Blowin' in Okinawa wind '16(沖縄の風に吹かれて 2016)

8日目夜

時は昨夜である8日目のそれぞれの部屋。
李衣菜とみくの部屋では…
李衣菜「ついに沖縄最後の夜かあ…」
みく「帰りたくないって言っても帰らなくちゃだモン」
李衣菜「お土産も含めて荷物ももうほとんど送っちゃったから、部屋もガランとしちゃったね」
みく「今は寂しいけど楽しかったにゃ」
李衣菜「ねえみくちゃん…」
みく「なぁに?李衣菜チャン」
李衣菜「ちょっとベランダ出よ」
みく「…うん」
ガラガラガラガラ
二人はベランダへと出た。
李衣菜「まだ暑いね…」
みく「でも沖縄の薫りがして気持ちいい気分になるにゃ」
李衣菜「台風近付いてるからちょっと雲はあるけど、星も綺麗だなあ」
みく「東京でもみくの地元の大阪でも光が多すぎるんだね…こんな綺麗には見えないよ」
李衣菜「昨日の夜も海で見たけど…二人っきりじゃなかったでしょ」
みく「カメラマンサン達もいたし、何よりナナチャン達がいたにゃ」
李衣菜「ここだったら邪魔されずに二人っきりで見られるからね」
みく「毎日見られたのに逃してたのが勿体無い気がしたよ」
李衣菜「準備とか練習とかも忙しかったから仕方ないけど、今日はもう何も無いし…」
徐々に近付く二人の顔、いよいよというその時…
ガラガラガラガラ
ガラス戸が開く音。もちろん李衣菜達の部屋ではない。
菜々「夏樹さん!今日も星が綺麗ですよー!」
夏樹「そうだな、菜々」
李衣菜「なつきち!?」
みく「ナナチャン!?」
隣の部屋から夏樹達もベランダに出てきた。
夏樹「おう、お前らも…って何してんだ?そんな顔近付けて」
李衣菜「い、いや何でもないってば、なつきち達こそどうしたのさ」
菜々「あれ?知らなかったですか。毎日みくちゃん達が夜にお風呂入ってる時間くらいにこうやってベランダに出てたんですよ」
みく「そうだったんだ、知らなかったにゃ…って知ってるはずないにゃ」
夏樹「沖縄の夜の風とか空が素敵だったからな。こんな空の下なんて滅多に体験できるもんじゃないだろ」
みく「みく達もさっき勿体無かったって言ってたにゃ」
菜々「これも今日で最後になりますけどね」
李衣菜「そんなこと言って、菜々ちゃんって結構二人で見てるんじゃないの?」
夏樹「どういう意味だよだりー」
李衣菜「だって二人でバイク乗ってるって聞いたりしてるよ。家まで送るとかでさ」
夏樹「そんなことは…無いわけでもないか」
菜々「そうですね…途中で寄るコンビニとかで見たりはしますし」
みく「羨ましいにゃ。李衣菜チャンは実家だし、みくは寮だもん。こういう時じゃなきゃ二人きりって難しいんだよね」
夏樹「頑張れよ、みく達もな。それじゃ邪魔しちゃ悪いし入るか」
菜々「そうですね。後はお風呂入って明日帰る準備もしなきゃですし」
夏樹「二人ともまた明日な。いい雰囲気のとこ邪魔してゴメンな」
李衣菜「そんなこと…んむっ!」
チュウッ
菜々「み、みくちゃんっ!?」
みくは夏樹と菜々に見せ付けるように李衣菜の唇を奪った。
李衣菜「はあっ…いきなり何するの、みくちゃん!」
みく「ぷはっ…だってそう言われたら我慢できなくなったんだモン」
夏樹「随分と見せ付けてくれたもんだな、そういうみくの魂の強さ、ロックだぜ」
菜々「ねえ、夏樹さん…」
夏樹「ん?ああ…」
チュッ
夏樹は菜々が伸ばしていた唇へとそっと口付けた。
夏樹「菜々の寂しんぼさんめ」
菜々「夏樹さんにだけの寂しがり屋のウサギさんですもん」
夏樹「アハハ、そうだったな。じゃ、そろそろ入ろうぜ」
菜々「はい…じゃあみくちゃん、李衣菜ちゃん、今度こそまた明日です」
ガラガラガラガラ ピシャンッ
夏樹と菜々は部屋の中へと戻っていった。
みく「二人とも大人にゃ…」
李衣菜「私達より少し大人な恋してるよ…」
みく「でもみく達は子供っぽくていいにゃ。だって夏樹チャン達に比べたら子供だモン」
李衣菜「そうだね。そろそろ私達も入ろうか」
みく「そうだね…今日は…その…」
李衣菜「…みくちゃんはしたくないの…?」
みく「ううん…またしばらくはこういうの出来なくなっちゃうモン」
李衣菜「この沖縄でさ、皆勤しちゃったね」
みく「これも忘れられない想い出の一つになるにゃ…」
李衣菜「一生忘れられない想い出になりそうだね…」
李衣菜とみくの最後の沖縄の夜、二人の一番暑い夏がそこに生まれゆく…
 
