ライブでやる曲はどうかにゃ」
菜々「合わせられる曲は…、あ!○○○なら同じ動きでいけそうじゃないですか?」
夏樹「カメラマンとかと要相談だけどいいんじゃないか」
李衣菜「でもあのダンスってこの衣装だとスカート大丈夫かな?」
菜々「下には一応アンスコ履いてますけど…ターンの時に浮いちゃいますかね」
みく「それくらいはサービスショット…かにゃ。カメラマンさんに上手く撮ってもらおう」
李衣菜「そうだね。それを気にしてたらいい写真撮ってもらえそうにないし」
みく「試しにちょっとターンしてみよっか」
くるんっ
みくは試しに横に一回りした。
みく「どうかにゃ?」
夏樹「んー…素材としてはそんなに軽くないんだな」
李衣菜「それでも結構浮くね。遠心力かなあ」
菜々「速いターンだと確実に見えそうですね」
李衣菜「でもチアリーダーといえばそういうターンもあったりするからね」
みく「これはカメラマンサンに工夫してもらうにゃ」
………
夏樹「菜々は硬式やったことあるか?」
菜々「授業で一応やりましたけど、そのくらいですね。みくちゃん達はどうです?」
李衣菜「私も授業くらいかな。こういう服装なのは新鮮だね」
みく「みくもそうにゃ。授業の時はジャージとかだもんね」
テニスコートには更衣室での着替えを終えて白いテニスウェアに着替えた四人がいた。
夏樹「本当に今日はアタシに似合わない衣装が続くもんだぜ」
菜々「もう、なつきちさん似合わないなんて言っちゃダメです!」
李衣菜「こんな衣装、ロックじゃないよ」
みく「だから李衣菜チャン、そのロックって何なのにゃ!」
菜々「なつきちさんは髪を下ろしたんですから、ヘアバンドみたいのすれば似合いそうですけどね」
夏樹「…っつったってここに無いからな…そこらへんはメークさんか小道具さんに聞いてみるか」
李衣菜「そういえばチーム分けは昨日と一緒でいいよね?なつきち」
夏樹「ダブルスでペアが変わったら不思議がられるだろうしそれでいいぜ」
みく「またナナチャン集中砲火するにゃ」
菜々「やめてくださいよぉ…昨日だって結構腰に来たんですからぁ…」
夏樹「菜々のことはアタシが守ってやるから心配するな」
菜々「あ、ありがとうございますなつきちさん…」
李衣菜「何かそのなつきちの言い方って恋人っぽいねー」
夏樹「もしアタシがみくに集中砲火するって言ったら、だりーだってそう言うだろ?」
李衣菜「そ、そりゃもちろん言うけどさ…ん?」
菜々「なつきちさん!な、何言ってるんですかぁ」
みく「やっぱり…夏樹チャンとナナチャンって…」
菜々「…どうします?なつきちさん…。みくちゃんもああ言ってますし…」
夏樹「…気付かれたなら隠してても仕方ないだろ。別に知られて困ることじゃないしな」
菜々「そうですね…聞かれたら答えるつもりでしたし」
李衣菜「なつきちと菜々ちゃんもだったんだ…」
夏樹「ああ、だりー達と一緒だ」
菜々「あらたまって話すと恥ずかしいですね」
夏樹「言っとくけどみく達よりはずっと健全な付き合いだからな」
みく「そういえば夏樹チャン達の噂は殆ど聞かなかったにゃ」
菜々「ナナ達のこと知ってるのは四、五人くらいしかいませんからね」
夏樹「お前たちみたいに事務所のアイドル部門中に知られるようなこと殆どしてないぜ」
李衣菜「それはみくが悪いんじゃん!」
みく「李衣菜チャンの方が悪いにゃ!」
夏樹「ああ、これいつものか?」
菜々「そうですね、見てましょうか」
みく・李衣菜『………もう解散だ(にゃ)!フン!』
夏樹「昨日は見なかったのにな、このコント」
菜々「これで何回目でしょうね、少なくとももう百回は見ている気がしますけど」
夏樹「まあいいさ。二人とも、アタシ達もそういうことだからな」
みく「今までの夫婦っぷりはやっぱりダテじゃなかったんにゃ…」
菜々「夫婦っぷりって…みくちゃんったらもう〜」
夏樹「ほら、そろそろ撮影みたいだから行こうぜ菜々」
菜々「…はい、夏樹さん」
夏樹「あ、言っとくけどこれは秘密にしといてくれよな」
夏樹と菜々は手を繋いでネットの向こう側のカメラマンの方へ向かって行った。
李衣菜「なつきち達、凄いラブラブだったんだね…」
みく「みく達の関係が浅くて子供っぽく見えてきたにゃ…」
李衣菜「私達もああいう風になれるかな?」
みく「なれるかじゃなくて…なろうにゃ!」
李衣菜「うんっ…!」
夏樹「おーい、だりー達始めるぜー!」
菜々「みくちゃん、早く撮影始めちゃいましょー!」
李衣菜「オッケー!やろうなつきち!」
みく「はーいなのにゃ!」
………
みく「午後の撮影って何だろうね?」
李衣菜「長いパンツでって指示だっけ」
李衣菜とみくの二人は宿の部屋で午後の撮影に向けて着替えていた。
みく「行き先は藪とか草むらの中とかかにゃ?」
李衣菜「そういう恰好って言ったらそうなるよね」
みく「パンツどうしようかにゃ…」
李衣菜「みくちゃんどうしたの?」
みく「一応あるんだけど…汚したくないヤツなのにゃ。ショーパンじゃないと新しいこの1本しかなくて」
