短編連作〜熟語編2−2〜
一日千秋
とある日の夜の事…
「ご主人さま」
「どうしたんだい?たまみ」
「ちょっとおひざ、いいですか?」
「あ、うんいいよ」
ぽふっ
「最近…何だか時が経つのがゆっくりに感じます…」
「ん?そうかい?」
「はい…」
「そっか…」
「でも、ゆっくりに感じるのも悪くは無いですね」
「そうなのかい?」
「こうしてご主人さまの温もりを、ゆっくりと感じる事が出来ますから」
「温もりか…前に他の天使にも言われたな、そういうこと」
「そうですか…んーっ…」
「うん。まあね…って…」
くぅ…くぅ…
「こらこら、こんなとこで寝たら風邪引いちゃうよ」
ひょいっ
ご主人さまはたまみをそのまま、寝床へとお姫様抱っこで連れていった…
「ご主人さまぁ」
「何だい?みどり」
「これが動かなくなってしまったのれす…」
と、みどりが取り出したもの、それは…
「このウォークマンかい?」
「そうなのれす、うんともすんとも言わないのれす」
「んー、どうしたのかな…ん?みどり」
「何れすか?ご主人さま」
「電池は確かめたかい?」
カチャっ カチンカチンっ
ご主人さまは後ろの開け口から単三電池を取り出した。
「あ、そういえば確かめてなかったれす」
「たぶん、これが原因じゃないかな」
「あ…れも…」
「ん?」
「確かこの前使ったのれ、最後だったはずれす…」
「そっか、じゃあ買いに行こうか」
「そうれすね、ご主人さま」
「じゃあ準備してね、みどり」
二人は仲良く、春の昼の街へと出かけていった…
「ふう…」
その日、あかねは水晶を見つめて何かをしていた。
「ん?何を占っていたんだい?あかね」
「あ、ご主人さま…。今、ちょっと…ご主人さまの前世について視ていたんだ…」
「え…僕の前世かい?」
「うん…」
「結局僕の前世は何だったんだい?」
「えっと…よく分からなかったんだ…」
「それは、どうしてだい?」
「何だか…強いパワーに…守られているみたい…」
「そっか、でも分からなくてもいいかな」
「そうかい…?」
「輪廻転生って言葉があるくらいだしさ、何かから生まれ変わっている事には間違いないさ」
「ご主人さま…意外と哲学的なんだね…」
「そうかな…でもこの言葉を考えるようになったのは、君たちが来てからだけどね」
「えっ…」
「君たちがこんな姿で転生してくるなんて、思わなかったからさ」
「ご主人さま…」
ぎゅっ
あかねは自然とご主人さまへと抱きついた、そんな秋の日の夜の事であった…
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あとがき
短編連作の第6シーズン、2本目です。
輪廻転生、私の好きな言葉が出てきました。このサイト名にするくらい好きな熟語です。
輪廻は信じたいものです、本当に。だからこそ、現世での苦痛にも身を委ねたいと思うものです。
次作は…そろそろBSSを上げたいと思います。
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2005・07・24SUN
雅