一方その後の夏樹と菜々の部屋では…
夏樹「今夜で最後になったんだな」
菜々「こうして毎晩、夏樹さんと星空の下でお話できて…幸せな時間でしたよ」
部屋に戻って窓の方を見ながら夏樹用のベッドへと寄り添って座った二人。
夏樹「明日のこの時間はもう家に居る頃になるのかな」
菜々「時間ってこんなにも残酷なんですね…」
夏樹「菜々…あのさ…菜々が嫌だったら別にいいんだけどな」
菜々「何でしょう?夏樹さん」
夏樹「今日は…一緒のベッドで寝ようぜ」
菜々「夏樹…さん…」
夏樹「別にアイツ等に中てられたとかそうじゃないんだ。最後の夜くらいこういう機会があってもいいかなって」
菜々「ナナも同じこと思ってました。今宵くらいはそうしても罪にはならない…ですよね」
夏樹「夏にこういうこと言うのも違うかもだけど、今は菜々を感じたい、それだけなんだ」
菜々「夏樹さんがそれを望んでいるなら、ナナも同じなんですから…」
夏樹「じゃあさ…」
菜々「キャッ!」
ぎゅっ ぼふんっ
一つのベッドに一つの大きな衝撃が響き渡る。夏樹が菜々を抱き込んでそのままベッドへと倒し込んだのだ。
夏樹「大好きだぜ、菜々…」
菜々「ナナも大好きです、夏樹さん…」
チュッ
一つの口付け、それは誰にも邪魔されない二人を心地よい時へと誘う儀式となる…

最終日《前頁からのつづき》

時はまた進んで空港のVIP用ラウンジ…
菜々「………でも特に後半は大変でしたけど何とか無事終われて良かったですね」
夏樹「ライブも最高に盛り上がったし、また熱くなれる場が早く欲しいな」
みく「今度はプライベートでも来たいにゃ」
李衣菜「自由時間が1日や2日じゃ足りなかったもんね」
夏樹「離島とか水族館とか行けなかったからな」
李衣菜「次はなつきちのバイク乗せてもらいたいなー」
菜々「夏樹さんのバイクの後ろはナナ専用ですー」
みく「ナナチャンそれはずるいにゃ」
夏樹「ほらほらそこで喧嘩するなって。向こう戻ったらだりーもみくもたまには乗せてやるからさ」
李衣菜「…たまに?たまにってどういう意味なのかなー、なつきち」
みく「それって結構誰かサンを乗せてるって話だにゃー」
菜々「え?ナナはその…いいじゃないですかー」
夏樹「ほら、みくもだりーも菜々が困ってるだろって」
菜々「うわーん、二人がナナのこといじめてきますー」
菜々は夏樹の胸に飛び込んだ。
みく「うわ…露骨なセリフにゃ…」
李衣菜「暑いね…冷房効いてるはずなのに」
夏樹「お前達二人がそうしたんだろ!」
「はい、では……夏樹、菜々、事務に問い合わせたところ大丈夫だとのことだ」
菜々「それでどうすればいいんですか?」
「寮に着いたら事務室に行ってくれれば鍵は渡しますからとさ」
夏樹「了解」
「あと、みくと李衣菜に事務から言伝だ。周りの迷惑にはならないようにだと」
みく「…自重しますにゃ…」
李衣菜「…はい…」
「もうそろそろ行くから準備しておいてな」
四人『はいっ』
その四人の表情、そこには南国の太陽のような笑顔が輝いていた。
そしてその耳元と胸元にはそれぞれの相手に選んでもらった珊瑚のアクセサリーが輝いていた…
 
おわり
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2016・07・31SUN
飛神宮子
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