短編連作〜熟語編2−4〜
銀河鉄道
それはある夏の夜のこと…
「綺麗ですわね…ご主人さま」
「うん、最近ずっと雨だったからこんなに綺麗な星空は久し振りだよ」
「こんな夏の夜、きっと銀河鉄道の夜はこんな星空の風景だったんですわね」
「そうだね、これ以上に綺麗な空だったのかな…?」
「そうですわね…」
ぽすっ
あゆみはご主人さまの肩へと頭を乗せた。
「ん?どうしたんだい?あゆみ」
「ちょっとだけ寄り添わせてくださいな」
「まあいいか…」
「あ、そういえば岩手には銀河鉄道があるらしいね」
「そうでしたっけ?」
「あの東北本線が無くなった区間に確かあったと思うけど」
「あ、あの路線ですわね」
「一回くらい行ってみたいな、ちょっと遠いけどさ」
「そうですわね、宮沢賢治の世界にちょっと触れてみたいですわ」
「ちょっと考えとこうかな、あゆみの誕生日くらいにさ」
二人は星空にただただ見惚れていた…
それはある秋の夜のこと…
「ロマンチックよね…こんな月明かりって」
ぴたっ
ベランダでご主人さまにぴたっと寄り添うみか。
「う・うん、そうだね」
それに少しだけ顔を赤くしてしまったご主人さま。
「あ、ご主人さま照れてるの?」
「まあね、こんな綺麗な天使に寄り添ってもらってるしね」
「ご主人さまったらぁ、上手なんだから」
「でも、ほんとに綺麗だよ。何かいつもと違っててさ」
「ありがと、この月明かりのせいかしら」
「きっとそうかもね、この月明かりがみかの肌を銀色に染めてるよ」
「ご主人さまだってそうよ、とっても格好良くなってるわ」
「え?そうかな…ありがとうみか」
「月の光が間接照明になってくれているからよね」
「うん、まあ月自体も間接照明だけどね」
「そういえば…そうだったわね」
「それにしても、今日は空が綺麗だね」
「うん…ご主人さま…」
二人はまるで恋人のようにずっと寄り添っていた…
それはある冬の朝のこと…
ガラガラガラ ピシャンっ
「ん・んーっ…朝ですわね…」
ベランダに一人の乙女、ゆきの姿がそこにあった。
「雪が随分と積もりましたわね」
前日からの雪、街は白一色に染め上がっていた。
ガラガラガラガラ パチャンっ
と、そこに…
「あれ?どうしたんだい?ゆきさん」
「あ、ご主人さま…おはようございます」
「おはよう。それにしてもこんな時間からどうしたんだい?」
「ちょっと昨日からの雪を見てみたくて思わず…」
「そっか、どうりで今日は冷えるわけだ」
「あの無色透明な水から、こんなに綺麗な物が出来るんですから不思議ですわ」
「まあこういうのは理屈じゃないけどね。でもこれだけ積もると後が大変だな」
「え?どうしてです?」
「だって、るる達が雪合戦とかで服とかを汚して来るしさ」
「フフフ…そうですわね。それはでも、この時期に限ってはいませんけどね」
「ハハハ…そうだったね。よし、それじゃあそろそろ中に戻ろうか」
二人はベランダから中へと戻り、それぞれの一日を始めた…
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あとがき
短編連作の第6シーズン、4本目です。
約2ヶ月ぶりの4作目。しばらく書く必要のある作品があって、これを頭からすっ飛ばしていました。
一応、これがサイト開設1500日記念VSSということで。
ゆっくりゆっくり書きますよ、今年中に終わらせるペースでね。
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2005・10・12WED
雅