Tumble for Heart(恋するハート〜愛緒美BSS〜)
2005年ももう少しで終わる、そんな冬のある日のこと…
「兄さんお疲れ様です」
「あれ?愛緒美、こんなところでどうしたんだい?」
学校も最終日であったその日、帰り際に寄ったスーパーに愛緒美の姿が在った。
「今日はここが安売りしている日なので、ちょっと遠いですが来てしまいました」
「帰りはどうするつもりだったんだい?」
「えっと…兄さんに電話しようかと…時間を見たらちょうどいいかと思いまして…」
「こーらっ」
こつんっ
私は愛緒美の額を軽く小突いた。
「んっ!兄さん…」
「まったく…まあいいか。それじゃあ買い物しようか」
「はい、兄さん」
私と愛緒美はそのままスーパーの買い物に入った。
………
「そういえば今日は何を買いにきたの?」
「今日ですか?今日はクリスマスケーキの材料です」
「あ、そっか…もうそんな時期だっけ」
「はい。今年はもう一人増えましたし、去年よりさらに多く作らないとです」
「そうだなぁ…奏歌が増えたし、今年はさらににぎやかになりそうだな」
「はい。あ…兄さん、今年はお酒はどうされますか?」
「うーん、去年のこともあったしなぁ…まあ後で考えるさ」
「それもそうですね、それは任せます。でも自制もして下さいね」
「分かってるさ、今年は愛緒美の手は煩わせないようにするよ」
「お願いしますね、兄さん」
「あ、そうだ。去年ので思い出したけど、26日って愛緒美の誕生日だっけか」
「はい、フフ…早いものですね、一年が過ぎるのって」
「うん。それでさ、何して欲しいかなって思ったんだけど」
「うーん…一度兄さんと一緒に、ちょっとした旅行に行ってみたいなって…ダメですか?」
「いや、私はそれでもいいけどさ。うーん、旅行か…」
「この時期ですと…温泉なんかはダメですか?」
「いや、私はいいけど…今から探してあるかなぁ?」
「どうでしょうか?無かったら日帰りで温泉だけでも」
「うん、まあ探してみるさ」
「ありがとうございます、兄さんっ!」
ぎゅうっ
愛緒美はいきなり私へと抱きついてきた。
「こ・こら愛緒美、人前で抱きつくなって」
「あ・あう…ごめんなさい兄さん…」
「まったく…まあいいか」
私も愛緒美も顔をさらに紅くして、その後の買い物を続けていった…
自宅に戻って…
「とれたよ愛緒美、希望に一番合っている宿が」
「本当ですか?ご主人さま」
「うん、出発はちょっと遠くなるから…9時くらいでいいかな?」
「分かりました、楽しみにしてますね」
「あ・あのさ、愛緒美」
「はい…何でしょう?」
「…あのさ、私も一応は男だからな」
「…あ…はい…」
私の言いたいことが分かったのか、お互い顔が真っ赤になっていた。
「あれ?愛緒美姉やんにご主人さま、顔紅くしてどないしたん?」
「ふわあっ!奏歌」
「ん?そないに驚かすことしたんか?ウチ」
「いや、なんでもないさ。ちょっと暑くてボーっとしてただけさ、愛緒美」
「そ・そうよ、奏歌」
「んー…あやしいなぁ…せやけど、まあええか」
「ん?奏歌は何しに来たんだい?」
「あ、せや。杏珠姉やんがお腹空いた言うてるのを伝えにきたんや。もう6時半やしな」
「もうそんな時間か…ってあれ?夕ご飯なんて作ってたっけ?」
「え?あ・あっ!い・今から作ってきますっ!」
「やれやれ。奏歌、杏珠にもう少しかかりそうだって伝えてきて」
「ん、了解や」
誕生日前日…
「…奏歌、大丈夫か?」
「…うーん…ウチ…目が回っとるぅ…」
バタッ
「ご主人さま…今年も結局こうなっちゃいましたね…」
「うん、愛緒美…」
紅玲菜は例年の通り、杏珠も飲んだ所までは去年と一緒だったのだが
「まさか杏珠が奏歌に飲ませるとはな」
三人とも倒れていて、炬燵の周りは異様な光景になっていた。
