短編連作〜漢字編4−5〜
暗
それはある秋の夜のこと…
「ふう…」
新月のベランダに佇む一人の天使。
「何だか…落ち着くな…」
日頃の喧騒に忘れていた『一人の時間』。それを思い出させる星空であった。
「家族…か…」
そう呟いたその時…
ガラガラガラ
ベランダに出てきたもう一人の人物、そしてこう囁いた。
「あかね、ここに居たんだ」
「ご主人さま…」
「どうしたんだい?こんな夜中に」
「いや…ちょっとね…」
「ま、いいけどね」
「(心配してくれたんだ…ご主人さま…)」
その時あかねは気が付いた。もう一つ忘れていた『ご主人さまとの時間』と言うものを…。
ぽふっ
そしてそっと寄り添う二人
「ご主人さま…大好き…だよ…」
星空は空の暗闇の中にいる二人を優しく照らし続けていた…
「ご主人さまー、速く速くー!」
「ちょっと待ってよー、ジュンー」
春の陽気の空の下、ご主人さまと守護天使のジュンは体慣らしのジョギングをしていた。
「ご主人さま、ちょっと身体が鈍ってるよっ!」
「そうかもしれないけど、一マイルも走らせるなんて…はぁっ…はぁっ…」
「そんな、1.6kmくらいでへこたれてちゃダメだよっ、ご主人さま」
「でも…」
「ご主人さま、あと少しで休憩場所があるし、そこまで頑張ろうよ」
「うん、そうだね」
………
「はい、ご主人さま、タオルだよ」
「ありがとう、ジュン」
「あと、これもね」
コポポポポ
「ありがとう…ごくっんぐっんぐっ…はぁっ生き返った。あ、ジュンにも注いであげるよ」
「え…あ…はい」
コポポポポ
「ごくんこくんっ…はぁっ…。あ…これって…ご主人さまと間接キス…」
「あっ…」
それは二人の顔が太陽よりも真っ赤に輝いた時であった…
それは夏の暑い日差しの昼の事…
「ご主人さまぁ…んっ…」
「あ…くるみ、どうしたんだい?そんなに大きいものを持ってきて」
くるみが持っていたもの、それは…
「くるみが商店街に行ったら、近所のおばさんが実家の畑のお土産だって持ってきたの」
「そうだったんだ。あ、僕が持とうか?」
「ん、お願いするの」
ひょいっ
ご主人さまはそれをいとも簡単に持ち上げた。
「ご主人さま、さすがなの。力持ちなのー」
「そうでもないさ、それじゃあ家に帰ったら冷やして食べようか」
「はいなの」
………
「みんな、戻ってこないね」
「うー…早く食べたいの…」
「しょうがない、二人で食べ始めようか」
「いいの?ご主人さま」
「いいよ、それじゃあ…」
「「いっただっきまーす(なのー)」」
そんな大きな西瓜もくるみの胃にかかれば、あっという間に無くなってしまったという…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
気が付けばもう99作目ですか…。漢字連作のこのシリーズもついに佳境の5作目です。
今回は右。今考えると「里」は「狸」でも良かったですね。
今回のは別にバレンタインだからっていう作品ではありません。本当です。
あ、ここでちょっとお知らせです。
来(2005)年度に入ってから、誕生日SSを復活させます。ようやく落ち着ける状況になりますから。一年だけかはまだ分かりませんけどね。
順番はいつも通り4月29日のみどりに始まり3月21日のらんで終わる18本(オリジナル守護天使などを含む)の予定です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2005・02・14MON
雅