Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

0日目《来沖日》

李衣菜「おっきなわーっ!」
みく「おきなわにゃーっ!」
「おいおい、落ち着けよお前たち」
那覇空港から出てきたみくと李衣菜とプロデューサー…
みく「そんなこと言ったってPチャン、夏の沖縄なんて最高だにゃ!」
李衣菜「しかもライブとグラビア撮影なんてテンション上がらない人はいないって!」
「二人とも何か忘れてないか?」
李衣菜「何か…」
みく「あったかにゃ…?」
「ほら後ろだよ後ろ」
キョトンとしている二人…そして後ろを振り返ると…
夏樹「だりー!みく!スーツケース!」
菜々「どうしてナナ達をほっといて先に行っちゃうんですかぁ!」
そこにはスーツケースを2つずつ引っ張ってきた夏樹と菜々がいた。
李衣菜「ゴメンゴメンなつきち!」
夏樹「こんなどでかいの忘れるなよまったく。本当に飛び出して行っちまうとはよ」
みく「ナナチャンゴメンだにゃ」
菜々「ナナそんなに体力無いんですからね…はあ…」
「はいはい、ここから宿までは車を頼んであるからみんな行くぞ」
四人『はーい』
プロデューサーと4人はそのまま空港の前に停まっていたワゴンへと乗り込んでいった。
………
「着いたぞー」
ガラガラガラガラ
宿泊施設に着き、プロデューサーを含め5人は車の外へと出た。
「ここが今回の沖縄滞在でお世話になる宿だ」
みく「うわ、すごいにゃ。スポーツの施設もいっぱいあって広いねー」
夏樹「ここでも撮影はあるってことだな?プロデューサー」
「予定はまたきちんと説明するが明日は晴れていれば午前午後ともここの施設で撮影だ」
菜々「海での撮影もあるんですよね?」
「ここから歩いても20分くらいで着く場所に海岸があるからそこでな」
李衣菜「へー、割と近いんだー」
「ま、まずはチェックインして荷物置いたら打ち合わせ場所に集合な」
四人『はい!』
………
「ここに居る間、全体との話し合いはこの部屋になるからな」
李衣菜「例えばどういうことですか?」
「毎日の確認、例えばライブ関係の打ち合わせや撮影の確認等が主になると思う」
菜々「個別の打ち合わせとかはどうなんでしょう?」
「この部屋は時間貸しだから、それ以外は宿泊するフロアの空いている部屋でする予定だ」
夏樹「撮影隊の人たちも泊まるんだよな?」
「ライブも含めて撮ってもらうからさ。そのために3階とみんな用の4階を貸切ったようなもんだし」
みく「346プロも太っ腹にゃ」
「今回は撮影隊の方に日程を合わせてもらったから、宿泊くらいはこっちで持たないとってことでな」
コンコン
「おっと、そう言ってるところで来たみたいだな」
ガチャっ
撮影総指揮「失礼します、○○です。打ち合わせはこちらでよろしかったでしょうか?」
「はい、今回もよろしくお願いします。みんなもう知ってるよな?今回もお世話になる総指揮の○○さんだ」
夏樹「木村夏樹です、今回もお世話になります」
菜々「お世話になります、安部菜々です」
李衣菜「今回もよろしくお願いします○○さん、多田李衣菜です」
みく「楽しみだったにゃ、よろしくお願いしまーす前川みくにゃ」
撮影総指揮「皆さん今回もよろしくお願いします。では今日のところは軽く明日からの撮影の打ち合わせでいいでしょうか………」
………
その日の夜…
みく「序盤が結構なハードスケジュールっぽいねー」
李衣菜「明日は午前が陸上競技場で午後が体育館かあ」
ここはみくと李衣菜の部屋。
みく「夜はライブの歌とダンスのチェックも下の部屋であるにゃ」
李衣菜「ちゃんと晴れて日程通りやれればいいねー」
