Island a Deux(二人だけの島)

伊織「ふう…着いたわね…」
「しかし長かったなあ…」
伊織「何よ、せっかく招待してあげたのにアンタは不満なわけ?」
「そ、そんなことございませんお嬢様」
伊織「何かトゲのある言い方ねえ…」
「これだけ荷物持たせられてたら、それくらい言いたくなるぞ」
伊織「ハイハイ、分かったわよ。でもいい天気になって良かったわ」
「そうだな」
ここは伊織の親が持っている南方の島。連れてきたクルーザーが港を離れてしまったため、今はもう二人だけしかいない。
「この島に来たのは2回目だな」
伊織「あら?連れて来たことあったかしら?」
「何年か前の夏休みに連れて来られたぞ」
伊織「…あの時もアンタだった?」
「ああ。このコテージも憶えてるぞ」
伊織「それなら勝手は分かってるわね、あとは頼むわよ」
「…俺はプロデューサーであって使用人じゃないんだからな」
伊織「それもそうね、でもアンタしか男手はいないんだから」
「それは分かってる。だから伊織も手伝ってくれよ」
伊織「…しょうがないわね、ほら何か貸しなさいよ」
「じゃあこれを持ってってくれ」
伊織「これ?…何が入ってるのよ」
「俺のカバンだ。軽いだろ?」
伊織「アンタこれだけで来たの?」
「粗方そっちで用意してくれるって言っただろ?」
伊織「それにしても何よこの軽さは」
「着替えも帰る時のだけで、あとは水着と貴重品と幾つかの書類くらいだぞ」
伊織「男って本当に用意する物が少なくていいわよね…」
「ま、そんなもんさ」
伊織「ほら、さっさと行くわよ」
「はい、伊織お嬢様」
伊織「またそう言うし…後で憶えてらっしゃい」
………
二人とも水着になって、日焼け止めも塗り終わり…
「伊織、夕飯って何時だっけ?」
伊織「プロデューサーならそれくらいちゃんと把握しなさいよもう…7時よ」
「とりあえずはそれまでゆっくりするか…」
伊織「確かに他にすることも無いものね」
「でもどうして俺をここに連れて来たんだ?」
伊織「その…まあいいじゃない」
「いいけどさ、これだけの休みを作るためにどれだけ苦労したと思ってるんだよ」
伊織「分かってるわよ。事務所の稼ぎ時のゴールデンウィークに悪いと思ったわよ。だけど…」
「だけど?」
伊織「だけどしょうがないじゃない。私の誕生日がこの時期なんだから…」
「いや、悪いなんて言ってないだろ?今回ばかりは、律子と社長と小鳥さんに土下座したからさ」
伊織「えっ…アンタ、私のためにそんなことまでしたわけ?」
「今回の仕事の肩代わりのために、それくらいしないと気が済まなかったんだよ」
伊織「プロデューサー…」
「それで、どうして俺をここに連れて来たんだ?」
伊織「…聞いたのよ、ここまで誕生日だった4人から」
「聞いたって?」
伊織「どうして誕生日の日に限って、二人きりで遠方の仕事を入れてたかって」
「聞いたのか…アイツらに…」
伊織「やよいなんか顔真っ赤にしてたわよ、もう…」
「ああ…そうなのか。でも伊織は伊織で、ちゃんと合わせた仕事も用意してはあったんだぞ」
伊織「もう…アンタが最近疲れてたみたいな姿を、私は見てられなかったの!」
「最近の俺、そんなに疲れてたか?」
伊織「はあ…自覚無いのね。栄養ドリンク何本も飲んでる時点で、どうして気が付かないのよ」
「もう習慣って感じだったからな…」
伊織「アンタに身体壊されたら、こっちだって仕事にならないんだから」
「ああ…心配かけてゴメンな伊織」
伊織「い、言っとくけど私はその…」
「その?」
伊織「その…アンタのこと…嫌いじゃないから…。じゃなきゃこんな所、連れてくるわけないじゃない!」
「…伊織…」
ぎゅうっ
後ろから伊織の身体を抱きしめたプロデューサー。
伊織「プ、プロデューサーっ!?」
「ありがとな。この休みでゆっくり休ませてもらう」
伊織「でもアンタのためだけじゃないんだから。この旅行は自分へのご褒美のつもりだったの、それに付いてこさせただけなんだから」
「それでも、俺のこと気に掛けてくれたんだろ?それだけで嬉しいさ」
伊織「プロデューサー…」
「よし、じゃあまず英気を養うために一緒に泳ごう伊織」
伊織「そうね…一緒に泳ぎましょ」
………
夕食後…二人は水着のままコテージのウッドデッキで、ビーチチェアに座りながらテーブルを挟んでケーキを食べていた。
伊織「そういえばアンタの誕生日は?」
「今日から○日前だぞ。だから一番近いのは伊織になるな」
伊織「やっぱり…どうりでその日オフにして小鳥と一緒に街を出歩いてたわけね」
「え?どこかで見てたのか?」
伊織「偶然よ偶然。良い雰囲気過ぎて声掛けられなかったわ」
「…でも今日は伊織だけのプロデューサーだからな」
伊織「…だからこそ、本当に二人きりになれる場所にしたの…」
「えっ…」
伊織「こんなの誰かに見られたくないわよ。恥ずかしいんだから…」
「何だよ伊織…」
伊織「…プロデューサー、そっち行って…いい?」
「そっちって…ここか?」
伊織「アンタの上に…座らせてもらうわ」
すくっ とてててて ぽふっ
伊織は自分のビーチチェアから、プロデューサーの上へとその身を移した。
伊織「ねえ…今日は私だけのプロデューサー…よね?」
「そうだけど、それとこれがどういう…」
伊織「私のこと、プロデューサーも私も気が済むまでプロデュースして」
「えっ…?」
伊織「い、今だってもう…」
ぎゅうっ ぽふっ
プロデューサーの左手は、伊織によって伊織の左胸へと導かれた。
「い、伊織っ!?」
伊織「こんなに緊張してるんだから、バカっ」
「分かったよ。今日だけの…特別なプロデュース、そしてレッスン…な」
伊織「んっ…大好き…プロデューサー…」
満点の星空と月とそしてこの島の自然以外に、彼らの営みを見届ける者は何一つとして存在しなかった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
2011年誕生日SSの5本目は伊織。伊織なら休みたがるかなと思いまして、今回は仕事無しとなりました。
ちなみにこの島はこちらで登場した島と同じです。この時も何かしてそうですけどね…(苦笑)
Happy Birthday!! Iori MINASE.
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2011・04・30SAT
飛神宮子
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