夏樹 | 「どうしただりー、またみくと喧嘩でもしたか?」 |
李衣菜 | 「私は悪くないもん…みくが悪いしー」 |
346プロ内のカフェに夏樹と李衣菜の二人がいた。李衣菜の方は何やらふてくされ顔である。 |
夏樹 | 「はあ…ま、いつものことだからいいけどさ」 |
李衣菜 | 「私だって多少は無理強いしたけど、あんなに激昂するなんて思わないじゃん」 |
夏樹 | 「いや、アタシは何の事情も聞いてないんだけど」 |
李衣菜 | 「だってせっかく奮発したんだよ!この時期で国産だよ!」 |
夏樹 | 「だから何のだよ」 |
李衣菜 | 「確かに魚だけどさー、ウナギくらいなら食感違うしみくも食べられるって思ってさー」 |
夏樹 | 「どうしてだりーはそういう方向に方向に持っていこうとするんだ」 |
李衣菜 | 「それは…」 |
夏樹 | 「それは?」 |
李衣菜 | 「す、好きだからこそちょっとは嫌いなのも治って欲しいって思うし…」 |
夏樹 | 「その気持ちは分からないでもないけど、それはそれだからな。無理矢理は良くないだろ」 |
そこに一人の女性が… |
菜々 | 「それ、もしかして別の理由かもしれないですねっ」 |
李衣菜 | 「あれ、菜々ちゃん。ウェイトレスのお仕事は?」 |
菜々 | 「今ほとんどお客さんが居ないので、マスターに言って休憩させてもらいました」 |
夏樹 | 「菜々、何か知ってるのか?」 |
菜々 | 「なつきちさんも李衣菜ちゃんも関東の出身ですよね」 |
夏樹 | 「アタシは茨城だし、だりーも東京だな」 |
菜々 | 「確か関東と関西ってウナギの焼き方が違うんですよ!」 |
李衣菜 | 「みくが『こんなの食べられない』って言ったのって魚だったからじゃなかったってこと?」 |
菜々 | 「魚だったのもあるかもしれないですけど、そういうのは出身地のこだわりが出ますからね」 |
夏樹 | 「やっぱり菜々はそういうことも詳しいんだな」 |
菜々 | 「エヘヘっ、ありがとうございますなつきちさん」 |
李衣菜 | 「………謝ってくる」 |
夏樹 | 「おう、行って来いだりー」 |
菜々 | 「きっとみくちゃんも謝りたいって待ってますから」 |
夏樹 | 「ああ。仕方なかった部分もあったからな」 |
李衣菜 | 「うん…ありがと、なつきち、菜々ちゃん…」 |
李衣菜は二人に礼をして、みくのいる寮へと向かった。 |
夏樹 | 「…あのくらいならいつものことだし、これで大丈夫だろ」 |
菜々 | 「いつもの二人に戻るのも時間の問題ですね」 |
夏樹 | 「だりーもいなくなっちまったし、ちょっとあっち行こう」 |
そう言いながらベンチを指差した夏樹。 |
菜々 | 「……ご注文は以上でよろしいでしょうかっ?」 |
こくんっ |
夏樹は笑顔で一つ頷いた。 |
菜々 | 「かしこまりました。マスター!もう少し時間いいですかー?………大丈夫みたいですね」 |
二人は近くのベンチへと移動した。 |
ぽふっ ポンポンッ |
菜々 | 「はい、なつきちさんどうぞ」 |
夏樹 | 「ああ…してもらうの久しぶりだな」 |
菜々 | 「前にしたのは…いつでしたっけね」 |
ぽふっ ぽふんっ |
夏樹は先にベンチに座った菜々の腿の辺りに頭を載せた。 |
夏樹 | 「んーーっ!」 |
菜々 | 「なつきちさん、疲れてます?」 |
夏樹 | 「そうかもな。この前まで炎陣もやってたろ、あれからも結構アイツらと遊んでてさ」 |
菜々 | 「ライブは大変でした?」 |
夏樹 | 「ダンスっていうダンスはそれほどだけど、マイクスタンドでのパフォーマンスがあんなに難しいものだとはな」 |
菜々 | 「あれはカッコ良かったですよ。あらためてその…」 |
夏樹 | 「その?」 |
菜々 | 「惚れ直しちゃいました」 |
夏樹 | 「なっ…でも…そう言われるのは嬉しいぜ」 |
菜々 | 「エヘヘっ…」 |
夏樹 | 「ハハハっ…」 |
菜々 | 「でももう季節も…夏なんですね…なつきちさん」 |
夏樹 | 「そうだな…って、二人っきりの時はそうじゃないだろ」 |
菜々 | 「あっ…でもここは人目もありますから…」 |
夏樹 | 「膝枕までしてるのにそっちはダメなのか菜々」 |
菜々 | 「分かりましたよぉ…夏樹さん」 |
夏樹 | 「ハハっ、でも…ありがとな」 |
菜々 | 「何です?急に感謝だなんてもう」 |
夏樹 | 「アスタリスクにアタシだけだったらさ、こんな風に続けられてはいなかった気がする」 |
菜々 | 「…夏樹さんは、本当にナナで良かったんですか?」 |
夏樹 | 「言いたいことは何となく分かってる。アタシの心が荒んだ所に付け入ったって思ってるんだろ?」 |
菜々 | 「………でも…」 |
夏樹 | 「直接の引き金はそうだったかもしれない。でもな…」 |
菜々 | 「………」 |
夏樹 | 「あんなのに中てられなくとも、こうなるのは時間の問題だった気がするんだ………」 |
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第一章・終章へつづく |