White Snow Fall In The Town...(白い雪が街に…)
「冬弥クン…まだかな…」
「ご主人さま…まだでしょうか…」
2月2日--夕方の大きな木の下に少女が2人。
「今日は理奈ちゃんのスタジオ撮影のA・Dだったかな…」
「まだきっと工事の仕事中…なんですわね」
「やっぱり忙しいんだろうな…」
「慣れない職場でしたわよね…」
ハーーッ はーーっ
2人は白き息をはいた。
と、ふと二人は向かいあう形となった。
「あ…あなたも誰かを待っているのですか?」
「はい…あなたもですか?」
「そう…なりますね」
「あなたの待ち人は、恋人さん…なのですか?」
「え…そ…は…はい…」
ポッ
言われた方は少しだけ顔を紅くした。
「あなたも…ですか?」
「…はい…」
ぽっ
もう一方の顔にも紅みがさしてきた。
「どんな方…なんですか?」
「え…?」
「あなたの…待っている人です…よ」
「…私の待っている人は…とても優しくて…そして責任感の強いお方ですわ」
「はぁ…そうなんですか…」
「私を入れて12人も養って戴いてますし…」
「えっ!?12人って…」
「私が一番上で、私の下に11人の妹がおりますから」
「いいですね…そういうのって何だか…」
「そう…ですか?」
「家がいつも、賑やかじゃないですか?」
「確かに…喧嘩は多々ありますけれど、賑やかなのは変わりないかもしれませんね」
「私なんか、仕事が仕事ですから…あんまり家族と接する機会がないので…」
「えっ!…どんな仕事をされているのですか?」
「一応…テレビの中で仕事をさせてもらってますけど…」
「あっ!そういえば…テレビでお見掛けをしたことがありましたわ」
「あ…ありがとうございます」
「いえいえ、お礼される事でも無いですわ」
「ちょっと今日は無理を言って、休みにしてもらったんですけどね」
「そうなのですか…お仕事大変ですわよね」
「そうですけど…楽しいですし…冬弥クンがいるから…」
「その冬弥さんが、今待っている方ですか?」
「え…は…はい…」
「どんな方なのですか?」
「はい…えっと…高校時代からの…幼なじみです…」
「幼なじみ…ですか」
「はい、優しくて…頼りになる人…なんです」
「何だかいいてすね…そういうのって」
「そうですか?」
「そうですよ…とても素敵だと思いますわ」
「そういう風に言われると、何だか照れちゃいます」
言われた方の顔はさらに赤みを強めた。
「そういえば、どうして今日はこちらに?」
「え…えっと今日は冬弥クンとデートで…ここで待ち合わせにしたんです」
「デートですか…」
「はい、久しぶりにお休みを戴きましたから」
「いいです…ね、何だかそういう感じなのって…」
「と言うことは…あなたはデートじゃないんですか?」
「一応…今日が誕生日…なんです」
「えっ、あ…おめでとうございます」
「ありがとうございます…それで今日は、ここで待ち合わせてどこかに行こうってことになりまして…」
「それってデートだと思いますけど…」
「…それも…そうですね」
「それにしても遅いなあ…冬弥クン」
「そういえば、あなたは冬弥さんと何時の待ち合わせなんです?」
「えっと…6時でしたけど…」
「私もそうだったんですけどね…」
そこから見える駅の時計は、既に6時半を指していた。
………
それからしばらく、取り留めの無い会話をしていると、木の両側から…
たったったったっ
「おーい、ゆきさーん」
ざっざっざっざっ
「ごめん由綺っ、仕事が長引いたっ」
「「えっ!?」」
時が止まる由綺とゆき。そして…
「フフッ、ゆきって名前だったんですか?」
「ふふっ、そちらも由綺さんだったのですね」
「そういえば名前だけは聞いていなかったですね」
「私も聞くのをすっかり忘れていましたわ」
「ごめんね、ゆきさん。仕事が長引いちゃって」
「いいんですのよ、私たちのために働いて下さっているのですから」
「ごめんな、由綺」
「もぉ…せっかく会える日なんだからぁ」
つんっ
由綺は冬弥の額を人差し指で突いた。
「あっ、やったなぁっ!」
つんっ
「きゃんっ!」
冬弥は由綺の額を人差し指で突き返した。
「ご主人さま、行きましょう」
「そうだね、ゆきさん」
「冬弥クン、行こっ」
「ああ、そうだな」
と、4人が木の下から出て行こうとした時だった…。
「あ…雪だ…ゆきさん…」
「雪だな…由綺…」
「雪…ですね、由綺さん」
「そうですね…ゆきさん」
その雪は4人を包み込むように、降り続いていった…
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あとがき
えっと、今回はちょっと趣向を変えたクロスオーバーにしてみました。
ただ一つ…森川由綺は一人称が「由綺」だったんですけど、都合上「私」にしてしまいました。
この作品はただ、二人の名前が「Yuki」であったから書いてみた作品なんですがね。
ま、こういう系統も面白いかなと。
このシリーズ、次は「みどり」編か「弥生」編か…ま、思いついたら書こうと思いますので。
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2004・01・24SAT
琴瑞