On the May Wind(皐月の風に乗って)

「ふわぁぁ…暖かいれす…」
春のある日のこと、みどりは公園の芝生に座っていた。
「気持ちいいれすねえ、んーっ!」
と、そこに…
パサッ
「ん?これは何れしょう?」
何やら一枚の少し固い紙が飛んできた。
「んー…よく分からない絵が書いてあるれすね」
その絵は鉛筆の描きかけのようで、何が描かれているのかはみどりには理解できていないようだ
「…あーっ!ここまで飛んじゃってたんだあ!」
「ふえ?」
ふとみどりが見上げると、見た目からして優しそうな少女が立っていた
「ごめんね。部屋の窓を開けてたら飛んでっちゃったんだ」
「これは何なのれすか?」
「ちょっと特別な物を描くための紙なんだよ。ある物を作ってたからね」
「んー、この紙は…」
ポケットから虫眼鏡を取り出し、見入るみどり。
「この厚されこの大きさなのは…あ、あゆみ姉さんのれ見たことあるれす!」
何やら思い出したようだ。
「ということは、何か本を作ってるのれすね?」
「正解!ちょっと友達のお手伝いをしてたんだけどね」
「ほえ?お手伝いの途中だったんれすか?」
「うん。ちょうど今は休憩だったんだー」
 
「へー、みどりちゃんって言うんだ」
「はい、みどりさんはみどりさんなのれす」
「それでみどりちゃんは、今日はどうしてこんな所に居るのかな?」
「散歩の途中だったんれす。気持ち良さそうな芝生があったんれ、ついなのれすよ」
「そうだよねえ、ここの芝生は気持ちいいもんねえ」
「それれお姉さんは何て言うんれすか?」
「私?私はねえ、羽居。三澤羽居だよ。」
「羽居姉さんれすね」
「うん。でも今日は本当にのどかだねー」
「そうれすねぇ…何らかポカポカれ、ふぁ〜あ…眠くなりそうれす」
「そうだねぇ…あ、そのまま寝ちゃうと土が付いちゃうよー」
「あ…そうれすね」
「ほら、私もちょっと寝ようと思ってたとこだから」
羽居は寝っ転がりながら腕を差し出した。
「それだと羽居姉さんの髪が汚れるれすよ」
「いいの。…んーそうだなあ…あ、そのかばんいいかな?」
「ふえ?このみどりさんのれすか?…いいれすよ。はいれす」
「ありがとー」
ぽふっ
羽居はみどりの鞄を頭の下へと敷いた。
「んーっ、気持ちいいね」
「そうれすねえ」
「そういえばみどりちゃんはどこに住んでるの?」
「んーと、ここかられすと…向こうの海の方れすよ」
「そーなんだー」
「羽居姉さんはどこなんれすか?」
「私?私はねー、あの寮だよ」
「あの寮なんれすか。ということは羽居姉さんは高校生なんれすね」
「そうだよ。もしかして高校生に見えなかった?」
「そんなことないれすよ。私服だったから分からなかっただけれす」
「そっか、良かったあ」
「それれ、さっき言ってた本ってどんな本なのれすか?」
「んー…ちょっとみどりちゃんには言えないかなあ」
「そうなんれすか。それだとあゆみ姉さんと同じかもれす」
「そ、そうなの?」
「はい。あゆみ姉さんも見ようとすると隠してしまうのれす」
「あー…」
少し苦笑いする羽居。
「たぶん同じだと思うよ」
「そういえば、さっきの紙はどんなのを描いてあるのれすか?」
「さっきの?あー、これ?」
胸元に置いてあった用紙を腕枕していない方の手で翳した。
「これはねえ…聞きたい?」
「ほえ?なんれれすか?」
「じゃあこっそり教えてあげる……………してるとこ」
「ふええっ!?そうなんれすかっ!?」
「友達がそういうの描いてるから…と言っても後輩だけどね」
「れも…うう、何だか恥ずかしいれすね」
「うーん、確かに普通は男の子と女の子がすることだからねー」
「そうれすよね」
「みどりちゃん、ちょっとやってみる?」
「ふえ?…ええっ!?」
「これに描いてあるのは男の子同士だけど、同じ性別だっていうのは変わらないよね?」
「そうれすけど…えっとれすね、うー…」
「可愛いのととさっきからの舌っ足らずなその声、みどりちゃんのこと好きになっちゃったのかな」
「羽居姉さん…れも、みどりさんも好きれすよ」
「それなら…誰も見てないから、ちょっとだけ…ね」
「…はいれす」
羽居は枕していた腕をそのまま自分の方へと引き込んで上半身だけ起こした。
そして次第に近付いていく顔と顔。
「みどりちゃん…」
「羽居姉さん…」
チュッ
羽居は少しだけ顔を傾け、みどりのその唇へと自らの唇を重ねた。
「ありがと…みどりちゃん」
「羽居姉さん…ありがとれす」
「今日は可愛いみどりちゃんに会えて良かったな」
「みどりさんも、こんなに優しいお姉さんに会えて嬉しかったれす」
「よしっ…あ、そだ。みどりちゃん、メモするもの持ってる?」
「書く物れすか?そのかばんに入ってるれすよ」
「ちょっと書いていいかな?」
「いいれすよ」
何やら書いている羽居。
「これ、私の連絡先ね。みどりちゃんのも教えて」
「え?でもどこに書けばいいれすか?」
「そうだなあ…あ、鉛筆だからこの原稿の裏でいいよ」
「これに書いちゃっていいんれすか?」
「後でちゃんとした紙に書くから…あ、でもこれ友達に言って貰っちゃおうっと」
「…はい、これれいいれすか?」
「うんっ。あ、もう行かなくちゃ。休憩時間終わっちゃってたー」
「みどりさんもそろそろ帰る時間なのれす」
「じゃあ、また会おうね」
「はいれすっ!」
皐月の空の下、二人の心は太陽のように温かくなっていた…
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あとがき
はい、お久しぶりのクロスオーバーSSは、自分の誕生日記念になりました。
それでどんなSSにしようかなと思いましたが、掃除していたら昔書いた書きかけのが出てきまして…
ちょうど季節も良さそうな感じだったので、加筆してまとめてみました。
それにしても晶ちゃん、どんな漫画を描いていたんでしょうねえ…(苦笑)
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2010・05・02SUN
琴瑞
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