ある8月の日のこと… |
伊織 | 「ほら、何してんのよアンタ」 |
帽子を被った涼しい顔の伊織と… |
P | 「そんなこと言ったって…こんなに何で俺が荷物を…」 |
大きな荷物を持ったプロデューサー。 |
伊織 | 「男でしょ?アイドルの私にそんな荷物持たせる気なの?」 |
P | 「…だから、プロデューサーの俺がどうして…」 |
伊織 | 「他に来ている人は居ないじゃない」 |
ここは伊織の親が持っている南洋の島の一つ。1週間の夏休みを取った伊織はプロデューサーを連れて束の間のバカンスに来たのだ。 |
P | 「1週間分とはいえ、凄い荷物だなしかし」 |
伊織 | 「女の子は身だしなみって物があるの、ほらキリキリ運んで!」 |
P | 「分かりました、お嬢様」 |
伊織 | 「何かその言い方引っ掛かるわね…後でみてなさい」 |
|
宿泊するコテージへと来た2人。基本的には食事は他の島から宅配されてくるとのこと。 |
伊織 | 「ここよ、どうかしら?プロデューサー」 |
P | 「凄い豪華だな…普段住んでいる家とは大違いだ」 |
伊織 | 「当たり前じゃない」 |
P | 「ここで1週間過ごせるなんて、俺は幸せ者だよ」 |
伊織 | 「よろしい、じゃあ少し休んだら一緒に泳ぎましょ」 |
P | 「そうだな、荷物はどこに置けば良いんだ?」 |
伊織 | 「寝室まで持って行って、整理は自分でするわ」 |
P | 「寝室って…一体どこだよ」 |
伊織 | 「ほら、そっち。そっちの木のドアの部屋よ」 |
P | 「分かった。全部入れておくか…ん?」 |
伊織 | 「どうしたの、早くしてよもう」 |
P | 「寝室って一つだけなのか?」 |
伊織 | 「そうだけど…何か文句あるかしら?」 |
P | 「伊織と俺で一緒の部屋でいいのか?」 |
伊織 | 「しょうがないじゃない、他に寝室は無いんだしそれに…」 |
P | 「それに?」 |
伊織 | 「基本的にアンタしか守ってくれる人が居ないんだから」 |
P | 「それもそうか。じゃ、運ぶから待っててくれ」 |
ガチャっ |
プロデューサーがそのドアを開けると… |
P | 「…凄いな、これは…」 |
部屋には天蓋のある大きなベッドが一つ、そして壁際には様々な装飾品が置かれていた。 |
P | 「なるほどな、すぐに海に出られるようになっているのか」 |
そして部屋からバルコニーが繋がっていて、その外には砂浜と一面のオーシャンビュー。 |
伊織 | 「プロデューサー!早くしなさいよね!」 |
P | 「おっと、お姫様がお怒りだ。さっさとやるか…」 |
プロデューサーは次々と荷物を運び入れていった。 |
|
部屋で水着に着替えた二人。 |
伊織 | 「プロデューサー、背中にこれ塗って」 |
P | 「…俺が?」 |
伊織 | 「アンタ以外にプロデューサーはいないじゃない」 |
P | 「いや、あまりにも突然だったからさ」 |
伊織 | 「ほら、早くして」 |
P | 「それにしてもこれ、凄く高そうだな…」 |
伊織 | 「もちろんよ…と言いたいところだけど、そうでもないわ」 |
P | 「じゃあ塗るぞ、くすぐったくても我慢しろよ」 |
ススススス |
プロデューサーの手により伊織の肌へと日焼け止めが乗っていく。 |
P | 「やっぱり綺麗な肌だ、綺麗に乗っていくな」 |
伊織 | 「当たり前じゃない、ケアは怠ったつもりは無いわ」 |
P | 「それもそうか。よし、こんなもんでいいか」 |
伊織 | 「アンタねえ…水着のとこもちゃんと塗りなさいよ。痕になるじゃない」 |
P | 「…あのなあ伊織、一応俺も一人の男なんだからな」 |
伊織 | 「分かってるわよ…もう」 |
少し顔を赤らめた伊織。 |
ススススス |
プロデューサーの手がそんな伊織の水着の紐の内側へと入っていく。 |
P | 「これでいいな」 |
伊織 | 「ありがと…アンタも塗ってあげるわ」 |
P | 「え?俺はいいけど…」 |
伊織 | 「こういうところの紫外線を嘗めちゃダメなの、ほらさっさと背中出しなさい」 |
P | 「分かったよ」 |
ツツツツツ |
伊織の手がプロデューサーの肌へと日焼け止めを乗せていく。 |
伊織 | 「それにしても、本当にこの水着持ってきたのね」 |
P | 「伊織が俺にくれたんだから、持ってこないわけにはいかないだろ」 |
伊織 | 「アンタが水着の一つも無いって言ったんじゃない」 |
P | 「そうだっけ、ああ…」 |
伊織 | 「ほら、終わりよ」 |
パシンっ |
終わりにプロデューサーの背中を一発叩く伊織。 |
P | 「痛っ!」 |
伊織 | 「ほら、行くわよ!」 |
その横顔は仄かに紅い笑顔となっていた。 |
|
夜… |
P | 「こんな綺麗な夜空、どれくらいぶりかな…」 |
伊織 | 「東京じゃ無理ね、光があり過ぎるもの」 |
夕食を食べ終えて二人きりになった伊織とプロデューサーは、バルコニーへと出ていた。 |
P | 「それにしてもどうして俺と一緒にここに来ようと思ったんだ?」 |
伊織 | 「夏休みになってまで、家の人たちと一緒なのが嫌になっただけよ」 |
P | 「どういう…」 |
伊織 | 「もし私と同じ立場だったら、使用人とかと一緒に居たいと思う?」 |
P | 「…そうか、だったらどうして俺なんだ?」 |
伊織 | 「アンタだからよ」 |
P | 「俺だから?」 |
伊織 | 「そばに居ると一番安心できるのがアンタだったから」 |
P | 「伊織…」 |
ギュッ |
隣に居た伊織を抱きしめるプロデューサー。 |
伊織 | 「ちょ、ちょっと何よ…もう」 |
その伊織の顔は満更でもないようだ。 |
P | 「俺、伊織のプロデューサーで良かったよ」 |
伊織 | 「プロデューサー…」 |
P | 「伊織…」 |
南国の満天の星空の下、二人の唇は重ね合わされていった… |