Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

1日目《予定〈撮影〉…午前 陸上競技場〈陸上競技・体力測定〉/午後 体育館〈体力測定・バドミントン〉》

菜々「えいっ!」
タタタタタタタザッ パシャパシャパシャ ストンっペシャっ
夏樹「お、思ったより跳んでるじゃんか菜々」
菜々「へへっ…最後尻餅になっちゃいました…どれくらいでした?」
夏樹「5m半ってとこだな」
陸上競技用のユニフォームで走り幅跳びの場面を撮ってもらっていた菜々と夏樹の組。
菜々「もうちょっと昔は跳べたんですけどね…」
すくっ パンパンッ
菜々は立ち上がって衣装に付いた砂を払った。
菜々「△△さーん、どうでしたー?」
カメラマン「二人とも角度を変えたいからもう1回お願いできるかしらー」
夏樹「よっし、じゃあ行くか」
菜々「はいっ」
 
タタタタタタ ザザッ
みく・李衣菜「よっ!と」 「やっ!」
カシャカシャカシャ タタタタタタ
カメラマン「二人とも良かったわー。角度を変えて撮るからもう1回さっきのところからお願いできるー?」
みく「はーいにゃ。李衣菜チャン、行くよ」
李衣菜「はーい」
一方で李衣菜とみくの組はハードルの場面を撮影していた。
李衣菜「またさっきのスタート地点で良いんですか?」
カメラマン「スピードが乗れる距離ならもうちょっと調整してもらってもいいわね」
李衣菜「みくはどう?」
みく「もうちょっと短い距離でも出せそうかも」
李衣菜「それならもうちょっと短い距離にします」
みく「じゃあ行こっ、李衣菜チャン」
李衣菜「うんっ」
 
