Honest Impression(素直な気持ち)

真美「兄ちゃん、本当に良かったの?」
「ん?何の事だ?真美」
真美「だって、真美に付いてきてくれなくても良かったんだよ」
「そんなこと言ったってなあ…真美の親からも社長からも言われたしな」
真美「でもどうして?」
「何がだ?」
真美「亜美じゃなくて真美の方を選んだの?」
「何だよ真美…」
さて、ここはどこなのか?話は亜美と真美が15歳だった2年前に遡る…
………
亜美・真美「「みんな、ありがとー!」」
亜美と真美の2人が双子ユニットとして活動していた頃のこと、ステージ脇にて…
亜美「真美、次も頑張ろうね!」
真美「う、うん…亜美」
笑顔の亜美に対して何だか少し俯き加減の真美。
亜美「ん?どうしたの真美」
真美「何でもないよ、うん。次も頑張ろ」
それをプロデューサーが見逃すはずもなかった。
「お、二人ともおつかれ。今日のはなかなか激しかったけどよく乗り切ったな」
亜美「うんっ、気持ち良かったよー!」
真美「うん、これだけ激しいと逆にね」
「よし、じゃあ帰る準備してきてくれ。俺は挨拶してくるから」
亜美・真美「「はーい」」
 
楽屋にて…
ガチャッ
「二人とも帰る準備できたか?」
亜美・真美「いいよっ、兄ちゃん」 「できたよ、兄ちゃん」
「じゃあ一旦事務所に戻るからな」
亜美・真美「はーい」 「うん…」
………
そして事務所で…
「亜美、迎えが来たぞ」
亜美「ホントだ、あーもう兄ちゃんとお別れかあ」
「まあいつでも会えるんだからいいだろ。今日の疲れをしっかりと癒して来いよ亜美」
亜美「うんっ、兄ちゃんもね」
と、そこにはなぜか真美の姿が無かった。
「…あ、亜美、ちょっといいか?真美のこと、俺が送って帰りたいんだけど」
亜美「明日は休みだから、たぶん大丈夫だと思うけど何で?」
「ちょっとな」
亜美「うーん、よく分かんないけどいいよ」
「よし、じゃあ家の人にはそう伝えておいてな」
亜美「分かったー、それじゃーにー」
「ふう…」
亜美が事務所から見送られて…
「真美、そこに居るんだろ?」
真美「う…やっぱり兄ちゃんにはバレてたんだ」
「でもどうしたんだ?ライブ後も元気が無さそうだったしさ」
真美「それももう見透かされてたんだね」
「悩みだったら相談に乗るぞ、そのために俺が送っていくつもりだったからな」
真美「うん…」
 
車中にて…
「なるほどな。それは亜美や親には相談したのか?」
真美「まだだけど、兄ちゃんはどう思う?」
「俺はやれる時にやった方がいいと思う。でもアイドル活動はどうするつもりだ?」
真美「どうすればいいのかな?」
「やめるにしろ休むにしろ何らかの会見は必要だろうな」
真美「そうだよね、やっぱり」
「でもまあ分からなくもないな、一度離れてみたいってことだろ?」
真美「うん、でもなかなか言い出せなくって…今日はありがと」
「何か最近変だと思ったんだよ。でもこうしてきちんと話してくれて嬉しいぞ」
真美「兄ちゃん…」
「何よりもまずは親と社長と、何より亜美と相談しないとだな」
真美「うん。あー何か胸のつかえが取れたらお腹空いてきちゃった」
「よし、じゃあ何か食べてから帰るか」
真美「いいの?」
「ああ、今日はな」
真美「やっほーい!真美ね…」
この数週間後、二人での活動休止が発表された。
スキャンダルも一部で囁かれたが、そこは善永さんの協力で何とか抑えることに成功した。
親や社長と話し合った結果、プロデューサーはお目付け役として真美とともに留学先へと行くことになった…
………
「俺が真美を選んだ理由はな…」
ギュッ
一緒のソファに座っていた真美を抱き寄せるプロデューサー。
「亜美よりも真美の力になりたかったから、それだけだ」
真美「兄ちゃん…」
「アイドルの真美の夢を壊したくは無かったんだ」
真美「でも真美はもうアイドルじゃないよ」
「いいや、真美は俺の中ではずっとアイドルだぞ」
真美「えっ…」
「いや、アイドルじゃないか…」
チュッ
プロデューサーはその可愛い唇へと口付けをした。
真美「んっ…」
「可愛くて、ちょっぴりいたずらっ子で、それから思いやりのある大切な一人の女の子だよ」
真美「兄ちゃ…ううん、○○兄ちゃんっ…」
真美はプロデューサーの胸元へと顔をうずめた。
「なあ、真美」
真美「なあに?」
「こっちで卒業して、日本に戻ったらどうするつもりだ?」
真美「うーん…兄ちゃんは765プロに戻るんでしょ?」
「ああ。社長には何年かかっても、席は保障するって言われてるからな」
真美「でも真美は、亜美と比べたら全然下手になってるもん。もう戻れないよ」
「それなら俺が一から鍛え直してやるさ。それにこの留学は活かせるぞ」
真美「そ、そっかな?」
「交替でやってた昔と違って、違う活動だっていいんだからさ」
真美「あー、そっかあ。亜美と一緒じゃなくてももういいんだ」
「まあそれでも心配だって言うのなら、いっそのこと…」
真美「いっそのこと?」
「苗字、変えるか?」
真美「え?芸名でってこと?」
「いいや、本名でさ」
真美「そんな簡単にできないよー」
「いや、そんなの簡単さ。真美…俺が相手じゃダメか?」
真美「え?え…ええーっ!?兄ちゃんと真美が!?そ、そんな…」
「真剣だぞ、これでもずっと考えていたんだ」
真美「本当に真美でいいの?一時の感情じゃないよね?」
「真美でじゃない、真美だから。真美にじゃなきゃこんなこと言わないぞ」
真美「○○兄ちゃんっ…!」
真美はプロデューサーに思いっ切り抱き付いた。
真美「真美、兄ちゃんにこんなに想ってもらえてるなんて思ってなかった」
「真美…」
真美「でも、兄ちゃんが近くに居てくれて、嫌な顔せずに接してくれて…最後にこんな幸せになってもいいの?」
「いいんだよ、二人がそう思っているんだから」
真美「あ、でもこうなったら…亜美のことどうしよう?」
「何とか…するしかないだろうな」
真美「じゃあ帰ったら、幸せなとこ見せつけちゃおね」
「それで諦めてくれればいいけど…ま、そこら辺は頑張るしかないか」
真美「うん。だけど…だいぶ年の差になっちゃうね」
「そうだな…あ、それでもいいのか?真美は」
真美「うん。そんなの真美には関係無いよ。だって好きなんだもん」
「俺もだよ、真美」
チュッ
プロデューサーは再びその可愛い唇へと口付けをした。
「よし、まずはこっちのことを無事にきちんとやり遂げるぞ」
真美「うんっ!」
真美は満面の笑顔でそう答えた。
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あとがき
飛神宮子です。
今年度ラストは「あなたへの想い」の真美になりました。
え?最初からこんな設定の予定でしたよ?プロデューサーはきっと社長のコネで何か仕事をしてるんでしょう。
もちろん亜美は別に書きますよ。プロデューサーが向こうについていたらどうなるかという感じで。
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2009・03・31TUE
飛神宮子
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