ここはとある朝のとある家の台所… |
美希 | 「ふああ、眠いの…」 |
大きな欠伸をしている少女が一人。 |
美希 | 「でもご飯を炊かなくちゃなの」 |
時刻は午前5時半。美希にしては早い時間だ。 |
美希 | 「まずはお米…あ、あった。春香の言ってた通りだ」 |
ん?春香の言ってた通りってどういうこと? |
美希 | 「んしょ…んー、4人分でいいかな」 |
ボウルにお米を入れた。 |
美希 | 「さーて、春香に美味しいおにぎりを食べさせてあげるの!」 |
美希は流し台で米を研ぎ始めた。 |
……… |
場所は変わってここは春香の寝室… |
春香 | 「んんーっ…」 |
部屋の主がようやく起き上がったようだ。 |
キョロキョロ |
春香 | 「あれ?美希がいない…」 |
美希が寝ていた布団は既にもぬけの殻だ。 |
春香 | 「そっか…じゃあ私も起きなきゃ…」 |
コシコシ |
眠い目を擦りながらベッドを下り… |
春香 | 「ふわあっ!」 |
ぼふんっ |
ちょうど床に敷いてあった蒲団の上へとダイビングした春香。 |
スーーーーー |
春香 | 「…あ、美希の薫りがする…」 |
つい残り香を嗅いでしまったようだ。 |
春香 | 「ああっ!こんなことしている場合じゃないっ!」 |
春香は頭にリボンを付けて… |
春香 | 「何をおかずに作ろっかなあ」 |
美希のいる台所に向かっていった。そもそもどうしてこんなことになっているのかと言うと… |
……… |
時は十数日前に遡る… |
春香は現在美希と一緒のユニットで活動中。ちなみに過去に小鳥さんも居たのはまた別の話。 |
美希 | 「春香の家ってどんなとこなの?」 |
春香 | 「私の家?あ、そっか…プロデューサーさん以外来たことないんだっけ」 |
美希 | 「へえ、プロデューサーさんは行ったことあるんだ」 |
春香 | 「ちょうど仕事で近くに来てた時に寄ってもらったんだけどね」 |
美希 | 「そういえば他のみんなも春香の家だけは見たことないって言ってたの」 |
春香 | 「だって私の家って遠いから、なかなか呼ぶにも呼べないし…」 |
美希 | 「へえ、そうなんだ。でもミキは興味あるよ」 |
春香 | 「え?美希いいの?」 |
美希 | 「いいよ。だって相方の春香の家だもん」 |
春香 | 「…あ、そういえばこのお休みに親が旅行に行っちゃうんだけど空いてる?」 |
美希 | 「この休み?んー、たぶん大丈夫だと思うな」 |
春香 | 「それならこの日に美希に来てもらおうかなあ」 |
美希 | 「うん、了解なの」 |
……… |
美希 | 「あとは30分くらい水を吸わせれば炊けるの!」 |
どうやら電気釜のセッティングまで終わったようだ。そこに… |
春香 | 「おはよう美希」 |
美希 | 「おはようなの春香」 |
春香 | 「あ、もう炊く準備できちゃったんだ」 |
美希 | 「うん。あと30分したらスイッチを入れるの」 |
春香 | 「そっか、じゃあ私はゆっくりおかず作るからね。昨日みたいな豪華なのはできないけど」 |
美希 | 「それでいいの。昨日は多すぎて何だか食べ疲れちゃった感じなの」 |
春香 | 「アハハ、そだね」 |
と、テーブルに行った美希は… |
美希 | 「春香、30分経ったらに起こしてね」 |
椅子に座って机を枕に寝てしまった。 |
春香 | 「…まあしょうがないか。私より早く起きて準備してたみたいだし」 |
ピッピッピッ |
台所に置いてあるタイマーのうち1つをセットした。 |
春香 | 「さてとっ…」 |
カチャッ |
冷蔵庫を開けて中を眺める春香。 |
春香 | 「んー…これとこれはいいけどあとは…あ、そうだ」 |
何やら思いついたようだ。 |
春香 | 「確か冷凍室に…あ、あったあった」 |
冷蔵庫を閉めて冷凍室から何やら取り出した。 |
春香 | 「これ美味しいのに誰も食べてくれないんだもん」 |
カチャッ ピッ |
タッパーをレンジへと入れて温め始めた。 |
春香 | 「さてっ、お味噌汁でも作ろっかな」 |
ジャーーー トントントントン |
台所の中で包丁の良い音が響き始める… |
|
ピピピッピピピッピピピッ |
さっきセットしたキッチンタイマーの音が鳴り響く。 |
春香 | 「あ、美希のこと起こさなきゃ」 |
春香は調理の手を休めて… |
つんつん |
机に突っ伏していた美希の頬を突いた。 |
美希 | 「ん?んー…もう30分経ったの?」 |
春香 | 「うん。炊飯器のスイッチ入れるんだっけ」 |
美希 | 「それくらいは自分でやるの…って良い匂いだね」 |
ピッ |
美希は炊飯器のスイッチを入れた。 |
春香 | 「昨日みたいに豪華なのは無理だけど、これくらい…ね」 |
美希 | 「でもとっても美味しそうなの。これこそ手料理って感じがするな」 |
春香 | 「そ、そうかな?」 |
美希 | 「昨日の夕ご飯はいかにもお呼ばれしましたって感じだったもん」 |
春香 | 「確かに昨日は美希が来るからって気合が入り過ぎちゃったかも」 |
美希 | 「だからこれくらいがいいの。本当の春香の味って感じだもん」 |
春香 | 「うー…これ、美希の口に合えばいいんだけど」 |
美希 | 「絶対に大丈夫だよ。だって春香がミキのために作ってくれたんだもん。美味しくないわけないのっ」 |
春香 | 「美希…」 |
ぎゅうっ |
春香は美希のことを後ろから抱きしめた。 |
美希 | 「は、春香っ!?」 |
春香 | 「ありがと…そう言ってくれるだけで嬉しいな」 |
美希 | 「ミキはそんな…でも春香がそう思ってくれるならミキも嬉しいの」 |
春香 | 「私、美希と組めて良かった…」 |
美希 | 「ミキも、春香とで良かったな」 |
春香 | 「よしっ、そんな美希のためにも美味しいおかずを作ろっと」 |
美希 | 「期待してるの。これってどれくらいで炊ける?」 |
春香 | 「んーと、45分くらいかな?」 |
美希 | 「じゃあその間におにぎりの準備もしておくの」 |
そんなご飯はいつもより美味しくて、そして温かかったと後にプロデューサーは聞かされたという… |