みく「Pチャンも余裕持って日程は取っているって言ってるけど」
李衣菜「もし日程が余ったら街で遊べるのかな?」
みく「それは相談の上じゃないかにゃ?沖縄だから台風とかもあるから早めに切り上げるのもありそうだし」
李衣菜「そっかあ、そうだよね」
みく「えっと明日用の衣装は…んーと1日目だから…」
リストを見ながらクローゼットに入れた衣装を当日用のハンガーラックに移動していくみく。
部屋の広さや最終チェックの事情もあり、衣装はアイドル達の部屋で管理となっていた。
みく「陸上競技用のと…バドミントンのはこれっと。これとこれがみくの分、こっちのが李衣菜チャンの分」
李衣菜「私の分も用意してくれてるの?ありがとー」
みく「一人分でも二人分でも変わらないモン。それと…うわ!早速来ちゃったよ、李衣菜チャン」
李衣菜「え?何が…あっ…」
そのみくの両手には一着ずつ体操着があった。
みく「李衣菜チャンはお仕事とかで着たことある?」
李衣菜「私はまだだけど、みくは?」
みく「みくもまだなのにゃ。夏樹チャンもナナチャンも…やってないよね」
李衣菜「聞いたことがないからきっとそうだと思うよ」
みく「でも男の人ってこういうのにその…するんだよね…?」
李衣菜「うん…確かかな子ちゃんと愛梨さんで出したの、これの場面そうとう話題になったって」
みく「これ着ると身体のラインがピッタリ出ちゃうモン」
李衣菜「水着より露出してないけど、恥ずかしいのは水着以上らしいよね」
みく「不思議だけど、卯月チャンみたいに純粋じゃないとそうなんだってねー。あー、でも李衣菜チャン」
李衣菜「ん?」
みく「明日の撮影でみくに…欲情しないでね」
李衣菜「ば、バカっ、そんなこと…」
みく「ほらー、無いとは言い切れてないにゃ」
李衣菜「だって、その…せっかくこんな南国なんだよ、開放的になるじゃん。そういうみくだってどうなのさ」
みく「みくは…みくも…李衣菜チャンとだから、楽しみにしてなかったって言ったら…嘘になるけど…」
李衣菜「みく…みくもそうだったんだ」
みく「李衣菜チャン…沖縄で二人だけの時間も楽しもうにゃ…」
トテトテトテ チュッ
みくは体操着をハンガーラックに掛けて、李衣菜のベッドに駆け寄って頬にキスをした。
李衣菜「…うん……ん?そういえば隣の部屋ってこの壁の向こうだよね」
みく「そーだけど、どうしたの?」
李衣菜「なつきちと菜々ちゃんに、今の話が筒抜けだったんじゃない…?」
みく「みく達がカップルなのは二人とも知ってるのに何か問題あるかにゃ」
李衣菜「そっかー、ってこれ私達の声が聞こえちゃうよね」
みく「去年の温泉の時にもう聞かれてるはずじゃないのかな?」
李衣菜「あの時も…しちゃったんだっけ」
みく「あれは李衣菜チャンがいきなり襲い掛かってきたから…」
李衣菜「でもみくだって満更じゃなかったじゃん。みくの声、結構響いてたよ」
みく「それはそうだけどー…李衣菜チャンのだって絶対聞こえてたにゃ」
李衣菜「…お互い様だったかな」
みく「あの時に何回も聞かれてたと思うから、今更気にすることは無いにゃ」
李衣菜「そっか…うん」
みく「じゃあ今日はもうお風呂入ったら寝よっ。明日に備えないとね」
李衣菜「そうだね。移動も長かったし、ちょっと疲れてるもんね」
二人は大浴場へ行く準備を始めた…
 
その頃、隣の部屋では…
夏樹「…部屋、変えてもらうか?」
菜々「寝不足にでもなるようなら、それからでも良さそうですけど…」
夏樹「温泉の時は疲れとかもあって毎日すぐに寝ちまったもんな」
菜々「みくちゃん達はそんな体力どこにあったんでしょうね」
夏樹「ま、アタシ達は朝に走ってたのもあるんだけどさ」
菜々「そういえばそうでしたね、あの時はお世話になりました夏樹さん」
