短編連作〜漢字編3−2〜

それはある日の神社でのこと…
「あ、ご主人さま。こんな所に来られるなんて、どうかなさったんですか?」
「あれ?ゆきさんこそ、こんな所でどうしたんだい?」
「私ですか?私はこちらにお勤めに来てるのです。いつまでもご主人さまにだけ頼ってはいられないですから」
「え…ってことは、バイトかい?」
「そうです、ちょうど巫女を募集していましたので」
「そうなんだ…」
「そういえば、ご主人さまは何をされに来られたのです?」
「あ、僕はね…ちょっとお参りに来たんだけど」
「え、どうしてです?」
「まあ、暇だったから散歩がてらに来ただけなんだけどね。ついでだからお参りもしようかなって」
「そうなんですか、それじゃあご一緒いたしますわ」
「いいのかい?仕事は」
「はい、今はちょうど境内の掃除だけですし」
「それじゃあ一緒に行こうか」
「はい」
………
「(これからもみんなと一緒に居られますように…)」
「(これからもご主人さまを想い、守り続けられますように…)」
二人の思いが届きそうな、そんな凛とした冬の晴れた昼下がりであった…


「もう秋ね…ご主人さま」
「うん、すっかり寒くなってきちゃったね」
ご主人さまとみかの二人は、商店街へと買い物に出ていた。
「早く買うものを買って帰りましょ」
「うん、早く帰ってみんなで温かいものを食べよっか」
「そうね、えっと今日は…煮込みうどんだったわね」
「あ、そうなんだ…よし。みか、行くよっ」
「あーんっ、待ってよご主人さまぁっ!」
…そして買い物も終わり…
「ご主人さま、早く帰りましょ」
「うん。あ、はいこれ」
がさがさがさっ
と、ご主人さまは袋から缶コーヒーを2本出した。
「これ飲みながら帰ろうよ」
「あれ?いつ買ったの?」
「みかが会計してた時に、別のレジでね」
「ご主人さま、ア・リ・ガ・トっ!」
チュッ
「み・みかっ!」
ご主人さまの頬には、しばらくみかの唇の感触が残っていた…


「ご主人さま〜、早くなの〜っ!」
「はぁ…ふぅ…くるみ、待ってよー」
それは秋のある日のこと、ご主人さまとくるみは山に分け入っていた。
「そんなに急がなくてもいいじゃない、くるみ」
「ん〜、でも早く持ち帰って食べたいの」
「え、何をだい?」
「それは行けば分かるの」
………
しばらくさらに山を分け入ると…
「あれ?これってもしかして…」
ご主人さまは球形の実を見つけた。
「そうなの、クルミなの〜」
「へえ、こんな所にクルミがあるなんて…」
「そうなの、くるみも最初はびっくりしたの」
「しかもかなりの量があるね」
「そうなの、だから早くいっぱい持って帰りたかったの」
「じゃあいっぱい持ち帰ろっか」
「はいなの。ご主人さま、早く拾うの〜」
「うん」
そのクルミも、殆どがくるみの中に吸収されていったという…
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あとがき
第4シーズン2作目です。
今回は全員中学生以上、前回と逆ですな。
もう、何の漢字かを気付かれた方もいると思いますが、それはそれで(笑)
くるみが相変わらず難しい…好きなキャラだったはずなんですけどねぇ…。
次のSS更新はテスト明けかな?
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2004・09・17FRI
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