ここはある日の仕事先の楽屋… |
亜美 | 「兄ちゃん」 |
P | 「何だ?亜美」 |
亜美 | 「もうそろそろ、兄ちゃんって言い方やめた方が良いかな?」 |
P | 「どうしてだ?俺はそのままでもいいけど」 |
亜美 | 「だってもう亜美だって17だよ。だからそろそろプロデューサーって呼んだ方がいいかなって」 |
P | 「気にするなって。そんなこと気にするなんて亜美らしくないぞ」 |
……… |
さて、時は2年前の亜美が15歳の時に遡る… |
この頃既に亜美と真美は、双子ユニットとして活動していた。 |
真美 | 「亜美、真美の話を少し聞いてくれないかな?」 |
真美から切り出された告白。それは… |
真美 | 「真美、ちょっとアイドル活動から離れたいんだ」 |
亜美 | 「ど、どうして?亜美たち二人でここまで頑張ってきたじゃん」 |
真美 | 「一人になって…本当の自分を見つけたいなって」 |
亜美 | 「本当の…自分って?」 |
真美 | 「亜美として活動していた時の自分でも、今までユニットとして活動していた自分でもない自分を見つけたいんだ」 |
亜美 | 「でも…」 |
そこに… |
P | 「真美、亜美にちゃんと話せたか?」 |
亜美 | 「に、兄ちゃん!どういうことなの真美!」 |
真美 | 「兄ちゃん、アイドル活動から離れたいってことだけは話したよ」 |
P | 「これに関しては俺から話す。聞いてくれ亜美」 |
亜美 | 「えっ…う、うん…」 |
P | 「前に真美と分かれて帰った日があるだろ?あの日に真美に相談されたんだ……」 |
プロデューサーは事情を何もかも包み隠さずに全て話した。 |
亜美 | 「そう…なんだ…」 |
P | 「だから真美の我がまま、今は聞いてくれないか?」 |
亜美 | 「社長にはもう話したの?」 |
P | 「いや、これはまず二人で決めてもらう問題だからな」 |
亜美 | 「パパやママは?」 |
真美 | 「ちょっとだけ話したよ。それは二人で決めてって言われたんだ」 |
亜美 | 「そう…だよね。真美は亜美じゃなくて真美…だもん」 |
真美 | 「亜美…急に話しちゃってゴメンね」 |
亜美 | 「んーん、いいよ真美。ねえ…兄ちゃん」 |
P | 「何だ?亜美」 |
亜美 | 「これからもし一人になっても、亜美は大丈夫だよね?」 |
P | 「今の亜美なら、もう大丈夫さ。ここまで育ててきた俺が保証する」 |
亜美 | 「…うん、まだ気持ちの整理は完全に付いてないけど…真美、亜美は一人でも頑張るよ」 |
真美 | 「えっ…じゃあ…」 |
亜美 | 「亜美が二人分…ううん、それ以上頑張ってみせるから」 |
真美 | 「ありがとう亜美…」 |
ぎゅうっ |
真美は亜美のことを抱きしめた。 |
亜美 | 「真美…」 |
ぎゅっ |
亜美もそんな真美のことを抱きしめ返した… |
この数週間後、二人での活動休止が発表された。 |
スキャンダルも一部で囁かれたが、そこは善永さんとの協力で何とか抑えることに成功した。 |
真美は親や学校などに任せることにして、プロデューサーは亜美のプロデューサーとしての活動を続けた。 |
……… |
時は戻って楽屋。ソファーに寄り添った二人の姿があった。 |
亜美 | 「兄ちゃんはどう?」 |
P | 「どうって?」 |
亜美 | 「兄ちゃんって呼んでくれる人が、前は二人居たんだよ」 |
P | 「…そうだな。真美は向こうで頑張ってるかな」 |
亜美 | 「たまに連絡はくれるけど、頑張ってるみたいだよ」 |
P | 「俺だってあの話を聞いた時には驚いたものさ」 |
亜美 | 「兄ちゃんも?」 |
P | 「でも俺の仕事は…アイドルみんなの夢を叶えてあげること…そう思ってたからさ」 |