夏樹「それでこっちでも走ったりするか?」
菜々「それでなくとも暑いですし、必要じゃなければいいかなって」
夏樹「あれから比べたら体力もだいぶついてるもんな」
菜々「それに日の出も遅いんですよ。だから朝は時間も取り辛いかと思います」
夏樹「そうなのか?」
菜々「東京とは1時間くらい違うらしいです。だから撮影スケジュールもちょっと遅め設定なんですよ」
夏樹「言われてみれば確かにな…よし、風呂も入っちまったし明日の準備したら寝るとするか」
菜々「そうですね…明日の予定は陸上とバドミントンの撮影、あと夜はライブのダンス確認ですから…」
夏樹「陸上のユニとバドミントンのユニ、あとは体操着とレッスン用のジャージか?」
菜々「そうですね…これとこれとあれと…これもお願いします」
夏樹「はいよ」
クローゼットから手際よく衣装を出していく菜々。夏樹はそれを受け取ってハンガーラックへと掛けていった。
菜々「夏樹さんってこういう体操着は着たことありました?」
夏樹「アタシは…学校だとハーフパンツだな。上はそういうのだったけどさ」
菜々「ナナの学校は短パンでしたねえ、ちょっとだけ懐かしいです」
夏樹「そのブルマってやつはお仕事でも学校でも無いな」
菜々「ナナも実はこれは無い…というわけでもなくて、メイド喫茶時代にイベントで何回かはあったんです」
夏樹「あー…どういう感じだった?」
菜々「お仕事なんで何回かやった時には慣れましたけど、最初は視線が凄く恥ずかしくてですね…」
夏樹「なんだろうな、そういうのにそういう気持ちを持つってことなんだろうけどさ」
菜々「男の人って本能的にそうなんだなって思っちゃいました」
夏樹「まあこれもアイドルっていう仕事の一つだもんな」
菜々「ナナはこういうグラビアが無いような声優アイドル目指してたんですけどね…」
夏樹「それはそれだ、運命だと思えよ菜々。それでアタシのは濃い緑の方か」
菜々「ナナのはあずき色です…って、あれ?これはえっと…」
予定の紙を読み込む菜々。
菜々「やっぱりそうですね…夏樹さん、『胸と背中の名前を自分で書いてください』だそうですよ」
夏樹「そうか、それならビニールを剥がして…っと」
菜々「えっと…クローゼットの衣装入れの中に…確かプロデューサーさんが渡してくれた小物入れが…あ、ありました」
夏樹「その中に書く物があるってことか。菜々のもビニール外しておくぜ」
菜々「ありがとうございます。ちょっと待ってください…あ、ありました」
夏樹「さすがにそれは持ち合わせてなかったし良かったぜ」
菜々「後日撮影のスクール水着にもこれで書くみたいですね」
夏樹「本当に男ってそういうのが好きなんだな…」
菜々「諦めましょう…それにまだ夏樹さんは現役だからいいじゃないですか」
夏樹「アタシだってもう学校でそんなのは着てないって」
菜々「この前のグラビアも大変だったって聞きましたからね…はい、夏樹さんこれで書いてください」
夏樹「ありがとな。そういえば6月末発売の特集あったよなあ。美波さんと智香が『もうお嫁に行けない』とか言ってたぜ」
菜々「ナナのところも志乃さんが『こんなの着させて、何が目的なの』とか言ってました」
夏樹「…気を確かに持とうな」
菜々「はい…」
そのまま準備を終わらせた夏樹と菜々は、疲れを癒すようにベッドで眠りに就いたという…
 
1日目へつづく
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2016・07・31SUN
飛神宮子
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