Where is Warmth from?(温もりはどこから?)

菜々「こんな日にナナと一緒で良かったんですか?」
夏樹「菜々こそ、アタシとで良かったのか?」
菜々「…良くなかったら、きっとこうはなってないです」
夏樹「そうだな…」
菜々「でもこういうところで過ごすのはどうなんでしょうね」
夏樹「どうだろうな…でもアタシは菜々と過ごせればどこでも良かったんだけどさ」
菜々「温泉ってロマンチックとは程遠い気がしますけれど…」
夏樹「そうか?こうやって…」
ぎゅっ
菜々「キャッ!そんな急になんて…」
夏樹「おいおい、肩引き寄せたくらいで驚くなよ」
菜々「い、いきなりだったからですぅ」
夏樹「でもさ、こうやって寄り添えるだろ?」
菜々「…はい…」
夏樹「それにしてもこうして温泉も久し振りだ」
菜々「夏樹さんはそうなんですね」
夏樹「菜々は先月のグラビア出てたもんな」
菜々「撮影はまだ10月でしたね。気候的にもちょうど良くて気持ちよかったです」
夏樹「そういう業界だし仕方ないさ」
菜々「でも撮影で入るよりもこうして…夏樹さんと一緒の方が何倍も気持ちいいです」
ぴたっ
夏樹「ハハッ、こんな密着されるとせっかくの広い浴槽が無駄になっちまうな」
菜々「夏樹さんの温もりをもっと感じたかったですから…」
夏樹「アタシもだよ、まあでも…」
菜々「はい?」
夏樹「あっちがそんなに五月蝿くなければいいんだがな」
菜々「向こうが…はい…」
ここは以前も四人で来た346プロ合宿や特訓用の宿泊施設である。
みく「李衣菜チャン、シャンプーとってー」
李衣菜「えっと…みくのってこれだっけ?」
みく「それは菜々チャンのー。みくのはそっちの透明のピンクのって昨日も言ったにゃー」
李衣菜「ああこれね、はい」
みく「ありがとにゃ」
李衣菜「でもさー、この四日間で完璧に憶えて来いってプロデューサーも鬼だよね」
みく「みく達も個別で忙しかったから、この時期しか一緒にやれる時間がとれないしー」
李衣菜「それでトレーナーさんも忙しくて初日と最終日だけしか見てくれないしさ」
みく「でも見てくれるだけでもありがたいにゃ。本当は明日の最終日だけだって話だったでしょ」
李衣菜「この時期っていうのが悲しいけれどね」
みく「確かにクリスマスの連休にお仕事がないってアイドルとしてちょっと悲しいにゃ」
李衣菜「この時期を空けるしかなかったってプロデューサーが言った時、みんなポカンとしてたもん」
みく「でも…逆に誰にも邪魔されないから…それでいいにゃ」
李衣菜「そうだね…」
チュッ
李衣菜の唇が洗い場で隣のみくの頬へと触れた。
みく「あっ…」
夏樹「だりーもみくも今回来てるのはアタシ達だけだけど、聞かれてるかもだから部屋以外ではやめとけよー」
菜々「いくら今は宿の人だけとは言ってもですよー」
李衣菜「そんなこと言って、なつきち達もそんなイチャイチャしてるのにさー」
菜々「いいじゃないですか…ね、夏樹さん」
みく「菜々チャン達、ここに来てからいつも以上じゃないかにゃ?」
李衣菜「言われてみれば確かにそうかも…他のところでもそこまでは見なかった気がする」
夏樹「まあ…な、菜々」
菜々「はい…夏樹さん」
みく「それはそれでいいにゃ。李衣菜チャン、ボディソープはー?」
李衣菜「はい…あ、今日明日使ったら無くなるかも」
みく「それなら寮に買い置きがあるよ。それにまた入れとくね」
李衣菜「ありがと」
菜々「そういえばみくちゃんってお正月生放送終わったら実家に帰るんでしたっけ?」
みく「もう切符は取ってあるからその予定だにゃ」
菜々「何日に戻ってきます?」
みく「5日の午後一で李衣菜チャンと収録があるから4日の夜にはこっちにいるよ」