「でも、いいです。明日は誰にも知られずに出れそうですし」
「確かにね、それじゃあさっさと片付けて寝ることにしようか」
「そうですね、ご主人さまは3人を部屋にお願いします。私は部屋の方を処理します」
「うん…あ、愛緒美は今夜はどうする?」
「今夜と言いますと…」
「去年みたいに、また私の部屋で寝るかなって思ってさ」
「ご主人さまが良いって言ってくれるんでしたら…」
「ダメと言うとでも思ってるのかい?」
「えっと…良いですか?ご主人さま」
「勿論だよ、終わったら部屋に来てね」
「はい」
その夜はこうして更けていく事となる…
翌日…
「さて、行こうか愛緒美」
「そうですね、兄さん」
他の3人はまだ夢の中、一応玄関の鍵は閉めておいた。
「兄さん、忘れ物はありませんか?」
「財布はあるし、携帯も…免許証も…うん、大丈夫だな。愛緒美も大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です」
「よし、出発だね。ガイドの方は頼むよ」
「任せてください、兄さん」
私は暖機させておいた車に愛緒美を乗せて、一路南へと車を走らせていった。
………
「ここですか?兄さん」
「うん、ここさ。愛緒美の要望を探したらここが空いてたからさ」
「ありがとうございます、ご主人さま。寒いですし、早く中に入りましょう」
「そうだね、ちょっとさすがに山奥だし寒いなぁ」
ここは新潟の中でも南東の地域、山に挟まれていてさすがの私でも寒い。
………
「ん?愛緒美、どうしたんだい?そんなに怖気づかなくても、入ってこいよ」
「でも、やっぱり恥ずかしいなって…」
「愛緒美の方だろ、私と一緒に入れるところが良いって言ったのは」
「え・あ…はい」
愛緒美にお願いされていたこと、それは「家族風呂」がある場所であった。
「では、失礼します」
ガラガラガラガラ ピシャンッ
「やっぱり…恥ずかしいです…」
「まあそんなこと言ってないでさ、寒いし早く浸かりなよ」
「はい…」
ザバン ジャバッ ジャプンッ
愛緒美は身体を流して私の横へと腰掛けた。
「別に他に見ている人も居ないんだしさ、そんなに恥ずかしがる事なんてないだろ」
「でも…ご主人さまがこの前言った事を思い出したら、恥ずかしくなっちゃって」
「え・あ…そっか、それでか」
「でも、無理言って良かったです」
「え…何が?」
「こうして…」
ぴとっ
愛緒美は私の胸へと頬を寄せた。
「ご主人さまの広い胸板を、直接肌で感じることができますから」
「愛緒美…ま、いいか」
「ご主人さまの鼓動…確かで落ち着く鼓動が聞こえます…」
「う…私は落ち着かないけど…さっ」
チュッ
私のことを見上げている愛緒美に、そのまま私は口付けをしてあげた。
「ご主人さまぁ…」
「え・えっと…それじゃあもう少し浸かったらさ、身体洗おうか」
「そうですね。ご主人さま、お背中流しますね」
「あ、うん」
私と愛緒美の身体は、温泉で温まる以上に温まっていった。
………
結局その日も私と愛緒美は布団を繋げて、一つの大きな布団で過ごしたのは言うまでも無い事であった…
「大好きだよ…愛緒美」 「大好きです…ご主人さま」
チュゥッ
布団の中で交わされた確かな口付け、雪の降りゆく中…静かに愛緒美の誕生日は暮れていった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
11月最終日、2ヶ月連続月間5本、雅です。
愛緒美の誕生日ももう1ヶ月を切り、今年ももう1ヶ月ですね。
相変わらず前置き長く、回りくどいなぁ…まあそれが私のスタイルですけどね。
来月も目指せ月間6本ですっ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2005・11・30WED
雅