パンパンパン
撮影総指揮「はい、ここで一旦休憩しまーす」
撮影が一段落といったところで総指揮の声が響いた。
李衣菜「最後のリレーは辛かったぁ…」
夏樹「菜々、大丈夫か?午後までもちそうか?」
菜々「何とかこの休憩で回復できれば…はあ…」
李衣菜「200m全速力とか、体育祭以来だよね…」
みく「ライブで使う筋肉じゃないから大変だったにゃ…」
「四人とも陸上競技の撮影おつかれさま」
撮影総指揮「前川さん、多田さん、木村さん、安部さんお疲れ様でした」
四人『おつかれさまでしたー』
撮影総指揮「ここからは体操着で体力測定場面の撮影なので、更衣室で着替えしてからの休憩をお願いします」
菜々「分かりました。どれくらいの時間ですか?」
撮影総指揮「こちらの片付けと準備もあるので、10時半から撮影再開でお願いできますか」
夏樹「了解。もう30分無いし着替えて軽く給水してくるか」
四人は撮影班に挨拶をしてプロデューサーと更衣室へ向かい始めた。
李衣菜「でもかっこ良かったよなつきちの走り高跳びー」
夏樹「おう、ありがとなだりー。あの高さは緊張もしたんだぜ」
みく「ナナチャン100mの最後の方、バテバテだったにゃ」
菜々「2本も3本も走るなんて聞いてなくて…そのままリレーなんてみくちゃん達みたいに体力持たないんですよぉ」
みく「本当にナナチャン何歳なんにゃ…」
菜々「じゅ、17歳ですぅ…」
李衣菜「それで外で体力テストだと…立ち幅跳びとかハンドボール投げだよね」
菜々「さすがに持久走と50mはこれだけ走ったので勘弁して欲しいですねえ」
夏樹「あれだけ走った場面は撮影したし、これ以上は無いと思うぜ菜々」
菜々「それならいいですけどぉ…」
夏樹「夜はちゃんと風呂上りに脚と腕と腰のマッサージしてやるからさ」
菜々「ありがとうございます、ナナからもしてあげますからねなつきちさん」
みく「ナナチャンと夏樹チャンも仲がいいねー」
夏樹「まあお前達みたいな解散芸は最初の1回きりだからな」
李衣菜「むー、最近私達だって減ったんだからねなつきち」
菜々「減ったって…普通はやるようなものじゃないですよ、李衣菜ちゃん」
「まあこの沖縄での体調管理はこっちも気に掛けるけど、基本的には任せるからな」
菜々「プロデューサーさんもちゃんと休んでくださいねっ」
「わかってるって、ぶっ倒れたら代わりがいない状況だから自制するつもりだ。じゃあ俺は外で待ってるからな」
四人『はーい』
ガチャガチャ ガチャっ パチッ バタンッ
四人は電気を点けて更衣室へと入っていった。
夏樹「さてと…着替えるか」
菜々「そうですね、なつきちさんタオルでまずは汗を拭きましょう、はいどうぞ」
ジャッ ガバッ バッ
四人しかいないからとカーテンを閉めてユニフォームを脱いだ夏樹と菜々。
夏樹「サンキュ、菜々。しっかし暑かったなあ、早く水着の撮影に入りたいもんだぜ」
菜々「お腹はあまり出したくないですけど…ユニットのために頑張ります」
夏樹「ほい、タオルありがと…ってアタシが拭いたので菜々も拭くのか?」
菜々「だって勿体無いじゃないですか、まだ濡れていない部分もありますし。それに今日帰ったら洗いますから」
みく「…どうして二人ともそんな恥ずかしがらずに脱いでるのにゃ…」
夏樹「別にいつものロッカールームとか楽屋と一緒だろ?こんな着替えなんていつも見てるんだしさ」
李衣菜「なつきちはまだ分かるけど、菜々ちゃんは意外だったかも」
菜々「そりゃあもうこういう女子の多い更衣室での着替えは、メイド喫茶時代から普通にありましたし」
みく「納得したにゃ…」
菜々「あ、なつきちさん。脱いだのはこっちの袋に入れてください」
夏樹「衣装はそのままクリーニングに行くんだっけか」
菜々「明日の分までをまとめてプロデューサー行きですね。部屋戻ったら分けておきます」
みく「李衣菜チャン、こうやって立ってても時間の無駄だから着替えよ」
李衣菜「そうだね…」
李衣菜とみくもようやく観念したようだ。
夏樹「菜々、制汗剤使うか?」
菜々「ありがとうございます、ひゃんっ!いきなりは反則ですっ」
李衣菜「みんなスタイルがいいのが羨ましい…」
みく「なーに言ってるの李衣菜チャン、早く脱ぐにゃ!」
李衣菜「分かってるってもう…」
菜々「なつきちさん、靴も忘れないで替えて下さいね」
夏樹「そうだな、忘れるところだったぜ」
菜々「それにしてもなつきちさん、濃い緑の似合ってますね」
夏樹「菜々もあずき色のが似合ってるな。こういうのって裾はどうするんだ?」
菜々「シャツとかは中に入れますけど、体操着の裾は中に入れないですよ。普通の体操着とその辺は同じです」
夏樹「なるほどな、さすがに経験者の言葉はためになるぜ」
みく「へ?ナナチャン着たことあるの?」
李衣菜「ブルマってかなり前に無くなったって聞いてたけど」
菜々「あのー、みくちゃん達が何を勘違いしているか分かりましたけど、メイド喫茶のイベントで着たことあるだけですからね」
李衣菜「そっか…ってあれ?名前って…」
夏樹「だりーたちまさか資料ちゃんと見てないのか?」
李衣菜「えっと…そんなこと書いてあったっけ?」
菜々「自筆で書いてくださいって※印付きでちゃんと書いてありましたよ」
李衣菜「ど、どど、どうしようみく」
みく「そんなこと今言ったってしょうがないにゃ、休憩中にペンを借りてこないと…」
夏樹「だろうと思った。やっぱり持ってきて良かったな菜々」
菜々「まったくです。はいどうぞみくちゃん」
みく「ナナチャンありがとにゃ!こういう気配りが出来るのはやっぱりユニットの年長組だにゃ」
夏樹「それでだりーは紺色…これがオーソドックスなんだっけ?」
菜々「そうらしいです。ナナも店長に聞いて資料とか見せてもらったくらいですけど」
李衣菜「そうなんだー、次ペン貸してねーみく」
みく「前…川…っとこれで表裏オッケーだにゃ。はい李衣菜チャン」
李衣菜「ん、ありがと」
みく「んしょ…んしょ…っと、うわぁ…本当に下半身がこんなに身体のラインが目立つんだ…」
菜々「みんなそんな感じですよ。視線とか気にしたら負けだと思った方が楽ですから」
夏樹「みくのは赤…じゃなくてピンクか」
みく「こういうのもあるの?」
菜々「確かグラビアで愛梨さんとか履いてませんでしたっけ?メイド喫茶でも衣装としてありましたけど…」
みく「あー、愛梨チャン!見た気がするにゃ」
菜々「でもあくまでこれはコスプレ用だとは聞きました」
李衣菜「そうなんだ…よしっ、これで後ろもオッケー!あとはこれを着てっと…菜々ちゃんペンありがとう」
菜々「どういたしまして。これで休憩に入れますね…ペンも片付けてっと」
夏樹「これからメーク直しと休憩だな…ロッカーは片付けたしこれで大丈夫か」
李衣菜「ああ、私ロッカーに入れないとだから待ってっ」
みく「そういえばナナチャン、今回は漢字なの?」
菜々「はい。さすがに前のスク水の時のひらがなは、後で見直すとイタかったなって思いまして…」
李衣菜「私もいいよー」
みく「Pチャン、もう入っていいにゃー」
『いいのかー、入るぞー』
ガチャっ
「衣装は大丈夫そうだな。…って李衣菜にみく、シューズシューズ」
李衣菜「あっ、陸上じゃないからスパイクじゃないんだ」
みく「荷物に入れといたはずにゃ…李衣菜チャン紐直してなかったけどね」
李衣菜「昨日のうちに言ってくれれば良かったのにー!」
 
