短編連作〜漢字編3−5〜

こねこねこねこね
「ん?それは粘土かい?みどり」
「はいれす、粘土さんはとても面白いのれす」
「確かに、色んな形になるからね」
「ご主人さまも何か作るれすか?」
「そうだね、何か作ろうかな」
「それじゃあはいれす、ご主人さま」
みどりは少しねずみ色な粘土を、一かたまりご主人さまに渡した。
「何だか懐かしいな、この感触は」
「ふえ?そうなのれすか?」
「うん、小学校の時に使ってたからね」
「そうだったのれすか」
「それじゃあ、何を作ろうかな?」
「んー…それじゃあリクエストするれすよ」
「ん、何だい?」
「キリンさんを作ってほしいのれす」
「キリンかぁ…難しいけど何とか作ってみよっかな」
「それじゃあみどりさんは、タヌキを作るれす〜」
「よしっ、じゃあ作ろっか」
作業が終わる頃には、粘土板の上に色んな動物が並んでいた…


ザザーン…ザザーン…
「もうすっかり秋だね…ご主人さま…」
「そうだね、あかね」
ご主人さまとあかねは二人きりで、秋の海岸へと来ていた。
「あ…」
「どうしたんだい?あかね」
「あそこに見えるのって…島かな…?」
「そうかもしれないね、このへんは海岸線が複雑だから」
「行ってみたいな…」
「えっ!?」
「あの島なら…ご主人さまと…二人きりになれるから…」
少し顔を紅くしながらあかねはそう言った。
「あかね…」
「ご主人さまと…誰にも邪魔されない場所で…」
ぎゅっ
ご主人さまはあかねを背中から抱き締めた。
「ご・ご主人さま…」
「今度、一緒に行こっか」
「うん…」
あかねはいつまでも、ご主人さまの温もりに身体を委ねていた…


「ご主人さまーっ!」
たったったっ ぎゅっ
夏のある日、ご主人さまが道を歩いていると後ろから抱き着いてきた少女…つばさである。
「うわっ!あ、つばさ。どうしたんだい?」
「おつかいの帰りだよ、ご主人さまバイトは?」
「今日はお休みなんだけど、それを忘れて出てきちゃったんだよね」
「そうだったの?ご主人さまらしいけど」
「こーらっ」
つんっ
ご主人さまはつばさにデコピンをした。
「んっ…ご主人さまぁ…」
少し紅くなりつつ涙目になったつばさ。
「ゴメンゴメン。あれ買ってあげるからさ、許してね」
と、ご主人さまが指した先にはアイスの自動販売機があった。
「ホント?ご主人さま」
「うん、いいよ」
「やったぁ!はやく行こっ!ご主人さま」
言うより先に走り出したつばさ。
「あ、ちょっと…ま、少し走ろうかな」
そしてご主人さまも太陽の下、走り始めた…
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あとがき
第4シーズン最終作です。
ん〜、切羽詰ってると良い出来になる傾向は相変わらずのようで…。
連作以外のネタがなぁ…誕生日SS復活させるべきかなぁ…。
「寒空の七つ星」…何か素敵なタイトルな気がします。
では、締めはこの短歌で。
北に咲く この寒空の 七つ星 雲をつきぬけ 天に輝く
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2004・10・02SAT
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