短編連作〜漢字編4−3〜
韻
それはある春の日の昼のこと…
「〜……」
サラサラサラ
あゆみが何やら言葉を発しながら、紙に文章を書いていた。
「あれ?あゆみ、何をしてるんだい?」
「あ、ご主人さま。私は今、詩を書いているのですわ」
「なるほどね、聞いてるとなかなか綺麗でリズムが良い詩だね」
「ありがとうございます、ご主人さま」
「テーマは何なんだい?」
「え…あ…それは…秘密ですわ」
「ま、それはそれとしてさ」
「はい、何でしょう?ご主人さま」
「さっきの詩って七五調みたいだけど、もしかして韻を踏んでるの?」
「そうですわ、ご主人さま」
「どうりでね、僕の事を名前で書いていたわけだ」
「バレてましたのですわね、ご主人さまには」
「でも…そんな風に思ってるって書かれると、何だか少し恥ずかしい感じがするなぁ」
「そうですわね、私も書いていて少し恥ずかしかったですわ」
「そっか…」
二人は春の陽だまりの中でゆっくりと進む時を過ごしていった…
「ご主人さまー、早く早くーっ!」
「待ってよ、ななーっ!」
ご主人さまとななは、散歩の途中の野原で追い駆けっこをしていた。
ぎゅうっ
「あー、捕まっちゃったぁ」
「こーら、勝手に手を離して逃げちゃだめだよ」
どうやら追い駆けっこと思っていたのは、ななだけのようだ。
「…ごめんなさい…ご主人さま」
ちょっとシュンとなってしまったなな。
「じゃあその代わりに…」
ひょいっ ぽふっ
ご主人さまはななを肩車した。
「これでいいかな?なな」
「うんっ…ん?」
クンクン
ななが何かの匂いを感じたようだ。
「ご主人さまぁ、ちょっとこのまま向こうに行って欲しいな」
「え?いいけど…」
………
そうして行った先には、甘酸っぱそうな野苺の実が沢山なっていたという…
「兄さーんっ!」
「え?ど・どうしたんだい?愛緒美」
私がとある隣町の店の中を歩いていると、突然聞き慣れた声が…愛緒美である。
「どうしたんですか?ご主人さま、そんなに驚かれるなんて」
「いや、愛緒美がこんな隣町の店なんかにいると思わなかったからさ」
「いえ、ちょっと好きなお店がこちらの町にしかないものでして」
「そうだったんだ。ここはバスで来たのかい?」
「はい、ちょっと長旅になってしまいましたけど」
「そっか…」
「兄さんはこちらへはどうして?」
「いや、ちょっと野暮用だよ」
「そうだったんですか」
「(みんなに言えないようなことだし…。)」
「何か考え事ですか?兄さん」
「いや、何でもないさ」
「あの…もしでしたら買い物に付き合ってくれませんか?兄さん」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます、兄さん。それじゃあ2階に行きましょう」
「あ、うん」
私と愛緒美はそのまま仲良く買い物をしていった…
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あとがき
短編連作の第5シーズン、3rdです〜。
前のからだいぶ経っちゃいましたね、反省っと。
今回は左側に置いた形です。
あとこれで半分、色々ありますけど頑張りますっ!
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2005・01・13THU
雅