李衣菜「それなら私の貸すよ、もう1本あるしさ」
みく「いいの?李衣菜チャン」
李衣菜「私も基本はスカートだけど、お母さんが2、3本入れてくれてたみたい」
みく「高校生なんだから自分で準備しようにゃ…」
李衣菜「途中まで自分でやってたんだよ。でもさーこういう時って親が出てこない?」
みく「まあそれもそれで分かるにゃ、親としては心配なんだよね」
李衣菜「前に北海道行ったじゃん。その時なんてもっと酷かったんだから」
みく「北海道ってあのソーランの時?」
李衣菜「それそれ。その時なんか私ほとんど準備させてもらえなかったんだよ」
みく「李衣菜チャンは実家通いだからねー」
李衣菜「それでさー、荷物の詰め方が上手いんだよね」
みく「それも分かるー。同じように入れようとしても元に戻せないにゃ」
李衣菜「結局さ、北海道でもう一つバッグ買ってったら怒られちゃって」
みく「そういうもんだにゃ」
李衣菜「それでどれにする?私は余ったのから選んで履くからさ」
みく「李衣菜チャンそれでいいの?」
李衣菜「似合わないの着ても何か可哀そうに見えるだけじゃん。みくちゃんがそういうこと思われてほしくないし…」
みく「それなら李衣菜チャンが選んで」
李衣菜「えっ…」
みく「李衣菜チャンが選んだのに従うにゃ!李衣菜チャンが似合うって言ってくれるだけで嬉しいモン」
李衣菜「…分かった。それなら………これ!このジーパンがいいかなっ!」
みく「李衣菜チャンは?」
李衣菜「私はこっちのジーパンにするけど?」
みく「上も似たような恰好だからお揃いになりそうだね」
李衣菜「いいんじゃない?特にそうしちゃダメって指示も無いんだし…ところで履けるよね?」
みく「んしょ…んしょ…大丈夫、バッチリにゃ」
李衣菜「私たち、下だけはお互いの衣装が着られるからね…上はそうでもないけど」
みく「まーた昨日みたいなこと言ってー」
李衣菜「……うん私も履けた、これで大丈夫かな」
みく「李衣菜チャン行く準備は大丈夫?」
李衣菜「あとは鞄に持って行くもの入れれば行けるよ」
みく「特に何も用意しなくていいって言われたもんね。じゃあ行こっか、もうすぐ集合時間にゃ」
李衣菜「うんっ」
 
夏樹「お前らお揃いなのかよ」
みく「結果的にそうなっただけにゃ」
玄関へと集合して車を待っている四人。
李衣菜「ほら、シャツの柄とか違うでしょなつきち」
菜々「色まで一緒だからお揃いに見えちゃいますね」
夏樹「それだりーのだろ、みく」
みく「へ?どうして…」
夏樹「その柄どっかで記憶があるんだよ。だりーだってそんなに履かないだろ?」
みく「李衣菜チャン意外とスカート多いよね」
李衣菜「意外とはなんだよー。私だって女の子だもん」
夏樹「アタシぐらいなもんさ、パンツとスカート半々くらいになってんのさ」
李衣菜「そう言うなつきち達は…そのパンツって菜々ちゃんの?」
菜々「はい。長いのは2本ほど入れてきてましたよ」
みく「確かに夏樹チャンがそんな柄のパンツを持ってる気がしないね」
李衣菜「でも菜々ちゃんってスカート以外見たことないんだけど…ここに来る時だってスカートだったし」
菜々「まあ色々必要になるんじゃないかって思ってまして。ね、夏樹さん」
夏樹「ま、それは追々だ。イレギュラーだったけど必要な場面が来ちまったしさ」
李衣菜「あー怪しいんだー」
みく「夏樹チャンとナナチャン、何かしようとしてるにゃ」
夏樹「それはいいだろよ。でも調べたけど近くに無いんだよなあ…ホテルの人とかに聞いてみるかな」
菜々「予算はどれくらいです?」
夏樹「2万くらいまでならいいかなって思ってるけどな」
菜々「それならナナも出しますよ。一緒に行くんですから」
夏樹「それは助かるぜ、あとは当日の天気だな」
菜々「…はい、それは祈りましょう」
夏樹「それでどうしてみくがだりーの履いてるんだ?」
みく「げっ…この話、忘れてると思ってたにゃ…」
李衣菜「いやー、みくちゃんが持ってきたのが汚れるの嫌だって話でさー」
みく「まだ下ろして二回くらいしか履いてないのだったにゃ。しかも白だし…」
菜々「それならしょうがないです。でもみくちゃんって李衣菜ちゃんの着られるんですね」
李衣菜「だって私達、身長とウエストとヒップ同じだしー」
夏樹「身長同じなのは見て分かるけど、そっちもだったのか」
みく「うん。だから下の衣装は大体同じの履けるんだにゃ」
菜々「この二人ってこういう所もよくできてるんですね」
夏樹「巡りあわせってあるもんだな…」
行った先のサトウキビ畑で一番浮かれていたのは、実はサトウキビに興味を持っていたプロデューサーだったというのはまた別のお話である…
 
2日目夜/6日目へつづく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
←1日目へ ←1日目夜へ 2日目夜へ→ 6日目へ→ あとがきへ→
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2016・07・31SUN
飛神宮子
短編小説に戻る