短編連作〜漢字編4−2〜

「ご・ご主人さま…」
「何だい?もも」
「このご本を…読んで下さい…」
「え、いいけど…」
と、ももが差し出した本は…
「あれ?こんなに厚い本読んでたの?」
「はい…いつもはあゆみお姉ちゃんが読んでくれるんです…でも…」
「あれ?そういえばあゆみ達は…?」
「お姉ちゃん達はみんな…買い物に行っちゃいました…」
「あれ?そうだったっけ」
「はい…だから…」
「うん、いいよ。ここに座りな、もも」
「え…いいんですか?」
「いいよ、ほら」
「はい…」
ぽふっ
ももはあぐらをかいていたご主人さまの、脚の上へと座った。
「えっと…何章からかな?」
「あの…4章のところです…」
二人の周りには、温かな春の午後の空気が流れていた…


「ご主人さまぁ」
「ん、何だい?みどり」
「どうして、夜の空はこんなに真っ黒なんれすか?」
みどりとご主人さまは、夏の夜のベランダで寄り添っていた。
「んー、黒ってわけでもないけどね」
「ふえ?」
「ちょっとだけ、蒼っぽく見えないかい?」
「ん〜、言われてみればそうかもしれないれすね」
「今日は月も出てるから、ちょっと分からないかもしれないけどね」
「れも…お月さん、と〜ってもきれいれすね」
「うん。でも、みどりも負けないくらい綺麗だよ…」
「ご・ご主人さまぁ…。(ぽっ)」
ぽふっ
みどりも女の子、ご主人さまの言葉に顔を紅くして、ご主人さまの胸に顔を埋めた。
「どうしたんだい?みどり」
「………」
「ん?」
「大好きれす…ご主人さま…」
チュッ
そのままみどりはご主人さまにキスをした。夜の月はそんな二人を優しく照らしていた…。


ごろんごろんっ
「んー、このにおい、いいかおりらぉ〜」
「そうかい?るる」
るるはご主人さまの伸ばした脚を枕にして、畳に寝転がっていた。
「らってこのたたみ、草のいいかおりがするお」
「うん、畳替えしたばっかりだからね」
「草のにおいをかぐと、かえるらった時のことを思い出すんら〜」
「そっかぁ…」
「るるたんがかえるらった時は、すい〜すい〜っておよいでたんらぉ」
「そういえば、そうだったね」
「と〜っても気もち良かったんらぉ」
「確かに、気持ち良さそうに泳いでたね」
「らからるるたん、久しぶりにおよぎたいな〜、ご主人たま」
「え?んーどうしようかな…」
「今日じゃなくてもいいぉ」
「うん、じゃあ今度の休みにでも行こっか」
「ほんとらぉ?」
「うん、いいよ」
「わ〜い、プールプールらぉ〜」
るるの笑顔と優しく照らす太陽と畳の薫りで、心温まる初夏の日であった…
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あとがき
短編連作の第5シーズン、2ndです〜。
今回のSSのテーマは、漢字の位置変化です。
あと12個は左・下・右と斜め(漢字によって場所は違います)になります。
漢字遊び好きの自分ですから、はい。
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2004・11・27SAT
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