短編連作〜漢字編2−2〜

「んー、涼しいおご主人たま」
「うん、そうだね」
二人は初夏の海岸に来ていた。
「ねぇご主人たま?」
「ん、何だい?」
「海に入ってもいいお?」
「んー、足だけならいいよ」
「やったおー!」
カポッ カポッ ツツツツ ツツツツ タタタタタタ
るるは靴と靴下を脱いで、海へと一目散に駆けていった。
「ご主人たま〜、気持ちいいお〜」
「そうかい?るる」
「ご主人たまも来るおー」
「え…僕はいいよ…」
ぱしゃあんっ
るるはご主人さまへと水を飛ばした。
「あー、やったなぁるる!」
ぱしゃんっ
「あーご主人たまぁっ!」
結局ずぶ濡れになるまで水を掛けあった二人であった…。


たまみは横断歩道を前にして立ち往生していた。
「はぁ…どうしてこんな役目を受けちゃったんでしょうか…」
その日、突然の雨が降り注いでいた。それでご主人さまに誰が傘を持っていくかで、たまみがその役割になったわけだ。
「あと…ここだけなのに…」
ご主人さまの仕事先への最後の横断歩道、大通りのために車通りも多い。
「もう…時間も過ぎちゃったし…」
時計はもうご主人さまの仕事が終わっている時間。
パッ
その時、歩行者用信号が青になった。
「う…行こうっ!」
たまみは車を見ないように下を向きながら横断歩道を走っていった。すると…
どんっ
頭から、人にぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「あれ?たまみかい?」
「え…ご主人さま…?」
「僕を迎えに来てくれたんだね」
「はい…遅れてごめんなさい…」
「いいよ、たまみ。じゃあ帰ろうか」
雨の中、二つの傘が仲良く並んで家のほうまで進んでいった…。


「随分上まで登ってきたね…ご主人さま…」
「うん。でもどうしたんだい?急に僕を連れ出すなんて」
そう、ご主人さまはあかねに「ついてきて」と言われ、一緒に家を出てきたのだ。
「いいじゃないか…ご主人さま。二人っきりで…見たいものがあったんだ…」
「え…何をだい?」
「それは…もうすぐ分かるさ…」
「もうすぐって、もうこんな夕方も近づいているのに」
「だからだよ、ご主人さま」
「えっ?」
「ご主人さま、ほら…夕日…」
「…あっ…」
その丘から見た夕日…唯一つ、空に浮かぶ紅き太陽…。
「綺麗だな…あかね」
「うん…これをご主人さまに見せたかったんだ…」
ふと横を見るご主人さま。そこには夕日で紅く染まったあかねの顔があった。
「ど…どうしたんだい?ご主人さま」
見つめられて夕日で少し紅い顔を、赤くするあかね
「いや、あかねも綺麗だなって思ってさ」
「そんな…ご主人さま…」
あかねはすっかり顔を紅くしてご主人さまの胸へと抱きついた。そんなある日の夕方であった。
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あとがき
短編連作、第2シーズン4・5・6です。
何だか前回とは逆に小学生だけになっちゃったな…
でもこれで折り返し地点、やっと○○も抜けましたし。
次は…いつ出せる事やら…。
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2004・05・17MON
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