Silent Charm(静かなおまじない)

「やあ…久し振りだね…あかねくん…」
「…お久し振り…千影姉さん…」
「急に呼びつけてしまったが…都合は良かったのか…?」
「大丈夫…うん。姉さんのためなら、多少の予定くらいは…」
「何かあったのかい?」
「いや、下の三人のお守りを頼まれたけど…みどりとたまみに任せてきたから…」
「そうか…まあ大丈夫なら良いのだが…」
「それで今日は…呼びつけるほどの事って、何かあったの?」
「ああ…ちょっとあかねくんに会わせたい人が居てな」
「私に会わせたい人、千影姉さんが私に会わせたい人って…」
「来てみれば分かるさ…私もつい最近に知り合ったばっかりさ…」
「そんなに姉さんが言うなんて珍しいな…」
「ああ、一度彼女の家に呼ばれて行ったが…かなり興味をそそったからな…」
「そうなんだ…私も何だか興味を持ってきたな」
「それで今日もまた呼ばれたんだ…。それで今度はあかねくんも誘おうかと思ってね…行くかい?」
「うん…姉さんがそこまで力説するくらいだから…とても面白そうだ」
「それは良かった…多分もう少ししたら迎えが来るはずだ…」
「えっ…!?」
パーーーー
と、そこにクラクションが。
「来たみたいだな…行くか」
「来たみたいって…あの黒塗りの車なの?」
「ああ、えらいところのお嬢さんだからな…早くしないと後で怖いから行くぞ」
「う、うん…」
二人はその車へと向かっていった。
………
「お待ちしておりました、千影さまとそちらは…?」
「あかね…です…」
「あかねさま、お電話した時のお連れ様でしょうか?千影さま」
「あ…はい」
「了解しました、ではお乗り下さい」
カチャッ
執事らしき人に扉を開けられ、二人は車へと乗り込んだ。
………
「こんにちは…芹香さん」
「…………(こんにちは千影さん…そちらは…?)」
「あ、そうだな…紹介しないとか。この前少し話していた…私の友人の…」
「…あかねです…」
「…………(あかねさん…この前話されていた方…)」
「ああ。今日は招いてもらって、ちょうどいい機会だから呼んでみたよ…」
「…………(そうなの…うん…よろしくね…)」
「えっと、はい…よろしく…」
「…………(あかねさん…何か人ではない気配がしますね…)」
「え・えっと…」
「ああ…あかねくんは確かに人ではないな…」
「…………(やはり…そうですか…)」
「うん、あかねくんは守護天使さ…」
「は・はい…千影姉さんの言った通りです…」
「…………(そんなにおじけづかなくても…いいですのに…あかねさん)」
「しょうがないと思うよ…今日は突然…こんなことに呼び出してしまったから…」
「…………(そうなのですか…)」
「はい…それに…さっき千影姉さんに、お嬢さんだと聞かされてからちょっと…」
「…………(あかねさん、大丈夫…これをどうぞ…)」
すっ…
前の座席に居た芹香から差し出された物、それは…
「これは…『運命の輪』のカード…」
「…………(あかねさんとの出会いの印に…)」
「ありがとう…芹香さん…」
堅くなっていたあかねの表情がやっと明るくなった。
「…………(喜んでくれて…良かった…)」
「良かったな、あかね…」
「うん…」
「…………(あ…もうすぐ着きます…)」
千影たちを乗せた車は屋敷の門をくぐった…
 
「それでは、こちらへどうぞ」
「はい」 「あ、はい」
二人は芹香の居室へと通された。
コンコン
「芹香さま、千影さまとあかねさまをお連れしました」
カチャッ
「…………(あらためて、ようこそいらっしゃいました…)」
「では芹香さま、用事がありましたらお呼びください」
カチャッ
メイドロボのHM-12は部屋の隅へと下がった。
「…………(では…さっそくこちらへ…)」
「え?どこへ…?」
「行ってみれば分かるさ、あかねくん…。芹香さん、お願いします」
「…………(はい…行きましょう…)」
二人は芹香に連れられて部屋の奥のほうにあった階段へと向かっていった。
………
「今日は何をするんだい?芹香さん…」
「…………(今日は…あかねさんの望むものにします…)」
「えっ…私っ!?」
「…………(魔術でも呪術でも…何でもかまいません…)」
「何でも…いいのですね?」
「…………(はい、できる範囲の事ならば…)」
「それなら、芹香さん…耳を貸してもらえますか?」
「…………(あ、はい…)」
「………、大丈夫ですか?」
「…………(ん…確かあったはずです…。ちょっと待っててくださいね…)」
芹香は近くにあった書物を開いた。
「…………(では、行ないますから…こちらに来てください…)」
「うん…」
「…………(目を閉じて、その人のことを思い浮かべてください…)」
「はい…(ドキドキ…ドキドキ…)」
芹香は目を閉じ…
「ΜολιΚοτιλι ΜατοΜοχιγρε ΝαΓοτογινα ΠιΤοταρεχο…」
ぶわんっ
芹香とあかねの周りに風が起こる…
「んくっ…」
「ΦεΠαμοτεττο ΑξΕτοτοτα Ζαζτετοτποτε ΨτοτοχτοτοΨα!!」
………
一瞬の突風が止み、静けさが戻ったこの部屋。
「…………(これできっと大丈夫です…頑張って…)」
「はい、ありがとうございます…芹香さん」
「何をかけてもらったんだい?あかねくんは…」
「…………(千影さんにもかけてあげますから…こちらに来てください…)」
「何か分からないが…いいか。芹香さん、お願いするよ…」
「…………(では目を閉じて、大好きな人のことを思い浮かべてください…)」
「(そういうことか…)はい…」
その後も2人とも電話してここに泊まる破目に成るほど、ずっと術に明け暮れていた…
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あとがき
はい、4年連続の天皇誕生日SS…琴瑞です。なぜかこの日は不思議な事にSSを書くんですよ。
今回のSSは分かると思いますが「無口呪術系」です。
芹香のセリフは全部ああいう形をとりました。そうしないとちょっと区別がつかなそうですから。
実はこのSSがP.E.T.S.短編連作6−6で予告したとおり、通算200本目のSSとなります。
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2005・12・23SAT/NAT
琴瑞
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