Selves Shove for Avenue(大通りへ行く二人〜愛緒美BSS〜)
「愛緒美、今年も…だったね、結局」
「はい…もう毎年のことですが…」
この光景を見るのも、もう3度目のこととなってしまっていた。
「紅玲菜も、お酒に関しては見境が無いというか何と言うか…」
「ご主人さまも拒否しなくちゃダメですよ、本当に」
苦笑いをしながらクリスマスの片付けをしている私と愛緒美。
「うーん、あの状況で迫られたらなかなか拒否が…ね」
「来年からお酒は無しにしましょうか?」
「それでもかまわないよ、私は基本的には飲まないから」
「そういえばご主人さまはあまり飲まれませんね?」
「まあね、だって飲む理由とかも特に無いからね」
「それなら来年からは無しの方向でいきましょう」
「そうだね、お酒なら別に飲む機会もあるわけだし」
「ご主人さま、これからは姉さんに言われても、杏珠に言われてもあげちゃダメですよ」
「分かった、自重するよ愛緒美」
「あ、ご主人さま。あとは私がやりますから、先に3人を寝室に連れて行ってくれますか?」
「うん、じゃあ先に蒲団敷いてくるから」
「分かりました、あっ…」
「ん?どうしたんだい?」
「いえ、何でもないです。すみません」
「???それじゃ、行ってくるね」
少し頭の上に疑問符を出しながら、私は4人分の蒲団を敷きに天使の部屋へと向かった…
………
「ふー、まったく覚えてさせてしまったこととは言え、もうしばらく家ではお酒が飲めないな…」
3人目の紅玲菜を運び終わり、一人私は自嘲気味についそう言ってしまった。
「あとは起きてる愛緒美だけだよな、よし戻ろう」
私はある物を自分の部屋から持ち出して、一人残している愛緒美の許へと向かった。
………
「片付けお疲つかれさま、愛緒美」
「ご主人さまもおつかれさまです」
「これ飲むかい?愛緒美」
と、私が取り出したのは…
「シャンパン…ですか?そんなに高いもの、私はいただけません」
「いや、ただの安物のシャンメリーだよ。アルコールは入ってないよ」
「そうなんですか?それなら…いただきます。あ、グラス持ってきますね」
「お願いするよ」
ポンッ トクトクトクトク トクトクトクトク
「カンパイ、愛緒美」
「カンパイです、ご主人さま」
チンッ
二人のグラスが澄んだ音で触れ合った。
「そういえばさ、明日は街に行くってことで良かったんだっけ?」
「はい、色々と見たいものがありまして。3人が起きる前に行っちゃいましょ」
「そうだね、いつものことだからなかなか起きないと思うけど」
「いつもこの翌日はお昼までぐっすりですからね…」
「うん…。あ、万代の方と古町の方とどっちがいい?」
「できればどっちも行きたいのですが…ダメですか?」
「大丈夫だよ、それが愛緒美の願いならさ」
「ありがとうございます、できればですが…先に万代にお願いできますか?」
「ん、まあどっちでもいいけど愛緒美がそう言うならそうしよっか」
「はい…」
チュッ
と、頬に突然の口付けが…
「えっと…明日はよろしくお願いします、ご主人さま」
「う・うん…」
「え・えっとそれでは後でご主人さまの部屋に行きますね」
「ん?今年も私の部屋で寝るのかな?」
「ダ・ダメですか?」
「ううん、いいよ。二人で一緒に寝よう」
「あ…ありがとうございます。それでは着替えてきます」
「うん、待ってるよ。明日のために早めに寝たいから、早めに来てね」
「分かりました、着替えたらすぐに向かいますね」
………
コンコン
「入って大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、入ってきな愛緒美」
「失礼します、ご主人さま」
「さ、寒かっただろ?入って入って」
「は…はい…(ポッ)」
すすすすす
私の蒲団へと入ってくる愛緒美の身体、その身体からは愛緒美らしい香りが漂ってきた。
「温かいかい?愛緒美」
「はい…ご主人さまの温もりをとても感じます…」
「それじゃあ寝よう、片付けもあったし疲れただろ?」
「確かに…ちょっと疲れちゃいました…」
「愛緒美、おやすみ」
「おやすみなさい、ご主人さま」
私と愛緒美は互いの温もりを感じながら眠りの途へと就いた…
そして翌日…それももう9時半。
「案の定ですが、3人とも起きませんね…」
「うん、やっぱり起きなかったか…しょうがないし寝かせておこうよ」
「そうですね、そちらの方がずっと朝から二人きりでいれますから…」
「それもそうだね、でも愛緒美も何だか大人になったね」
「そ・そうでしょうか?」
「私の家に居るのが愛緒美は一番長いんだよな、そういえばさ」
「そういえば…もうあれから5年経つのですね」
「年末に突然のことだったから、あの時はびっくりしたさ」
「あの時は私もまだ9歳で、ちょっと不甲斐なかった気がします」
「それで紅玲菜が来て、杏珠が来て、ちょっと前に奏歌が来て…か、でもやっぱり愛緒美には一番思い入れがあるかな」
「そ・そうなんですか?ご主人さま」
少しだけ頬を紅く染める愛緒美。
「だって初めての守護天使だったしさ、あの頃は本当に可愛かったよ」
「むっ、今は可愛くないってことですか?」
「いや、可愛いのに加えて綺麗になったなって思うよ、本当に」
「えっ…」
「大好きだよ、愛緒美」
ぎゅっ
私は愛緒美の身体をそっと抱きしめてあげた。いつのまにか愛緒美の腕も私を抱きしめるように私の後ろに回されていた。
………
「よし、そろそろ行こう。駐車場も混んじゃうしね」
「そうですね、ご主人さま」
私と愛緒美は、大通りへと向かうために車を走らせ始めた。この数十分後には、大通りを歩く二人の姿があったという…
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あとがき
研究がー、雅です。
オリジナル守護天使誕生日SS2006の3本目です。今回もタイトルの頭には「大」です。
研究が忙しくて、最近はHPの更新が滞っていることをお詫び致します。
なお今回は地元ネタが多いことについては、お詫びはいたしません。こういう時くらい…ですから。
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2006・12・06WED
雅