短編連作〜漢字編2−3〜

「はぁ…」
みかは、ある物を前に溜息を吐いていた。
「こんなに高いもの…無理よね…」
それは、少し高めの口紅。それをショーウィンドウから見つめていた。
「そ、そんなことより買い物しなくっちゃ」
みかは、商店街の方へと向かっていった。
………
一通りおつかいを終え、またここへと戻ってきたみか。
「…帰ろ…ここに居ると買いたくなっちゃうから」
と、みかが踵を返したその時…
「あれ?みかかい?」
「え!?ご・ご主人さまっ!?」
「どうしたんだい?みか、こんな所で」
「えっと…何でもないわ、ナ・ン・デ・モ」
「あ…もしかして、あれが欲しいのかい?」
「え…ええ…でも…」
「いいよ、ちょっと臨時収入もあったしさ」
「…ア・リ・ガ・ト!ご主人さま」
………
二人一緒の帰り道、そのご主人さまの頬には薄い桃色の唇の痕が残っていたという…。


冬のある日、あゆみはご主人さまと二人きり炬燵の中に居た。
「あれ?あゆみ、何を読んでいるんだい?」
「これですか?これは詩集ですわ」
「へえ、詩集かぁ」
「ご主人さまも一冊読まれますか?」
「あ、いいの?」
「はい、いっぱい借りてきましたので」
「ありがと、あゆみ」
ぱっ
本を開いて…
ごろんっ
そのまま横になって本を読むご主人さま。と、その横へと…
すすすすす
「え!?あゆみ!?」
あゆみが入ってきた
「ご主人さまと一緒に、横になって読みたいのですわ」
「ま、いいけどさ」
………
「くぅ…すぅ…」 「ぐぅ…ぐぅ…」
数十分後、そこには仲良く並んだ二人の寝顔があったという…。


それは秋も暮れの事…
「あ…」
「どうしたんだい?もも」
「え…何でもないです」
そんなももの視線の先には、小さなテディベアがあった。
「あ、あれのことかい?」
「………」
こくんっ
ももは唯一つ頷いた。
「よし、決めた。買ってあげるよ」
「えっ!?」
「いいんだよ、もも。但しこのことは二人だけの秘密にするって約束してね」
「…はい…約束します…ご主人さま…」
「よし、それなら買おうか」
「ありがとうございます…ご主人さま…」
カランカラン
二人はその店へと入っていった。
………
ぎゅうっ
ももは嬉しそうにそのテディベアを抱えながら、ご主人さまと手を繋いで家へと戻っていった…。
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あとがき
短編連作、第2シーズン7・8・9です。
もう、さすがに分かったでしょう。この連作がどういう意味かは。
今まで11個だったのでどうしても書けなかったものですから。
今回の連作の意味は、次回で発表致します。
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2004・05・30SUN
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