亜美 | 「それで兄ちゃんは…どうして亜美のこと選んだの?」 |
P | 「どうして選んだって?」 |
亜美 | 「兄ちゃん悩んでたじゃん。真美に付いていくか、亜美のプロデューサーを続けるかって」 |
P | 「だってさ…」 |
ギュッ |
プロデューサーは横に居た亜美を引き寄せた。 |
亜美 | 「に、兄ちゃんっ!?」 |
P | 「真美はもう、未来を見据えた力強さが感じられてたからな」 |
亜美 | 「うん。そうだよね…あの時の真美はそうだったよ」 |
P | 「それだからこそ、未来を見失いかけてた亜美のことを守りたかったんだ」 |
亜美 | 「兄ちゃん…ありがと…」 |
亜美は顔をプロデューサーの胸の上へと載せた。 |
亜美 | 「兄ちゃんにこんなに思ってもらってたなんて、思ってもなかった…」 |
P | 「まったく…そんなしおらしくなんて、亜美らしくないぞ」 |
亜美 | 「たまには亜美だってこうなるもん」 |
P | 「でも亜美も大人になったな」 |
亜美 | 「そ、そっかな?」 |
P | 「一人での仕事でも一生懸命にやってる姿、けっこう好評だぞ」 |
亜美 | 「そうなの?知らなかったよ」 |
P | 「性格も…身体つきも昔に比べたらすっかり大人っぽくなったよ」 |
亜美 | 「兄ちゃんと一緒に…やってきたおかげかな」 |
P | 「それだけじゃないと思うけどな。まあ一言言うなら…」 |
チュッ |
亜美を起こして頬にそっと口付けたプロデューサー。 |
P | 「今の亜美は昔の何倍も何十倍も好きだぞ」 |
亜美 | 「亜美も…兄ちゃんのこと大好きだよ…」 |
P | 「亜美さ、さっきからやっぱり兄ちゃんって言ってるな」 |
亜美 | 「だって兄ちゃんは、兄ちゃん以上の存在になることが出来ないじゃん」 |
P | 「それならさ…」 |
亜美に真剣な目を向けた。 |
P | 「兄ちゃんじゃなくて、これからは名前で呼んでくれないか?」 |
亜美 | 「えっ?それって…」 |
P | 「ずっと考えてたさ。だけどどんなに考えたって行きつく先は変わらなかった。俺は亜美のことが好きなんだって」 |
亜美 | 「いいの?兄ちゃん…こんないつも迷惑掛けちゃう亜美で…いいの?」 |
P | 「どんなに迷惑掛けたって、受け止めてやるさ。プロデューサーとしてでも、それ以外としてでも」 |
亜美 | 「嘘じゃないよね…?こんな幸せって…嘘じゃないよね?」 |
P | 「この温もりが嘘だと思う?」 |
亜美 | 「ううん、温かいよ」 |
一筋の涙が亜美の瞳から零れた。 |
亜美 | 「これって、幸せの温かさ…なのかな」 |
P | 「亜美がそう思うなら、きっとそうだよ」 |
亜美 | 「兄ちゃん、亜美のこと…これからもずっとよろしくね…」 |
P | 「ああ。でも亜美にとっては2回目の突然の告白になっちゃったな」 |
亜美 | 「でも、幸せだから…幸せな告白だからいいよ。あ、でも…真美のことどうしよっか」 |
P | 「う…な、何とか…するしかないだろうな」 |
亜美 | 「じゃあ帰ってきたら、幸せなとこ見せつけちゃおね」 |
P | 「それで諦めてくれればいいけど…ま、そこら辺は頑張るしかないか」 |
亜美 | 「うん。だけど…だいぶ年の差になっちゃうね」 |
P | 「そうだな…あ、それでもいいのか?亜美は」 |
亜美 | 「うん。そんなの関係無いよ。だって兄ちゃんとだもん」 |
P | 「俺もだよ」 |
チュッ |
プロデューサーはその可愛い唇へと口付けをした。 |
P | 「よしっ。今の真美に見せても恥ずかしくないアイドルになるために、まずはこの仕事ちゃんとこなすぞ」 |
亜美 | 「うんっ!」 |
亜美は満面の笑顔でそう答えた。 |