短編連作〜漢字編4−6〜

「うわぁ…大きい…」
「そうだよね、つばさ」
ある初夏の日、ご主人さまとつばさは一緒に散歩をしていた。
「これって、ご主人さまの前の学校の場所にあったのを移してきたんだよね」
「うん、そうだけど」
それは大きい太さが数メートルもある、一本の樟であった。
「でも、ここに来たころは枝打ちがされてて、葉っぱも殆ど無かったからちょっとみすぼらしかったんだけどね」
「そうだったんだ…」
「だけどこの木は、僕たちを含めてこの中学校の歴史を見つめてくれていたんだって思うんだ」
「そっかぁ」
「僕はこの木の歴史の一部分しか知らないけれどね」
「そうだよね、ご主人さま」
「みんなを見つめ、それからみんなに見つめられる。僕もつばさ達とそんな関係になりたいなって」
「ご主人さま…」
………
「それじゃあ行こっか、ご主人さま」
「うん、久し振りにいい思い出が出来た気がするしね」
「うんっ!」
「じゃあ、あっちの方に行ってみようか」
二人は流れるような爽やかな初夏の風を感じていた…


「はあ…」
ある秋の夜、みかは一人でベランダに佇んでいた。
「ご主人さま…」
と、そこに…
ガラガラガラガラ
「ん?みか、どうしたんだい?こんな夜に」
「あ…ご・ご主人さま…」
「ま、いいけどさ」
「ご主人さまこそ、どうしたの?」
「ん?何でもないさ。ただの夕涼みだよ」
ご主人さまは、みかを見てそう言った。そのとき、みかはハッとした。
「ん?どうしたんだい?」
「何でもないわ(そっか…ご主人さまのこの瞳…みかを安心させてくれるのね…)、ただ…」
「ただ?」
「ご主人さまが好きって分かったの…それだけ。そろそろ中に入りましょ、ご主人さま」
パチンっ
みかはご主人さまにウィンクをした。
「え…あ、うん…」
「(ありがと…ご主人さま…)」
二人が家の中に戻っても、満月は家を青白く照らし続けていた…


それは真冬のある日のこと…
「ご主人さまぁ」
「ん、どうしたんだい?たまみ」
「コタツ、温かいです」
「うん、やっぱり冬はコタツが一番だね」
二人はコタツで暖をとっていた。
「何だかふにゃ〜ってなっちゃいます」
「確かに、たまみは猫だったからね」
「たまみはコタツで丸くなる季節です」
「あははっ、確かにななは元気に駆け回ってるみたいだしね」
「あ、ご主人さま」
「何だい?」
すすすすす
たまみはコタツの中を移動して…
ぽふっ
ご主人さまの膝の上へと、頭を載せた。
「た・たまみっ!?」
「ご主人さまの膝の上…たまみの特等席ですぅ」
「ま、いっか…」
そんな時間を過ごしている二人であった…。
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あとがき
あ、お久しぶりです。雅です〜。
今回は斜め方向、そしてこのシリーズのラストです。
ちなみに今回は卒業研究発表明け初になりました。久しぶりだと勝手が違いますよ。
なお、次作品は紅玲菜BSSの予定です。
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2005・03・04FRI
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