短編連作〜漢字編3−1〜
北
「んー、気持ちええな、ご主人さま」
「うん、やっぱりこういう雪見の温泉もいいもんだね」
ご主人さまとピピは北国の温泉に来ていた。今は一緒に予約制の家族風呂に浸かっている。
「せやな、雪いうか寒いのも好きやしな」
「まあ、ピピのためを思ってここにしたからね」
「あ、せやったっけ」
「まあね。でもゆっくり出来るような場所なら、どこでもよかったんだけどね」
「ありがとな、ご主人さま」
ぎゅうっ
ピピはご主人さまに抱き着いた。
「ちょ・ちょっとピピっ!」
ご主人さまの顔は少しだけ紅くなった。
「何や?ご主人さま」
「僕たち…裸…」
「ま・まあええやんか。ご主人さまとウチの仲やないか」
「そ・それもそうだね」
「そろそろ上がろか、ご主人さま。身体流したるわ」
「うん、じゃあ僕もピピを洗ってあげるさ」
ザバンっ ジャパンっ
二人は仲良く身体を洗いあっていたという…
それはある日の昼下がり…
「ご主人たまーっ!」
「何だい?るる」
「絵を描いたんだお」
「どれどれ、どんな絵だい?」
と、その紙には原っぱが描かれていた。
「うん、綺麗に描けてるね」
「う〜ん、でもこれはダメなんだお」
「え、どうしてだい?」
「空の色がないんだお」
「あ、本当だ。どうして色を塗らなかったの?」
「だって…」
「だって…何だい?」
「もう青いクレヨンがないんだお」
「あれ?もう無くなったの?」
「そうだお、だから塗れなかったお」
「そっか、じゃあ今から買いに行こうか」
「うんっ!」
「じゃあ、ちょっと上着をとってくるから待っててね」
その後、二人は仲良くホームセンターへと歩みを進めていった…
それは二人で散歩していた時のこと…
「あー、ご主人さま」
「何だい?なな」
「あそこにおっきな岩があるよ」
「あ、本当だ」
ななが指した先の原っぱには大きな白い岩があった。
「なな、あの岩に乗ってみたーい」
「駄目だよなな。落ちたら危ないし、怪我するかもしれないし」
「えー、ダメなの?ご主人さま」
「うん。だって僕の大事な天使を傷つけたくないしね」
「うー…」
「んー、しょうがないな。ちょっとなな、いいかな?」
「えっ、何をするの?ご主人さま」
ぎゅうっ ひょいっ ぽふっ
ご主人さまはななを持ち上げて肩車してあげた。
「ふわあっ!ご主人さまっ!」
「岩に乗っけてあげなかった代わり、これじゃあダメかな?」
「ううん、こっちの方がいいな」
「じゃあ、このまましばらく歩いていこっか」
夕日に一つの長い影、ご主人さまとななはそのまま家へと帰っていった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
短編連作第4シーズン開始です。
今回はオリジナル守護天使を除いた15連作です。
今回の漢字は…「あるものの漢字を全て使う」ってところですね。
4作目の公開時に今回の漢字について書きます。
まあ、テストもあるんで気長に待っててください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2004・09・11SAT
雅