短編連作〜漢字編1−5〜

「ご主人さま〜」
「ん、何だい?杏珠」
「お散歩行こうよぉ」
ぎゅっ
杏珠は身体を、座っている私の背中へと抱き着いてきた。
「んー、それもそうだね」
「わーい、行こ行こっ」
ぎゅぅっ
「わー。引っ張らないで、杏珠」
ばたんっ
杏珠と私は家を出た。
「お日さまが気持ちいいね、お兄ちゃん」
「そうだね、杏珠」
「まるで、お兄ちゃんみたいに温かいな」
「えっ!?」
「お兄ちゃんも、お日さまみたいに温かいもん」
「そ・そうかな?」
「うんっ。だってお兄ちゃんと一緒にいると、杏珠の心もぽかぽかになるもん」
「なるほどね」
私と杏珠の春の散歩は、こうして暫く続くのであった…


たったったったっ
「ご主人さま、もっと早くっ!」
「そんな…ジュン速過ぎるって…」
二人は運動場に向かって走っていた。なぜなら…
「早くしないと、試合が始まっちゃいますよっ!」
「そ・そんなこと言ったって…」
「ご主人さま…運動不足ですよ」
「はぁ…そんなこと言ったって…はぁ…馬だったジュンには勝てないよ」
「それなら、少し休みますか?」
「う・うん、そうしてくれると助かるな」
と、近くにあったベンチへと座った二人。
「ふー、疲れたぁ」
「ご主人さま、これでもまだ1キロも残ってますよ」
「ああ、こんなことなら走って行くなんて言わなきゃよかったよ」
「ご主人さまが起きるのが遅かったからですよ」
「それなら起こしてくれればよかったのに」
「そ・それは…ご主人さまの寝顔を見ていたくて…」
「どうりで、朝起きた時にジュンの顔が目の前にあったわけだ」
「つ・つい…見入ってしまっていて…」
そんないつまでもラブラブな、夏の二人であった…


「そういえばご主人さまって、走るのは好き?」
「んー…まあ嫌いじゃないかな」
「そっかあ…」
「それじゃあつばさは?」
「え、ボク?ボクは大好きだよ」
「そういえば、どうしてつばさは走るのが好きなんだい?」
「えっと…気持ちいいからかな」
「気持ちいい?」
「うん、風に吹かれると気持ち良くて…」
「うんうん、それで?」
「そんな風に走ってると、何だか風に乗っている感覚になるんだ」
「んー、なるほどね」
「あ、そうだ。ご主人さま、これから走りにいかない?」
「うーん…そうだね、行こっか」
「うんっ、行こっ!」
「じゃあちょっと、準備するから待ってて」
「うん、ボクも準備しなくちゃいけないしね」
そして…
ばたんっ
ドアが閉じられ、二人は初秋の朝の街へと飛び出していった…
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あとがき
終盤戦の13・14・15作目です。
あと少しで、第一シリーズは終わります。
連作はこれからも何種類か出します。(12人連作・15人連作も出てきますけどね。)
ちなみに次のシリーズは重複1文字ありの、12連作の予定です。
あとこのシリーズは残り三文字、何とか春休み中には終わらせようかと思います。
ま、ゆっくり書きますよ。
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2004・03・23TUE
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