短編連作〜熟語編2−3〜
天真爛漫
それはある夏の昼間のこと…
はむっあむっんぐっごくんっ
くるみとご主人さまは、喫茶店へと来ていた。
「ん〜、どうしたの?ご主人さま。くるみの顔に何か付いてるの?」
「いや、幸せそうな顔をして食べてるなと思ってさ」
「えっ…そうなのかなぁ?」
少しだけ顔を赤くするくるみ。
「うん、とってもね」
ちゅーっ こくっこくんっ
グラスのコーヒーへと口を付けるご主人さま。と、そこに…
「はい、ご主人さま」
口元に差し出されたスプーン、その上にはアイスとクリームが乗っていた。
「ん?えっと…」
「ご主人さま、食べてなの」
「いいのかい?」
「うん、もちろんなの」
はむっ
「うん、美味しいよ。でも…間接キスになっちゃったけど…」
「あっ…恥ずかしいの…」
女の子らしく頬を紅く染めてしまった、くるみであった…
それはある春の日の昼の事…
「だーれだっ?」
突然さえぎられるご主人さまの視線の先。
「んーっと、その声はつばさかい?」
と、後ろを振り向くご主人さま。しかしそこには…
「あれ?誰も居ないな…ってあれ?」
「あははっ、ご主人さま」
膝の上にさっきの声の主の頭が、つばさである。
「さっきのは、つばさだよね」
「うん、ボクの手だよ」
「あの振り向いた一瞬で、ここまで移動したってこと?」
「うん、びっくりしたご主人さまの表情、とっても面白かったよっ」
「くっ…やられちゃったな」
「あっ、ご主人さま」
「何だい?つばさ」
「このままご主人さまの膝、借りてていい?」
「え…あ、代わりに腕にしてくれるかな。僕も横になりたいからさ」
「うん、やったあっ!ご主人さまの腕まくらだっ」
「じゃあまず降りてね、つばさ」
数分後、夢の世界へと旅立った二人がそこに居た…
秋も深まったある日のこと…
「おつかいに付き合っていただいて、ありがとうございました」
「いや、いいんだよ。だってこんな重いものを持たせるわけには、ね」
らんの手には買い物袋が、ご主人さまの手には米袋があった。
「でも、こんなことでご主人さまの手を煩わせてしまうなんて…」
「いいんだよ、僕もいい気分転換になったしさ」
「でも…」
「じゃあらん、僕が居ないほうが良かったかい?」
「そ・そんなことありませんっ!」
「そうだろ。だからいいんだよ、気にしなくても」
びゅうんっ
と、そこに一陣の風が…
「きゃっ!」
その風に押されて、みるみる近づく二人の距離…
「大丈夫かい?らん。(う…らんの顔がこんなに近くに来るなんて…)」
「ごめんなさい…ご主人さま。(あ…ご主人さまのお顔がこんなに近くに…)」
しばらく止まった二人の時間、顔はみるみる紅潮していく。
「帰ろうよ…」
「そうですね…ご主人さま」
夕陽に染まった顔をさらに紅くして、二人は家路を急いだ…
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あとがき
短編連作の第6シーズン、3本目です。
四字熟語の捻出とそれによる語彙の増加、今回のSSにはそれが籠められています。
あ゛ー、夏休み中に終えられるかなぁ…。
誰か私にやる気を…(Web拍手でも何でも良いんで。)
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2005・08・18THU
雅