10 Years Later...[18](10周の先《18》)

千鶴「そうなります…えっ!?」
「ど、どうした!?停電か!?」
急にスタジオが暗くなった…
???「そこに一人だけ名前を記載していなかったのは…」
「私達がこの番組の企画者だったからです」
その声の先に二つのスポットライトが…
マキノ「レンズの向こうに見えるのは…」
椿「真実の姿という名の油断…」
マキノ「10年という時の流れを…」
椿「全てはこのカメラが覚えています!」
マキノ「シャッターが下りた時、それは一つの事実になる!」
椿「私たち」
椿・マキノ『ファインダー!』
口上が終わり、ようやくスタジオの照明が戻った。
「は!?ちょっと待て、江上…江上……おい、これ椿ちゃんの名前だけ確かにリストに無いぞ…」
千鶴「この番組の冒頭で江上さんは出ていましたけど、そういえばシャイニングトラベラーズで一人だけ今のお仕事を紹介してなかったです」
椿「フフフ、そういうことです」
マキノ「まったく椿さんも悪い人よね。このコーナーをここで復活させるために、わざと自分が呼ばれないようにリストから外すなんて」
椿「そういう工作をすることを覚えたのは、マキノさんのおかげですからね」
マキノ「ここからは私達のコーナーを入れさせてもらうわね」
椿「ちなみに私の現職はマキノさんと同じく、346プロのアイドルやタレントに関する雑誌や記事配信の編集員兼カメラマンです。あとタレントもしています」
「もしかしてコーナーって…アレだよな?」
千鶴「アレ…ですよね…」
椿「『美城365番地』でやっていたあのコーナー、『美城マイナス1番地』です」
マキノ「これは椿さんが撮影係として色々な方の撮影を行った中から…厳選したとても地上波ではお送りできない写真をお送りするわ」
椿「今回は10年分の総決算、今まで撮り溜めていたものから厳選してお送りします」
マキノ「まずは欠席裁判になってしまって悪いのだけれども、今ここにいない方々の写真を軽く紹介するわね」
椿「最初は浜口あやめさんと脇山珠美さんのこちらの写真をどうぞ」
モニタには二人が夕陽の差す事務所ロビーでイチャイチャしている場面が表示された。
マキノ「これはまあ…本人たちが当時から仲が良いからよね」
椿「そうですね。確か歌鈴さんを待っていたところで二人きりになったからだったと写真をお渡しした時に聞きました」
マキノ「こうして見ると青春さも感じるわね」
椿「次は…新田美波さんとアナスタシアさんのこちらの写真です」
モニタにはプールでアナスタシアの後ろから抱き着く美波の姿が表示された。
マキノ「この美波さん、どうも表情が…ね」
椿「いつものキリっとした表情では…ないですね」
マキノ「この二人は寮でもそうとう深い仲だったものね…詳しくは言わないけども」
椿「今度は塩見周子さんと小早川紗枝さんのこちらをいきましょう」
モニタには紗枝に羊羹をアーンしてあげている周子の姿が表示された。
マキノ「これはどうやってこんな至近で撮ったのか知りたいわね…」
椿「お茶会の時に撮った中の一枚ですけど?」
マキノ「それだけでこんな無警戒な写真が撮れるものかしら…」
椿「フフフ、そういうものです。ではここに居られない組はこれで最後ですね。前川みくさんと多田李衣菜さんの一枚です」
モニタにはソファで頬をくっ付け合っている二人の場面が表示された。
マキノ「この二人も今でも続いているほど仲が良いわよね」
椿「そうですね。喧嘩するほど仲が良いを地で行っているお二人かなと思います」
マキノ「二人とも嫌そうな表情していないってことは、じゃれ合っているところね」
椿「実は引きの写真は…こんな感じです」
写真が引くとモニタにはみくが李衣菜をホールドしている場面が表示された。
マキノ「ああ…なるほど、納得よ」
椿「ではここからはこちらに居られる、または居られた方々の写真です。まずは黒川千秋さんと佐城雪美さんです」
モニタには一緒にペロ目線で這いつくばって遊んでいる姿が表示された。
千秋「この写真…いつの間に撮られてたのかしら…」
雪美「千秋……猫耳付けてる……」
千秋「ええっ!?!?あっ!け、消してぇっ!」
雪美「……可愛い……写真欲しい……」
椿「では雪美さんには後でお渡ししますね」
マキノ「これがあるから椿さんは怖いのよ…」
椿「天性のシャッターチャンス運があると言ったのはマキノさんですからね」
