短編連作〜漢字編1−4〜

「ねえ…ご主人さま…」
「ん!?な・何だい?みか」
ご主人さまが何故ここまで驚いたかといえば、それは皆が寝静まった深夜だったからである。
「一緒に寝たいの…ダ・メ?」
「え…ど・どうして?」
「何だか少し寂しいの…」
そんなみかの表情はどこか寂しげであった。
「いいよ、入りな」
「ありがと、ご主人さま」
ススススス
みかはご主人さまの蒲団へと入っていった。
「でもどうしたんだい?みか」
「…ちょっと…ね」
「ちょっとじゃ分からないよ」
「ちょっと寂しくなっちゃって…ご主人さまの温もりが欲しくなっただけなの…」
みんなと一緒に住んでいるとはいえ、人一倍寂しがり屋のみか。一人で寝ていて寂しくなったのだろう。
「そっか…」
「だから…いい…?」
「いいよ、みか」
みかはそのままご主人さまの温もりに包まれながら冬の夜の眠りについた…


「あ、雅裕兄さん」
「え!?愛緒美!?」
そう驚くのも無理はない。帰り道でなんて滅多に会うことはないからだ。
「愛緒美、買い物の帰りかい?お疲れさま」
「はい、雅裕兄さんも学校ごくろうさまです」
「あ、荷物持とうか?」
「え…そんなにありませんし、いいです…」
「ほらほら、いいからさ」
「それなら…お願いします」
「うん」
ぱっ ぎゅっ
私は愛緒美の持っていたビニール袋を一つ持った。
「それにしても偶然だったね」
「はい…」
「それで今日は何にするんだい?」
「はい…今日はジャガ芋が安かったので、肉じゃがなんですけど…玉葱、入れてもいいですか?」
「んー、いいよ。玉葱が無いと美味しくないし」
「はい、でも少なめにしますね」
「うん、そうしてくれると助かるかな」
私と愛緒美は少し薄暗くなった秋の家路を帰っていった…


「どうしたんだい?紅玲菜、そんな隅の方で」
「あ、ご主人さま…」
「何か悩み事かい?」
「いや…何でもないから」
「何でもないわけはないだろ、紅玲菜」
「ん、ちょっと…ね」
「何だい?私にも話せない事なのかい?」
「そうでもないけど…」
「じゃあ話してごらんよ」
「…ご主人さまはどうして、アタシを助けてくれたんだい…?」
「え…!?」
「アタシが狼だった頃…」
「そんなの決まってるじゃないか、愛緒美」
ぎゅうっ
私は紅玲菜を後ろから抱き締めた。
「…え!?」
「助けたかったからに決まってるだろ」
「…ありがと、ご主人さま…」
ぎゅうっ
紅玲菜は身体を回して私に抱き着いた。それは寒い晩秋の夕方の事だった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
後半戦の10・11・12作目です。
ついにオリジナル守護天使が出てまいりました。
…実はここで裏話、当初は15個の予定だったんです。
オリジナル守護天使を出さない予定だったんで。
次回もオリジナル守護天使のもう一人が出てきます。
あと6作でどうやってあの漢字に収束するかはお楽しみに。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2004・03・15MON
短編小説に戻る