Three Color's Spa Diary [4](三色の温泉日記〔4〕)
ここはとある駅の新幹線ホーム…
「いってらっしゃいませ、ご主人さま」
「ああ。今日と明日家のことは頼んだよ、らん」
「くるみ、宿の人に迷惑掛けちゃダメだからね」
「もー、つばさは言い過ぎなの!くるみだって中学生だから大丈夫なの」
見送りに来たのはらんとつばさの二人。余り大勢だと入場料がかかるのでこの二人だけにしてもらったようだ。
「あかねちゃん、ゆっくりしていらっしゃい」
「うん…ありがとう、らん姉さん」
「みどり、食事がバイキングで良かったね」
「れも隠れて入ってたりしないか心配れす…だけど楽しんでくるれすよ」
「らん、つばさ、みんなによろしく言っておいてね」
「分かりました」 「うんっ」
「明日は夜の7時か8時くらいになるから、それまで家のことは頼んだよ」
そう言うとご主人さまとくるみ、あかね、みどりの三人は新幹線へと乗り込んだ。
「はい、行ってらっしゃいませご主人さま」
「うん、任せてよっ」
Trrrrrrrr…
駅のホームに発車を告げるベルが鳴り響く。
「えっと、座席は…ここか」
「ご主人さま…どうするんだい?」
「そうだな…僕はこことして…あとはジャンケンでもして決めてもらおうかな」
「どういうことなの?」
「一人は僕の隣、一人は通路を挟んで隣、あと一人は通路を挟まないけど隣じゃないってこと」
「あ、それならみどりさんは一番端でいいれすよ」
「いいのかい?みどり」
「いいんれす。外の景色も見てみたいれすから」
「くるみは通路挟んででいいの」
「くるみ姉さん、私が隣で…いいの?」
「だってこれはあかねちゃんが当てたの。それに通路に近い方が移動もし易いの!」
「ありがとう…みどり、くるみ姉さん…」
「よし、決まりだね。もう発車だからそろそろ座ってね、みんな」
「「「はーい」」」
『なすの○○○号郡山行き発車します、次は上野に停まります』
プシューー
そしてドアが閉められ、いよいよ発車するようだ。
「ご主人さま、この新幹線でどこまで行くんれすか?」
「ちょうど終点までだね。そこで30分待って乗り換える列車に乗って行くよ」
「そうなんれすか〜」
「ご主人さま、何時くらいに着くの?」
「乗り換えて快速に乗って11時52分、ちょうどお昼前だよ」
「じゃあお昼ご飯は向こうでなの?」
「そうだね。着いたら…そうだ、名物のアレでも食べようかな」
「名物…?」
「ああ。前に行った時に食べたアレにしよう」
「楽しみ…かな」
「よし、じゃあそれも決まったし…乗り換えまでゆっくりしてようか」
「ご主人さま、飲み物はどこなの?」
「飲み物は…確か僕のバッグの中だっけ」
ジーーーー
バッグの中から水筒を取り出すご主人さま。
「はい、でもあんまり飲み過ぎないようにね」
「分かったのー」
「ご主人さま…」
「ん?どうした?あかね」
「ちょっと…こうしてていいかな?」
と、あかねはご主人さまに寄り添うようにくっ付いた。
「いいけど…なんだかあかね、少し甘えん坊さんになってるね」
「たまには…いいじゃないか」
「別に悪いとは言ってないけどね。あかねの自由にしてていいよ」
「うん…」
………
『長らくのご乗車おつかれさまでした。次は終点郡山、郡山です。東北本線、磐越西線、磐越東線、水郡線はお乗り換えです』
「もうすぐか…って、あかね起きて起きて」
ゆさゆさ
ご主人さまはすっかり眠りに落ちていたあかねの身体をそっと揺らした。
「ん…んーっ…ご、ご主人さま…私ずっともしかして…」
「うん。僕につかまってすっかり夢の中だったよ」
「ゴメンなさい…ご主人さま…」
「別に構わないよ。ほら、次で終点に着くから降りる準備しないとさ」
「う…うん」
「ご主人さま、次のあの駅何て読むんれすか?」
「みどり、あれは『こおりやま』だよ。ここから乗り換えて西の方に行くよ」
「ほへー、そうなんれすか」
「ご主人さまー」
「くるみ、どうしたんだい?」
「全部飲んじゃったのー…」
「やっぱりか…しょうがないな。30分はあるし、駅前で補充しようか」
「ゴメンなさいなの…」
「いいよ、怒ってないからくるみ。でもまずは3人とも降りる準備してね」
「「「はーい」」」
………
「会津若松行きって…これか。僕達の乗る列車は」
「うわあ、真っ赤な列車さんれすね」
「確かこの地方の名産品の赤ベコの色だったかな」
「この列車に乗るの?」
「うん、これで終点まで乗って行けば会津若松に着くよ」
「乗ろう…早くしないとご主人さま」
「そうだね。自由席だから先に乗って席取らないとだ」
………
ここは快速あいづライナーの車内…
「しかし自由席とは言え、商店街も交通費全額なんて凄いなあ」
「うん…後から聞いたけど、私たちだから出してくれたんだって…」
「…え?」
「いつも色々買ってもらってるから、当たったのは偶然だけど…これくらいならって…」
「何か悪いことしちゃったなあ…お土産、ちゃんと買っていかないとね」
「うん…ちゃんと買っていこう」
「これからもまだまだお世話になるからね」
「そうだね…ご主人さま」
「あ、ご主人さま、次が会津若松れすよ」
「こういうところなのか…初めて来たから新鮮だなあ…」
「降りたらまず、お昼ご飯なのー!」
「分かってるって、くるみ。そんなにはしゃいでもお昼ご飯は逃げないから大丈夫だよ」
「フフフ…このメンバーで良かった…」
4人を乗せた列車は会津若松へと滑りこんでいく…
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あとがき
このシリーズは忘れた頃にやってくる、雅です。
今回は旅情を一気に。会津若松ですと普通列車等を乗り継ぐ方法もありますが、こっちにしました。
このペースだと、次にやっと昼食+温泉になるかと思います。
なお、気付かれた方はご名答。そう、このSSがこのサイトの9周年記念SSになります。
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2010・09・03FRI
雅