Magic of Shoot up Heart(心を射る魔法)

「藤田くん、短い時間だったけど楽しかったね」
「そうだな。あ…そうだ、もう一つ寄りたい所があるんだけどいいか?」
「いいけど、でも藤田くんにおごってもらってばっかりで悪いよぉ」
「今日は理緒ちゃんの誕生日だぞ、それくらい持ってやるのが男ってもんだ」
「え…でも…」
「それに今日はお前との…デートだからな」
「あ…うん…」
少し顔を赤らめる二人。
「俺から誘ったんだし、今日は俺のおごりだよ」
「ごめんね藤田くん。私、今までそういう経験が無くて…」
「ま、それは言いっこなしだ、俺だってそうだからな」
「そうだったんだ、藤田くんならもっとこういう経験多いと思ったけど?」
「え…ま・まあな、でも今は理緒ちゃんだけだからな」
「え…あ・うん」
ぎゅうっ
理緒は人目も憚らず浩之へと抱きついた。
「お・おい…ま、いいけどよ」
「あ、ごめん…迷惑だよね…」
「いや、いきなりだしこんな街中だったからさ。人が見てない所でならいくらでも構わないさ」
「えっと…うん。私は藤田くんなら…構わないよ」
「いや、そういう意味じゃなくてだな…ってそういう意味でもないわけじゃないけど…な」
「うん…」
「あ、そろそろ見えてきた。ほら、そこだ」
「ここって、喫茶店?」
「ああ、ここのホットケーキが美味しくてさ、理緒ちゃんにも一度食わしてやりたかったんだよ」
「へえ、ホットケーキかぁ…食べるの何年ぶりかなぁ…?」
「…そうか、やっぱりあんまり食べたことないのか…」
「あのさ、藤田くん。一つお願いがあるんだけどいいかな?」
「ん?何だ?」
「良太とひよこのためにお土産にしてもいいかな?」
「いいよ。店が持ち帰りにしてくれるなら、それくらい構わないさ」
「ありがとう。優しいよ、藤田くんって」
「そ・そうか?」
「うん、とっても優しいよ。あのXmasの時からずっと…」
「ま・まあこんな所で立ち話も何だしさ、入ろうぜ」
「そうだね、えへへ」
HONEY BEEへと二人は入っていった…。
………
「おーい結花ー、お客さんだぞー!」
「健太郎ー、相手しといてー!」
「おい、俺は客だぞー!」
「私もリアンもスフィーちゃんも手が離せないのー、お願いー!」
「…ったく、しょうがないな…。いらっしゃいませ、2名様でしょうか?」
「あ、はい」
「それではこちらへどうぞ。ご注文が決まり次第、お呼びください」
と、言われてやっている割には、どこか手慣れている健太郎であった。
「まあ食べるものは決まってるからいいとして、理緒ちゃんは何飲む?」
「えっと…どうしよう…藤田くんと同じのでいいよ」
「じゃあコーヒーでいいか?」
「うん」
「すいませーん、お願いします」
「…まだ来ないのか、結花のやつ…ま、行くか。はい、ご注文の方をどうぞ」
「えっと、ホットケーキ二つとコーヒーを二つお願いします」
「はい、以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「かしこまりました。 おーい結花ー、ホットケーキ2つにコーヒー2つだってよー!」
「分かったー、今そっち行くからコーヒー出しといてよー!」
「早く来いよー!…ったく」
カチャカチャカチャカチャ コポポポポ コポポポポポ ガサガサガサ
なぜか客とは思えない慣れた手つきでコーヒーを淹れる健太郎。
「お待ちどうさまでした、コーヒーの方お持ちしました。ホットケーキの方はもう少しお待ちください」
「はい…ん?どうしたんだ?理緒ちゃん」
「ううん、ただこういうところって初めてだから」
「そうだな、俺だってまあそんなに無いしな」
と、そこに…
「ごめんごめん健太郎、今から作るから。ホットケーキ2つだっけ?」
「…まったく、お客さんを待たせるほど何やってたんだよ…」
「しょうがないでしょ、リアンとスフィーちゃんがケーキを作るってきかないんだから」
「とにかく早く作れよ、待たしちゃってるんだから」
「はーい」
………
「お待ちどうさまでした、ホットケーキ2つです。以上でよろしかったでしょうか?」
「えっと…」
「え…何かありましたでしょうか?」
そりゃ驚くのも無理は無い、10枚重ねのホットケーキを目の前にしては…
「おい結花、うちのスフィーに出すやつを出してるのに気付けよ!」
「あーっ!スフィーちゃんが居たから、つい癖で焼いちゃった」
「まったく…20枚も焼いて、それどうするんだよ」
「んーそうね…今日はサービスしちゃう」
「えっ、いいんですか?」
「たまにはね、今日は私の誕生日だし」
「おっ、珍しく太っ腹だな結花。…実際にもな」
「誰が太ってるですって?」
不敵な笑み、そして…
ドガンッ
「くっ…準備動作の無い蹴りは反則だろ…」
