Binocular Vision For You(あなたへの焦点距離)

「んー、見つからないれすねぇ…」
「だめデスね…出てこないデス…」
虫眼鏡で地面を見ている少女二人が、四つん這いのまま後ろへと移動していた。
「やっぱり見つからないれす…」
「ここには無いんデスね」
トンッ
ふと後ろ向きに進んでいた二人の足が触れ合った。
「ん?何れすかっ?」
「何デスっ!?」
クルッ じー
持っていた虫眼鏡で相手を見入るみどり。
「んー、怪しい人れはなさそうれすねぇ」
一方の四葉も虫眼鏡で相手を見た。
「ん、誰デスか?アナタは」
「ほえ?みどりさんのことれすか?」
「むむっ、みどりちゃん…デスか?」
「はい、みどりさんはみどりさんれすよ」
「なるほど、そうデスか」
「じゃあ、あなたは誰なのれすか?」
「ん?四葉は四葉デスけど?」
「四葉さん…れすか?」
「そうデスよ」
四葉は人差し指でこめかみを指しながら応えた。
「その四葉さんは、何をしていたのれすか?」
「んー、それは教えられマセンね」
「れも…何か探していたみたいれすけど?」
「むうっ…バレていたのデスか?」
「みどりさんと同じことをしていたれすから」
「そ…それもそうデスね」
「一体何を探していたのれすか?」
「んー、それは兄チャマの秘密デス」
「四葉さんの兄ちゃん…れすか?」
「そうデスっ!四葉は兄チャマの秘密をチェキしてるのデス」
「んー、やっぱり同じ事しているれすね」
「んっ!?みどりちゃんは何をしていたのデスか?」
「みどりさんはれすね、ご主人さまの秘密を探っていたのれす」
「ん?ご主人さまって何デスか?」
「ほえ?ご主人さまは、ご主人さまれすけど?」
「ということはデス…みどりちゃんは…守護天使デスね」
「ふえっ!?どうして分かったのれすか?」
「ふふーん、四葉を侮ってもらっては困りマス。ご主人さまがいるということは誰かに仕えているのデス」
「ふーむ、それもそうれすねえ…」
「みどりちゃんくらいの歳で誰かに仕えているなんて、守護天使くらいしかアリマセンよ」
「ほえ〜、大正解れすねぇ」
「んー…でもこの街に来て、初めて守護天使を見たのデス」
「ん、そうなのれすか?」
「そうデス。んー、立ち話もなんデスから、そこのベンチでお話しマスか?」
「それもそうれすね」
ぽんっ ぽふっ
二人は近くのベンチへと腰掛けた。
「えーっと、みどりちゃんは昔、どんな動物だったのデスか?」
「みどりさんの前世れすか?」
「んー、そういうことデスね」
「みどりさん、昔はタヌキさんだったのれすよ」
「タヌキ…Raccoon dogのことデスね」
「らくぅんろっぐ…れすか?」
「タヌキのイングリッシュデスよ」
「んー、そうれすか。初めて知ったのれす」
「でも、タヌキだったのデスか」
「そうれす」
「そうすると…この髪飾りはタヌキの耳としっぽデスね」
「はい、そうなのれすよ」
ぎゅうっ
四葉はみどりのポニーテールを掴んだ。
「ん…少しくすぐったいれすよ…四葉さん…」
「でも、綺麗で可愛い髪デスよ」
「そう言われると何らか照れてしまうれすよ」
みどりは少しだけ顔を紅くした。
「んー、そんな顔も可愛いデス」
「う〜…何らか本当に恥ずかしいれすよぉ…」
「そうデスか?」
「はいれす…よっ!」
ツンッ
みどりはそう言いながら四葉の頬を突いた。
「ひゃぁんっ!」
「んー…四葉さんのほっぺ、柔らかいれすね」
「そ…そうデスか?」
今度は四葉の方が顔を紅くした。
「そうれすよ、スベスベれ気持ちいいれすよ」
さわさわさわ
みどりは両手で四葉の頬を触った。
「く・くすぐったいデス、みどりちゃん」
「さっきのお返しれすよ、四葉さん」
「そんなことをスルなら、みどりちゃんのほっぺも触っちゃいマスよ」
ペタペタペタ
言うより早く、四葉もみどりの頬を触り始めた。
「みどりちゃんの肌も、気持ちいいデスね」
「そうれすか?」
「はいデス」
「何らか触られていると、ふにゃ〜っとなっちゃうれすよ」
「とってももちもちしていて、気持ちいいデスよ」
「やっぱりそう言われると恥ずかしいれすね」
「これでおあいこデスネ」
「んー、まあそうれすね」
「フフ…でもみどりちゃん可愛いデス」
「アハハ…四葉さんも可愛いれすよ」
「んー、そんなみどりちゃんには…」
チュッ
四葉はみどりの頬へとキスをした。
「んっ!?四葉さんっ!?」
「挨拶と感謝デスよ」
「ん…そうだったのれすか、じゃあみどりさんも…」
チュッ
みどりも四葉の頬へとキスをした。
「みどりちゃん…」
と、そこに…
くぅぅぅぅ きゅるるるる
お腹の鳴る音が二つ。
「あ…恥ずかしいデス…」
「そうれすね…もうお昼れすから…」
「あ、そうデスっ。四葉の家でご馳走シマスよ」
「え、いいんれすか?」
「大丈夫デスヨ、行きマショウ」
「そうれすね。それじゃあ家に連絡するんれ、家に着いたら電話を貸してくらさい」
「ハイ、じゃあ行きマショウみどりちゃん」
「そうれすね、四葉さん」
二人は四葉の家へと歩みを進めていった…。
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あとがき
約半月ぶりのクロスオーバーSSと相成りました。
色々と並行して書いているから、筆が遅い事遅い事。
すいません、連荘して予告を破りましたね。てなわけで今回のテーマは「観察」です。
ま、タイトルで分かるとは思いますけど。
どちらも好きなキャラなので書きやすかったですよ、結構ね。
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2004・03・15MON
琴瑞
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