Known Unknown Quantity(既知の未知量)

ある日の事務所でのこと…
千早「私たちはこの2曲ですか、プロデューサー」
765プロ所属アイドル全員でのライブ、この二人のユニット「Daybreak」で歌う曲が決まったようだ。
「ああ。お互い別ユニットだったけどこの曲でCDも出したことがあるし、大丈夫だろ?」
真美「うん。でも人前で歌うって違うよね、千早お姉ちゃん」
千早「そうね。そういえば今回はどれくらいの規模の予定なのですか?」
「そうだな、発売状況にもよるが9千人規模までできる会場を2日間押さえてある」
真美「兄ちゃん、どんだけー!?」
千早「これは…失敗は許されませんね」
「確かにな。これは俺も大仕事になりそうだ」
真美「でも歌う曲ってこれだけじゃ無いっしょ?」
「もちろんだ。千早も真美も他の人と歌う曲があるからな」
千早「それはいつ頃決まりそうですか?」
「他の人の兼ね合いもあるからな、まあ1週間以内には決まるだろう」
千早「しかし、この2曲はかなり差がある2つになったんですね」
「真美の元気良さと千早の静かさを両方やるとなると、それなりの曲は必要だろ?」
千早「真美、大丈夫ね?」
真美「大丈夫だよ。兄ちゃんがしっかりレッスンしてくれるならねー」
「その点は任せておけ。その日までは仕事も抑えてレッスンに集中できる環境にするから」
千早「ありがとうございます」
 
そのレッスン中…
真美「千早お姉ちゃん、ここなんだけどどんな感じだっけ?」
千早「真美、主旋律は歌えるわよね?」
真美「うん、大丈夫だよ」
千早「それなら私が真美のパートの方を歌うから、主旋律の方を歌って」
真美「分かったー」
♪〜
二人の綺麗なコーラスが響き渡る。
千早「…ふう、こんな感じで分かったかしら?」
真美「何となく分かったけど、まだ自信ないなー」
千早「でも真美は他の人に比べてかなり飲み込みが早いから大丈夫よ」
真美「んー…でもこの曲難しいよ。自分のパートだけのテープって無いもん」
千早「そうね…それなら、プロデューサー」
「何だ、千早」
千早「この部屋で録音ってできますか?」
「確かあの機材の設定変えればできるはずだな」
千早「それならちょっと録音をお願いできますか?」
「了解」
その後、千早の歌がスタジオへと響き渡った。
 
千早「プロデューサー、今のにカラオケを重ねることはできますか?」
「ああ、今のはもう重ねながら録音したから大丈夫だ」
千早「ありがとうございます。それを真美に渡せる形でお願いします」
真美「うー、やっぱり千早お姉ちゃんの歌は心に響くよー」
千早「ありがとう真美、そう言ってもらえるとやっぱり嬉しいわ」
真美「この歌を聴けば覚えられそうだよー」
千早「頑張って真美、私の曲は真美の…」
さわさわ
真美「んっ…」
千早は真美の喉を触った。
千早「喉に掛かっているんだから」
真美「く…くすぐったいよ千早お姉ちゃん」
千早「フフフ、でも真美の肌ってスベスベね」
真美「そ、そっかなあ?でもでも千早お姉ちゃんの肌もスベスベだよ」
千早「そうかしら…」
真美「髪もストレートで綺麗だし、青っぽい黒で羨ましいよ」
千早「でもその茶色で短い髪、私は可愛いと思うわ」
真美「うーん、でも亜美とイメージ被っちゃってるし…」
「それなら少しイメチェンしたらどうだ?」
真美「いめちぇん?」
「もう亜美とは別のユニットなんだからさ、少しは髪型だって違ってもいいんじゃないか?」
真美「だったら兄ちゃんはどんなんがいい?」
「そうだな…」
プロデューサーは少し考えて…
「やっぱり変えるとしたらその結んでいる髪だよな」
真美「これ?」
「ああ。それを亜美みたいに跳ね上げないで、下ろしてみたらどうだ?」
真美「んしょっと、こんな感じ?」
今まで髪ゴムで引っ張られて斜め上に飛び出ていた髪が流れるように降りていった。
「そうそう。それだけでもイメージ変わるよな」
千早「そうですね、確かに亜美とは違うわ」
「これくらい違った方が、実際違って見えると思うぞ」
真美「んじゃ、これにしよっかなあ」
「うん。まあ気に入ってくれたならそれでしばらく行くか」
真美「そだね」
千早「それで録音したデータの方はどうなりました?」
「今処理が終わったところだ。真美、何かプレイヤーは持ってるか?」
真美「USBのmp3プレイヤーならカバンの中に入ってるよー、ちょっち取って来るね」
「mp3か、了解。今から変換するから」
………
レッスンも終わり…
真美「でもこの曲って、兄ちゃん勝負師だよね」
「どうしてだ?真美」
真美「だって、コーラスが真美だよ。普通だったらあずさお姉ちゃんじゃん」
千早「真美、あなたは謙遜し過ぎよ」
「うん。俺も千早と同意見だ」
真美「どういうこと?」
千早「真美はまだ秘めている部分があるの」
「そうだ。今の真美には昔の二人でやってた頃には無かった物があるんだよ」
千早「だからそれを出したい…そうですよね、プロデューサー」
「そういうこと。真美の実力はあの頃の比じゃないと分かってるから」
真美「…そんだけ期待されてるなら真美、頑張ってみる」
「ああ。真美だったらそう言ってくれると思ってたさ」
千早「真美、期待してるわ」
真美「じゃあ真美の曲の千早お姉ちゃんのコーラスも期待してるね」
千早「…プロデューサー、本当に私があの曲で良かったんですか?」
「千早…だからだな。千早の別の面を引き出したい、それが俺の想いだ」
千早「…分かりました、やってみます」
真美「でも本当に兄ちゃん、策士だねー」
千早「フフフ…そうね」
「Daybreak」、気持ちの夜が明けた二人はもう迷うことは無い…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
真美と千早。この作品のくだりは実は少し前のSSに出ているのがお分かりでしょうか?
このSSに出ていたやよいと真美のそれぞれの相方が律子と千早だというところです。
真美の変化、それを描いてみるのもいいかなと思いまして…ね。
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2010・07・15THU
飛神宮子
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