Water in Three Colors (三色の水)

ガタンゴトン ガタンゴトン
ここは夕日が照らす電車の中。二人の天使がご主人さまの肩に頭をあずけて、小さく寝息を立てていた。
「「ご主人さま…」」
「二人とも…僕の夢でも見ているのかな?」
「大好き…だよ…」 「大好き…れす…」
「…そっか…二人ともいい夢を見てるんだな…」
二人の心地よい重みを肩に抱きながら、ご主人さまは今日のことを思い出していた…
 
……………
ミーンミンミンミーン
それは夏のある朝のこと…
「うー…暑いれす…」
「確かに…暑い…」
二人の天使が床にだらしなく寝そべっていた。そう、みどりとあかねである。
「何らか体まで溶けてしまいそうなのれす…」
「ご主人さまは…暑くないの…?」
「まあ暑いけれど、もう慣れちゃったからさ」
この日の気温は朝なのにもう29度、一歩進めばもう真夏日な日であった。
「さすがれすご主人さま…」
「何だか二人とも、だれちゃってるみたいだし…よし、出かけよっか」
「どこに…行くの?」
「どこにってそうだなぁ…プールにする?」
「プールれすかっ!?」
「プールか…いいな…」
だれていた二人の目が嘘のように輝きだした。
「行く?二人とも」
「はいれすっ!」
「もちろん…だよ…」
「じゃあ、あかねとみどりで行くためのものを用意してくれるかな?」
「え…ご主人さまは?」
「僕はお金とかを用意するからさ」
「お金って…近くのプールじゃないの…?」
「うん。たまにはちょっと遠くのプールでも行こうかなって」
「あのオープンした、大きなプールれすか?」
「うん、そうだよ。確かオープン記念で安く入れるって聞いたしさ」
「そうなんだ…」
「それじゃあ10分したら出るから、準備お願いね」
「「は〜い」」
3人はめいめいに準備へと入った。
 
「「「行ってきまーす」」」
3人は誰もいない家へと挨拶をした。
バタン カチャンッ
「じゃあ、行こっか」
「そうだね…」 「出発れすっ!」
…と3人は途中で買い物をしつつ、近くの駅へと歩みを進めていった。
 
『水泉ヶ池〜、水泉ヶ池〜、お出口は左側です』
「ここれすね、ご主人さま」
「うん、降りるよ二人とも」
「「は〜い」」
と、三人はプールのある近くの駅へと到着した。
「プールまで…どのくらいなの?ご主人さま…」
「えっと確か…5分くらいだったはずだよ」
「あ、そこに看板が出てるれすね」
「本当だ、じゃあ行こうか二人とも」
「「うんっ!」」
そんな返事をした二人の顔は、夏の太陽に負けないくらい輝いていた。
 
「ふえぇ、大きいれす…」
「うん…これは大きいな…ご主人さま」
そこはプールというよりは、むしろ水のテーマパークと言った方が正しいかもしれないほど大きな建物であった。
「よし、じゃあ中に入ろうか二人とも」
「そうれすね」 「そうだね…」
ご主人さまが中で料金を支払い、3人はそれぞれの更衣室へと分かれていった。
 
着替えも終わり、プールサイドにて…
「「ご主人さまー」」
「あ、あかね…みどり…」
「どうしたのれすか?ご主人さま。顔が紅くなってるれすよ」
「い…いや、ちょっとね」
「ご主人さま…もしかして…私たちの水着姿に照れてるの…?」
「あ…う・うん」
「みどりさんたちが、魅力的なんれすね」
「ま…まあね」
「そんなに照れなくてもいいのに…」
「それよりご主人さま、みんな揃ったことれすし泳ぐれすよ」
「それもそうだね、じゃあ泳ごうか」
「はいれすっ」 「うんっ…」
そうしてご主人さま達は、昼にいったん休憩を入れつつ遊び続けていた。
そこには何よりも思い出に残る、3人の素敵な笑顔があった。例えばこんな風な…
 
「ご主人さま、次はあれいくれすよ〜」
と、みどりが指した先には…
「ウォータースライダーかい?」
「そうれすよ。何れも、ここの施設の目玉らしいれす」
「よし、行ってみようか…ん?あかね、どうしたんだい?」
「…ちょっと…怖いかも…」
「なるほど、あかねさんはスライダーが苦手なのれすか…初耳れす」
「えっと、じゃあどうしようか…」
「でも…」
「でも、何だい?あかね」
ぎゅっ
あかねはご主人さまの左腕をおもいきり抱き締めた。
「あ・あかねっ!?」
「ご主人さまが抱き締めてくれるなら…行ってもいいかな…」
「あー、あかねさんばっかりずるいれす。みどりさんもっ!」
ぎゅっ
みどりもご主人さまの右腕をおもいきり抱き締めた。
「みどりまでっ!?」
「みどりさんの時も、ご主人さまがみどりさんを抱き締めてくらさいっ!」
「…うん、いいよ。じゃあ3人いっぺんに行けたら、3人で一緒に…ね」
………
「あかねさん、大丈夫れすか?」
「たぶん…ご主人さまがいてくれるから…」
3人が乗っているのは小さなゴムボートであった。
「じゃあ、行くよ」
「う・うん…」 「いいれすよ〜」
一方は不安げな表情、片やもう一方は楽しげな表情であった。
「あかね、みどり、僕に抱きついていいからさ。係員さん、お願いします」
ぎゅっ ぎゅぅっ
2人が抱きついたのを見計らって…
「いきますよー、それっ!」
シューーーーーーー
係員さんが押し出して、ゴムボートは発進した。
「んー、気持ちいいれすっ!」
とご主人さまの腕の中ではしゃぐみどり、それとは対照的に…
「んっ…きゃっ…」
少し怯えながらも、ご主人さまの温もりに包まれて安心しているあかねの二つの笑顔がそこにはあった…。
 
……………
『次は………〜 ………〜 お出口は左側です』
「そろそろ二人を起こさないとかな…」
そして3人を乗せた電車は、家の近くの駅へと滑り込んでいった…

あとがき
どーも、雅です。
もう時期が過ぎ気味ですが、プールなSSです。
あかねをちょっとか弱く書きすぎたかなぁって、思いましたけど…まあいいか。
元気なみどりとおとなしいあかねを両方書きたかった、ただそれだけです…はい。
 
04/08/23 MON Written by 雅