短編連作〜漢字編1−1〜

「ゆきさん」
「はい、何でしょう?ご主人さま」
「今日も綺麗だね」
「え…!?」
ぽっ…
ゆきは顔を紅くした。
「そう…ですか?」
「例えばこの白い肌だって…」
つつつつつつ
ご主人さまは人差し指でゆきの頬をなぞった。
「フフフ…ご主人さま、くすぐったいですわ」
「あ、ごめん」
「いえ、いいんですわ」
「あとそれに…この黒い髪だってさ」
さらさらさらさら
ご主人さまの指はゆきの黒髪を横切っていった。
「そうですか?何だか嬉しいです」
「とっても雅やかな感じだよ」
「フフ…ありがとうございます、ご主人さま」
そんな感じに二人の春の午後は過ぎていった…。


「ご主人さま」
「ん、どないしたん?ピピ」
「問題や、日本の鳥言うたら何や?」
「んーと…何やったっけなぁ…」
「え、知らへんの?」
「そんならピピは知っとるん?」
「そら知っとるで。ウチ、元は鳥やし」
「ああ、そうやったっけ」
「ご主人さま、一万円札持っとるか?」
「え!?」
「せやから一万円札や」
「えっと…あるかな」
ご主人さまは財布から一万円札を取り出した。
「この鳥や、この鳥」
「ああ、孔雀?」
こけっ
ピピはこけかけた。
「孔雀やない、雉やぁっ!」
「ああ、そっかあ」
そんな問答をしているご主人さまとピピであった…。


「ご主人さま」
「ん、何だい?あゆみ」
「お茶をお淹れしましたわ」
「あ、ありがとうあゆみ」
ごくっごくっ
「はー。やっぱりあゆみの淹れてくれるお茶は美味しいよ」
「そ…そうでしょうか?」
「うん。温度も、味もちょうどよくて」
「はぁ…何だか照れてしまいますわ」
「何か淹れるポイントでもあるのかい?」
「はい、色々とありますわ」
「ふーん、そうなんだ」
「お茶の葉も色々と試しましたし、淹れ方も色々と試しましたわ」
「うん、やっぱり色々と勉強してるんだ」
「はい、でも一番大切な事は…」
「ん?一番大切な事って?」
「一番大切なのは、ご主人さまの事を思って淹れる事ですわ」
「そっか…あ、もう一杯淹れてくれるかな?」
「はい、ご主人さま」
そんな風にまったりと過ぎていく冬のある日の午後であった…。
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あとがき
ふ〜、何とか形に仕上がりました。
今回は短編連作ということで、各々は20行ずつと非常に短いSSです。
この漢字が次にどんな変化をしていくかはお楽しみに。
このあとにまだ、15個の漢字が続きます。
…そろそろキャラ別の索引ページを作らないとまずいかなぁ…。
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2004・03・04THU
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