ばたっ
「あうぅ…大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、これくらいでやられるほど健太郎は柔じゃないし」
「それにしても…今日が誕生日なんですか?えっと…結花さんでしたっけ?」
「うん。だから奥の方でちょっと色々と作ってて遅れちゃったのよ」
「うちの理緒ちゃんも今日誕生日なんですよ」
「あ…藤田くん、そんなこと言わなくてもいいのに…」
「あ、そうなんだ。じゃあちょうど良かったっと」
「いたた…ったく…」
「もう回復したの?」
「まったく、そう人をボンボン蹴るなよ結花」
「健太郎のせいでしょ今のは…あ、そうだ。ちょっとそれ食べててくれる?理緒ちゃんとその恋人さん」
「えっ!?…はい」 「えっ!?…いいですけど」
少しだけ顔を赤くした二人。
「ちょっと奥の方に行ってくるから、何かあったらそこの健太郎に言ってね」
「あ、はい。じゃあ食べようか理緒ちゃん」
「そ・そうだね、藤田くん」
二人はやっとホットケーキに口を付け始めた。
「あ・ほんとだ…美味しいね」
「だろ?前に勧められて食べて美味しかったから、理緒ちゃんにも食べさせたかったんだよ」
「うん、本当に甘くてふわふわで美味しいな」
「でも10枚はさすがに食べきれないな」
「そうだね、どうしよう?」
「あのすみません、健太郎さん…でしたっけ?」
「ん?何だい?」
「このホットケーキを持ち帰りたいんですけどダメですか?」
「うーん、どうだろう…おーい、結花ー!」
「なーにー?健太郎ー!」
「このホットケーキ持ち帰れないかだってー!」
「ちょっと待ってー!……健太郎ーいくよーっ!」
シュッ パコッ シュッ パコッ シュッ ガサッ
「そのタッパーでその紙袋に入れてー!」
「分かったー!それじゃあこれに入れてって」
「ありがとうございます。やったあ、これで良太達に持ち帰れるよぉ」
「良かったな、理緒ちゃん。俺のも持って帰っていいぞ」
「え?いいの?藤田くん」
「いいさ、俺はここで食べたいだけ食べていくから。それに…」
「それに?」
と、そこに結花と二人の少女が戻ってきた。
「お待たせ、理緒ちゃん」
「お、おかえり結花」
「あ…あの、理緒さん。お誕生日おめでとうございます…」 「ハッピーバースデー!理緒!」
「えっ…!?」
「さっきケーキ作ってたって言ったでしょ、だからあたしだけだったのをちょっと替えてたの」
「なるほどな、胸に行くエネルギーが考える方に行ったか…」
「アンタは一言多いっ!」
バキャッ
「…だから前動作無しの蹴りは反則だろ…」
バタッ
「キャッ!健太郎さん大丈夫ですか?」
「けんたろ、まーた結花を怒らせてー」
「…ああ、一応大丈夫だ。んー…リアンは優しいな、本当に」
「なぁにぃ…この私が優しくないっていうのぉ?」
「こ・ごめん、スフィー」
「あ、そういえば君の名前を聞いてなかったわね」
「俺ですか?藤田です、藤田浩之です」
「ふーん、浩之くんね。じゃ、君も入れてパーティにしちゃおっか」
「え、いいんですか?結花さんのためのパーティじゃ…」
「いいのいいの、結花がそう決めたんだから。他のみんなもいいって言ってるし。ほら、理緒も…ね」
「スフィーさん…結花さん…リアンさん…健太郎さん…ありがとうございますっ!」
「どういたしまして、お礼を言われる事は無いけどね。スフィーちゃんがミスっちゃって大きさが倍になっちゃってたし」
「うー、それは言わない約束だよー」
「あははっ、そうだったっけ?ま、いいじゃない」
「それじゃあ楽しもうか、理緒ちゃん」
「うん…そうだね、藤田くん」
「あ…その前にお店を閉めてこよっと」
「ん…いいのか?お前の独断で」
「いいのよ、今日は許可貰ってるから」
理緒にとっても結花にとっても、いつもとは違うバースデーパーティーが始まろうとしている…
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あとがき
一日でこれを書くとは…琴瑞です。
このXOVERSS、書いたのは10/28の授業5コマの間という恐ろしさ。
今回の共通点は読めば分かると思いますが、かなり早めの誕生日SSです。
P.E.T.S.の方ももっと早く書ければねぇ…と自分でも思いましたよ。
タイトルはToHeartから「心」、まじかる☆アンティ〜クから「魔法」、射手座の初日ということで「射る」を掛けました。
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2005・10・30SUN
琴瑞
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