菜々「それなら4日に寮へアレ持って行きますね。ナナも確かシフト入ってますし」
みく「アレ、手に入りそうなのかにゃ?」
菜々「この前聞いたら大丈夫そうだって言ってくれましたから」
みく「うわー、お正月明けが楽しみになってきたにゃっ」
李衣菜「えー、なになに?何なのみく」
菜々「ナナの方のアイドルの皆さんに聞いてみたら、持ってる方がやっぱりいまして」
夏樹「大人の人のってことか。菜々んとこは一人除いて全員成年だもんな」
菜々「もう、一応ナナも未成年ですー」
夏樹「そうやって意地になるとこが可愛いぜ」
菜々「うう…」
みく「李衣菜チャンは楽しみにしているといいにゃ」
李衣菜「うん、何だか分からないけど分かったっ」
夏樹「おーい、そろそろ身体も終わったかー?」
みく「あとみくが流すだけにゃ。李衣菜チャン、寒いから先入ってていーよ」
李衣菜「そうさせてもらうね」
夏樹「じゃあアタシ達も身体流すとするか」
菜々「そうですね、行きましょう」
ザバッ ザバンッ ジャプンっ
夏樹と菜々が李衣菜と入れ替わりに浴槽を出た。
シャーーー キュッ
みく「あ、夏樹チャンと菜々チャン。今終わったからどうぞにゃ」
夏樹「おう、じゃあ身体洗ってもう一回浸かったら上がろうぜ」
菜々「そうですね。また背中流します?」
夏樹「ああ、身体の方を洗う時に頼む」
ザプンっ
みくも浴槽へと浸かったようだ。
夏樹「だりー達ー、さっきの言葉そのまま返しとくからなー」
李衣菜「えー、何ー…ひゃっ!もう入ってくるなりそういうことするー」
みく「だって身体洗ってる時にやるとりーなチャン凄く怒るにゃ」
李衣菜「そりゃそうじゃん。みくだってされたら嫌でしょ?」
みく「そうでも…にゃっ!ひゃぁん…その手付き本当にどこで憶えてきたのー?」
菜々「…自分たちの言ってた事、完全に忘れてません?」
夏樹「まあそれがアイツ等らしい点かもな…と、ほいシャンプー」
菜々「ありがとうございます。今日も汗が凄かったですからねぇ」
夏樹「そうだな。冬とはいえ暖房多少入った中でみっちりダンスしてたしな」
菜々「今日もマッサージ、お願いできますか?」
夏樹「もちろんだ。アタシも頼むよ」
菜々「はい、温泉だけじゃ筋肉が回復できませんからね…」
夏樹「菜々はこの合宿終わって向こう戻ってからも練習はやるのか?」
菜々「一応事務所が開いている日は自主練でもやれればって思ってます」
夏樹「アタシも出来る限り付き合うぜ」
菜々「そんな、時間取らせるなんて悪いですよ」
夏樹「遠慮するなよ、アタシだって完璧じゃないしさ。それに一緒にやってこそ相方だからな」
菜々「…はい。お願いします…」
ザプンッ
李衣菜「…みくぅっ…!」
みく「りーなチャぁンっ…!」
夏樹「…あいつら…本当に他の組がいなくて良かったぜ…」
菜々「…今日の夜も隣は騒がしいんでしょうかね…」
聖なる夜、二組の愛は温泉のように絶えず温かかった…
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あとがき
飛神宮子です。
今月の百合百合枠のもう一本はAsterisk withなつななの四人です。
この温泉合宿施設はなつななの最初の話で出てきた、夏樹と菜々にとっては大切な場所です。
聖なる日、知っている仲間内だけしかいない…ムードなんて場所ではない、雰囲気だけで充分なんでしょうね。
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2016・12・23FRI/NAT
飛神宮子
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