マキノ「ええ…確かに言ったのよね…。腕を見込んで諜報に引き込もうとしたこともあったもの」
椿「では続いては、遊佐こずえさんと桐野アヤさんです」
モニタには一緒にお人形遊びをしている場面が表示された。
アヤ「懐かしいなーこずえ」
こずえ「アヤにはいっぱい遊んでもらったねー」
アヤ「ま、アタシも今は公表してるけど昔からドール遊びは趣味にしてたからな」
こずえ「アヤの人形、すっごく大切にしてあったよー」
アヤ「妹みたいな存在のこずえなら触るのは許せたんだよ」
こずえ「えへー」
マキノ「フフフ、本当に微笑ましい場面よね」
椿「はい、撮っていてこちらまで笑顔になれる一枚でした」
マキノ「今でも仲は良いみたいね」
椿「どうやらそうみたいですね。今度は柳清良さんと棟方愛海さんです」
モニタにはソファで清良に膝枕されて幸せそうな愛海の姿が表示された。
マキノ「あら、愛海ちゃん気持ち良さそうね」
愛海「こんな写真撮られてたなんて知らなかったよ」
清良「私が良いって言ったの。このふぬけた愛海ちゃんの表情も一緒に収めてってね」
愛海「清良さんー…でも自分で言うのもなんだけど、このあたしって幸せそうな顔してるね」
清良「ええ、膝枕で別のことまで想像してたみたいでね…」
愛海「い、今はそんなこと無いからっ!一応…」
マキノ「本人たちがそう言っているのだから良い…のよね」
椿「そうだと…思います。次はこちらにしましょう………」
………
写真が全部終わり…
マキノ「数年ぶりとはいえ、威力は相変わらずだったわね」
椿「記録係として、数万枚…いえ数十万枚はもうあるかなと思いますが、これでもまだ一部ですよ」
マキノ「サラッとこう言うんだもの。この分野に関しては今でも頭上がらないのよ」
椿「あ、忘れていました。もう1枚ありましたね、どうぞ」
モニタには心の作った服を着させられた千鶴の姿が表示された。
千鶴「…!?!?!?私っ!?」
「無かったからって油断してたな、千鶴ちゃん。これいつくらいだったっけ」
千鶴「……ファッションショーの1年半後くらいです…たぶん」
「それくらいかー、やっとはぁとの作ったのも気にしないで着てくれてた頃かな☆」
千鶴「…だって私を着せ替え人形のように楽しむから…」
「そうだったなー。あの頃は特に人に着せる服を作るのが楽しくてな。あ、椿ちゃんこの写真もらえるか?」
椿「はい、後で何枚かお渡ししますね。ではそろそろコーナーを締めましょうか」
マキノ「そうね、それではファインダーの『帰ってきた美城マイナス1番地』でした」
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「千鶴ちゃん、立ち直ったか?」
千鶴「は…はい、何とか大丈夫です」
「そんじゃ、このままエンディングな」
千鶴「長時間の生放送皆さんおつかれさまでした」
「10年間と聞くと長いようで短かったな」
千鶴「こういうお仕事をしているとあっという間に過ぎていった感じがしました」
「まあまだたった10年ってところだけどな」
千鶴「これからさらに積み重ねていければいいですね」
「そだな☆そこは本人の心意気しだいだぞ」
千鶴「はいっ」
「では『346プロアイドル部門10周年記念っ!あのアイドルは今?We're the ever friends!』」
千鶴「CS○○チャンネルのスタジオから、そろそろお別れします」
「司会進行はしゅがーはぁとこと佐藤心と…」
千鶴「同じく司会進行の松尾千鶴でした」
心・千鶴「それではこれからも346プロを」
全員『よろしくおねがいしますっ!』
\パチパチパチパチパチパチパチパチ/
 
おしまい
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あとがき
飛神宮子です。
10周年記念10年後SS、最終話です。
椿さんは第1話にほんの少しだけ出ていましたが、実はその時に現職を明かしていません。
もともとこの番組は椿とマキノの二人が画策して企画を練って制作していた番組(という設定)だったからでした。
そして過去に似た番組でやっていた写真で暴露をするコーナーを復活させるための策略だったのでした。
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2021・11・30TUE
飛神宮子
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