短編連作〜漢字編3−4〜

それは冬のある日のこと…
「ご主人さま…」
「ん、何だい?らん」
ぎゅっ
と、らんは突然ご主人さまの手を握った。
「ら・らんっ!?」
「ご主人さまの手って、大きいですね…」
「そ・そうかい?」
「はい、らんと比べると」
ぺたっ
らんの右手とご主人さまの左手が合わさった。
「本当だ、らんの手って小さいけど綺麗だね」
「そんな…」
「とてもスベスベで、綺麗だよ」
「でもご主人さまの手も大きくて男らしいです」
「そ・そうかい?」
「はい、少しコツコツしてますけど、ご主人さまらしくって…」
「僕らしい…のかい?」
「はい…とっても…」
二人はいつまでも手を握りあっていた…


「あれ?何を見てるんだい?あゆみ」
あゆみは珍しくテレビを見ていた。
「あ、ご主人さま。今、テレビでお城の特集を行なっているので、それを見ているのですわ」
「へぇ、これはどこのお城だい?」
「えっと…確か盛岡城の址ですわ」
「盛岡城か…立派な石垣だね」
「そうですわね、堅牢な石垣でないと城を守れませんわ」
「そっか、それもそうだね」
「それにかなり高い位置にあるのも、そういう理由の一つですわ」
「あ、盛岡城址って歌碑もあるんだ」
「はい、確か岩手県は石川啄木の出身地でしたわね」
「あ、そっか」
「確か『不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心』でしたわね」
「十五の心かぁ…」
「何だか、綺麗な詠ですわね」
「うん、自分が15歳だった時のことを考えさせられる詠だね」
「15歳の頃ですか…ご主人さまはどんなお方だったのですか?」
「う〜ん、15の頃か…あ、ちょっと待って。今、その頃のアルバムを持ってくるよ」
「え…あ、はい。ご主人さまの可愛い写真を沢山見せて欲しいですわ」
そして二人の眼は、様々なご主人さまの写真へと注がれていった…


「んーっ、いい空気だねご主人さま」
「うん、やっぱり田舎はいいもんだね」
ジュンとご主人さまの二人は、一緒に田舎の方へと旅行しにきていた。
「アタシ…こういう黄金色の風景って、好きだなぁ」
「そうかい?ジュン」
「うんっ、子馬だった頃を思い出せて…」
「えっ?」
「だって…アタシが食べたり、下に敷いていた藁って…お米のもあったからね」
「そっか、そうだったね」
「ご主人さまが食べさせてくれると…いつもと違って美味しく感じたんだよ」
「え?ずっと同じ稲藁だったけど…」
「ううん、ご主人さまの愛っていうのが入ってたのかな…」
「…そういうこと言われると、ちょっと恥ずかしいよジュン」
「あ…う…言ったアタシもちょっと恥ずかしいな…」
と、そこに…
くぅぅぅ ぐぅぅぅ
「ご主人さま…」
「うん、そろそろお昼頃だし…お昼にしよっか」
「うんっ、ご主人さま」
二人はのどかな風景を見ながらの昼食の時間に入った…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
第4シーズン4作目です。
今回は全員中学生以上、前回とまたまたまた逆ですな。
まあ、今回のはちょっと難易度が高かった…。
盛岡城ネタは、盛岡受験遠征の時のネタだったりします。
約束どおり今回発表しますが、
今作のテーマは「北海道・東北の道県名に使われている漢字(北海道は3文字とも)」です。
さて、あと1本…残りは「形・島・道」です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2004・10・02SAT
短編小説に戻る