菜々「そういえば立ち幅跳びといえば面白いことを思い出しちゃいました」
李衣菜「んー…やっ!…あー、学校でやった5月のより記録は伸びなかったー」
幅跳び用の砂場で立ち幅跳びの撮影中の四人。
カメラマン「多田さん後でもう1回ね。今度は斜め正面からのが欲しいわ」
李衣菜「はいっ!」
みく「李衣菜チャン、さっきまであれだけ運動してたから休憩しても疲れは残ってるんだにゃ」
李衣菜「そうだけど、アイドルで少しは鍛えられたかなって期待してたんだよねー」
夏樹「それで面白いことって何だ?」
菜々「小学校の頃なんですけどね、ある男の子がなぜか後ろに跳んだんですよ」
みく「えっ…それって何があったのナナチャン」
菜々「その子が言うには勢いが変な方向についたそうですけど、さすがの本人もみんなも大笑いしてましたね」
夏樹「理由はどうあれ事実は小説よりも何とやらだぜ」
李衣菜「砂をならしたけど、次は誰だっけ?」
夏樹「アタシは跳んだし、だりーやったろ。それなら菜々の番じゃないか?」
菜々「そうですね。じゃあちょっと跳んできますっ」
………
菜々「んんっ!なつきちさん…早くっ…」
夏樹「あ、ああ…ええと…この位置だな。もう下ろしていいぜ」
菜々「ふう…何cmでした?」
夏樹「19.7だな、ちょっと硬いんじゃないか?」
みく「ナナチャン、それだと同年代とは思えないにゃ…」
菜々「う゛っ…」
李衣菜「よく腰痛めてる理由がなんとなーく分かったよ」
菜々「あう…みくちゃんに反論できません…」
夏樹「まあ次はアタシの頼む。だりー、脚押さえといてくれないか?」
午後に入り、そのままの衣装で体育館にて屋内での種目の撮影に入っている四人。
李衣菜「なつきち、押さえるよー」
夏樹「よし、いいぜ。菜々」
菜々「いつでもどうぞ」
夏樹「…よっ!と、菜々、頼む」
菜々「はい…ここですね。もういいですよ」
みく「夏樹チャン柔らかいにゃー…結構いい記録だったんじゃない?」
菜々「そうですね…26.8ですからナナと7cmも差があるんですか…」
李衣菜「菜々ちゃん、もうちょっと柔軟した方がいいみたいだね」
菜々「はい…善処します…」
 
李衣菜「バドミントンのペアはいつもの組でいいよね?」
みく「みくはいいけど、ナナチャンと夏樹チャンは?」
菜々「足手まといにならないように頑張ります…」
夏樹「そんなに卑下するなって菜々。こういうのは二人で協力だろ」
菜々「頼りにしてますね、なつきちさん」
李衣菜「やっぱりブルマじゃないと恥ずかしくはなくなるね」
四人は体操着から着替えてバドミントンのユニフォーム姿になっている。
菜々「あれを恥ずかしがらないのは卯月ちゃんとかそれくらいですから」
みく「確かに卯月チャンは可愛いって言い切ったにゃ」
夏樹「そう言い切れる度胸は凄いよな」
李衣菜「さて、喋ってるのもアレだからやろうよ。それでバドミントンのサーブってどうやるんだっけ?」
夏樹「シャトルをバックハンドで打つんじゃなかったか」
李衣菜「よく分かんないからそこは適当でいいんじゃない」
菜々「そうですね、サーブはシャトル持ってる李衣菜ちゃんお願いします」
李衣菜「はーい、いっくよー!」
菜々が集中攻撃を喰らうのを夏樹が何度も庇っていた理由をまだちゃんとは知らない李衣菜とみくだったという…
 
1日目夜/2日目へつづく
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
←0日目へ 1日目夜へ→ 2日目へ→ あとがきへ→
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2016・07・31SUN
飛神宮子
短編小説に戻る