短編連作〜漢字編4−1〜

「ごちゅじんちゃま…」
「何だい?ネネ」
ぽふっ ぎゅっ
と、ネネはいきなりご主人さまへと抱きついてきた。
「ど・どうしたんだい?」
「ごちゅじんちゃまの…」
「え、僕の?」
「ごちゅじんちゃまの…こころの音でちゅ…」
「…心の音…かぁ…」
とくん とくん とくん
「(何だか…きもちいいでちゅ…)」
「(ネネ…温かいな…)」
「ごちゅじんちゃま…あたたかいでちゅ…」
「僕も…だよ、ネネ」
「ごちゅじんちゃまのにおい…いいにおいでちゅ…」
「えっ…そうかい?」
「ちょうでちゅ…おちつくでちゅ…」
「そっか、ネネ」
ぽふっ なでなで
二人はそのまま取り留めのない時間を過ごしていった…


「さあ着いたよ、ゆきさん」
「ここは、ご主人さまの…」
「うん、僕の祖父の地元だよ」
「何だか、落ち着きますわ」
「そうかな?確かに僕もここの空気は好きだけどね」
「ヘビだった頃に…いた場所の空気に似ている気がします」
「そっか…」
ぎゅっ
「ご・ご主人さま!?」
いきなり後から抱きつかれて、頬を紅く染めるゆき。
「なんとなく、だよ。ゆきさんがヘビの頃は、抱きついてあげられなかったから」
「え…」
「まあ、あの頃はまだ僕も小さかったしね」
「そうでしたわね…あの頃のご主人さまは、とても可愛らしかったです」
「そう言われると、何だか照れちゃうな」
「だから、こうしてそのご主人さまの温もりを感じていられること…とても嬉しいです…」
「ゆきさん…」
「だからこのまま…ご主人さま…」
「うん…」
二人の周りはゆったりとした時間が流れ続けていた…


「お兄ちゃん、田んぼだよー」
「本当だ、もうこんなとこまで来たんだ」
私と杏珠は一緒にドライブに出ていた。
「この辺はお米がいっぱいとれるところだからね」
「そうなの?」
「うん、新潟は全国でも多い県なんだよ」
「ふーん、杏珠たちが食べてるご飯も?」
「うん、確かそうだね」
「もうすぐ収穫かなぁ?」
「そうだろうね。あ、もうすぐつくよ」
「え?どこ…だっけ?」
「杏珠が楽しみにしてた所だよ」
「えーっと…あ、あそこかぁ」
そこには「グレープガーデン」と描かれた大きな看板があった。
「杏珠、曲がるから気をつけてね」
「うんっ」
………
「早く行こっ!ご主人さま」
「うん、そうだね」
そして私と杏珠は、ぶどう園のアーチをくぐっていった…
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あとがき
短編連作の第5シーズン、今回は18連作です。
地震後初…になりますか。
今回のネタは…秘密です。
次で、今回の漢字がどんなものかが分かると思いますのでね。
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2004・11・05FRI
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