短編連作〜熟語編1−4〜
月光

それは秋のある夜のこと…
『♪I am god's child この腐敗した 世界に堕とされた…♪』
「あれ?あかね、その曲って…」
「あ…ご主人さま…。うん…ちょっと押し入れのダンボールに入ってたんだ…」
「あ、僕が昔買ったCDか…」
「そうみたい…だね」
「うん」
二人は暫くその曲に聞き惚れていた。
「そういえば他のCDは?」
「まだあったけど…この曲が何だか…一番耳に残ったんだ…」
「そっか…」
ぎゅっ
「ご・ご主人…さま…」
ご主人さまの突然の抱擁に一瞬驚いたあかねであったが、自然とご主人さまへと寄り添ってきた。
「ありがとね、あかね」
「えっ…?」
「何だか言いたかったんだ、お礼をね」
「そうなの?」
「うん…」
そんな二人を、月の光は優しく照らしていたという…

光年

それは夏のとある夜のこと…
「あっ、ご主人さま」
「何だい?なな」
「ほら、北極星だよ」
「あ、本当だ…」
空には北極星や北斗七星、カシオペア座などの星座が輝いていた。
「綺麗だね、ご主人さま」
「うん、あんなに離れた星なのに…綺麗だな…」
その言葉にななは、不思議そうな顔をした。
「え?あの星ってどのくらい離れてるの?」
「どのくらいって…物凄くだよ」
「それじゃあ分かんないよ、ご主人さま」
「えっとね…光っていう物凄く速く進む物があって、それが一年に進む距離を『光年』って言うんだ」
「ふーん」
「それのさらに何百倍も遠くにあるんだよ」
「んー…よく分からないけど、凄い遠いんだね」
「ま、そういうことさ」
「でも、そんな遠くにあるのに光が見えるって不思議だね」
「そうだね、なな」
そんな星々を見ながら、二人の夜は更けていった…

年末

「ご主人さま…遅い…」
そこは年の瀬の商店街、一人の守護天使がご主人さまと待ち合わせをしていた。
「もう…寂しがりやのみかを…こんなに待たせるなんて…」
…と、そこに…
「ゴメンみか、遅くなって」
「もう…ご主人さま…」
ぎゅうっ
みかはご主人さまに想いきり抱きついた。
「ゴメンねみか、寂しかっただろ?」
「いいの…もう来てくれたから」
「…ま・まあ行くとこに行こうか」
「え、どこになの?」
「ちょっと、みかに見立ててもらいたかったからさ」
「何をなの?ご主人さま」
「本当は秘密にしておきたかったけど、みかならいいかなって思ったものさ」
「ん、なぁに?」
「みんなへのクリスマスプレゼントさ。みんなには内緒だよ」
「なるほどね、分かったわご主人さま。でも口止め料はもらうからね」
チュッ
一つの口付け、それだけで冬の買い物も温かく出来た二人であった…
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あとがき
第3シーズン4本目です。
前回までとは一転、夜のお話です。
色々やってて更新を怠っていたのは反省しなくっちゃ…。
ちょっとこのSSでは関係ありませんが、ハムスターのくるみ、誕生日おめでとさん。
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2004・08・06FRI
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