Under the November's Moon(霜満つる月の下で)

それは霜月のある日のベランダでのこと…
「なぁ…みどり」
「何れすか?あかねさん」
あかねとみどりの二人は、ベランダで星月を見ていた。
「みどりは…ご主人さまのこと…好きかい?」
「ご主人さまれすか?大好きれすよ。どうかしたんれすか?あかねさん」
「ん?何となく…さ」
「ふえ?…まあいいれすけど…」
ガラガラガラガラ
と、そこにガラス戸の開く音が…
「あれ?どうしたんだい?二人とも」
「「あ・ご主人さま…」」
二人の声がシンクロした。
「ご主人さま…星を…見てたんだ」
「そうれす。みどりさんたち、星を見ていたのれす」
「星かぁ…ああ、今日は綺麗だな…」
「この時期は…空気が澄んでるし…少し寒いくらいだから…」
「そっか、でもやっぱりちょっと寒いね」
くちゅんっ
と、そこに一つのくしゃみの音。
「やっぱり、寒かったんだね。ちょっと待ってて、二人とも」
と、ご主人さまは家の中へと戻っていった。
ガラガラガラ
そして戻ってきたご主人さま…
「はい、これ」
ファサッ
二人の足元に毛布がかけられた。
「あ・ありがとう…ご主人さま…」
「ありがとうれす、ご主人さま」
「どういたしまして、それにしても綺麗な星空だね」
「そうれす、何らか見とれてしまうれすよ」
「うん…吸い込まれてしまいそうなくらい…」
「それに、月も綺麗だしね」
「うん…こんな日には…何かが起こりそうなくらい…ね」
「ふえ?何かが起こるのれすか?あかねさん」
「フフ…物のたとえだよ…みどり」
「でも、今日なら何か起こるかもよ?」
と、ご主人さまは何かを知っているようであった。
「え?何かって…」
「こうして三人で話しているのも、何かかもしれないけどね」
「それもそうれすね、ご主人さま」
「そういえば、さっきは二人で何を話してたの?」
「え…何って…」
と、少し顔を紅くするあかね。
「ご主人さまのことれすよ」
「あ…ちょ・ちょっと、みどり」
「え…?僕のことかい?」
「う…うん」
「そっか」
「ね・ねぇ、ご主人さま…」
「ん、何だい?あかね」
「ご主人さまって…私たちのこと…どう思ってるんだい…?」
「え?どうって…」
「みどりさんたちのことを、どう思っているかれすよ」
「んー、そうだなぁ…」
と、少し考えるご主人さま。
「何て言ったらいいか分からないけど…僕にとっては大事な『星』なんだと思ってるよ」
「ふえ?…星って何れすか?」
「みどり、星座は幾つかの星で作られてるのは分かるよね?」
「はいれす」
「その一つ一つの星は、自分で輝きを持ってるんだ」
「あ…そっか…」
あかねはみどりよりも先に、ご主人さまの言いたかったことを理解したようだ。
「それが一つでも欠けたら、どうなる?みどり」
「星座が作れなくなるれす、あっ…」
みどりもご主人さまが言いたい事を理解したようだ。
「だからさ、君たちが一人でも欠けたら今の自分は成りたたないんじゃないかなって思うんだ」
「ご主人さま…私たちとご主人さまが出会えたのは…運命だったのかな…?」
「運命じゃないさ、少なくとも僕はそう思ってるよ」
「「えっ…!?」」
「絶対だったと思ってる。運命って変える事ができるけど、絶対は必ず起こることだからさ」
「絶対…れすか」
「君たち12匹との悲しい別れも今までの悪い事もさ、輪廻の上での一つの業だと思ってるしさ」
「私たちがこうやって戻ってこれたのも…輪廻転生の上での業をこなした恩賞だったのかな…?」
「そうだと思うよ。僕との別れもあったけど、めいどの世界で厳しい修行もしてきたんでしょ?」
「そうれすね、色々とめいどの世界で学んできたれすよ」
「うん…でもそれでも挫けずに、辛い修行に耐えられたのは…」
「ん?耐えられたのは?」
「ご主人さまに…もう一度逢いたいって気持ちがあったから…」
「そうれすよ、ご主人さまに逢いたいって気持ちが大きかったれすよ」
「そっか…」
「ご主人さまに再びこうして逢えた時…抱きしめてくれた温もりがあの頃と同じだったな…」
「そうれした、抱きしめてくれたご主人さまの匂いも、あの頃と変わってなかったれすよ」
「あの頃から色々あったけど、本質的な自分は変わらなかったってことかな」
「うん…それにご主人さまの心は…あの時と同じだった…」
「だからこそ、再び出逢えてうれしかったのれす」
時はもう23時を回り、月も段々と空を昇っていく…
………
「ご主人さま、今は幸せれすか?」
「うん、これだけは自信を持って言えるさ」
「私たちがこうして居るから?」
チュッ チュッ
ご主人さまは両脇に居た二人の頬へとそっとキスをした
「「え…?」」
「うん。君たちが居ること、今の自分がこうして在るのも君たちが居るおかげだからさ」
「ご主人さまぁ…」 「ご主人さま…」
二人はご主人さまの胸へと顔をうずめた。
「ご主人さま…温かいれす…」
「うん…それにご主人さまの鼓動が聴こえる…」
スリスリ スリスリ
二人ともご主人さまの胸へと擦り付きだした。
「こ・こら、くすぐったいよ、二人とも」
「いいじゃないれすか。大好きれすっ、ご主人さま」
「大好きだよ…ご主人さま…」
「ま、いいか」
サラサラサラ サラサラサラサラ
そんな二人の髪をご主人さまはそっと撫でていた。
「ん…気持ちいいれす、ご主人さま」
「うん…とっても…」
霜満つる月の望月の下、月は3人の影を作り出していた…
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あとがき
日記小説として書いていた物をまとめました。
この二人が一番書きやすいです、やっぱり。今執筆中なのもこの二人なくらいですから。
「月」って好きな言葉です。HNの一つにも「月」が入ってますし、今ラブひなの方で書いているのもそれがあってです。
月が見れる季節はよく眺めているくらい、大好きな自然の一つです。
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2005・11・24THU
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