With My Brother(兄さんと一緒〜愛緒美BSS〜)

年も押し迫った師走も20日を過ぎた頃…
「ご主人さま、ちょっといいでしょうか?」
「ん、何だい?愛緒美」
「26日のことなんですが…」
「あ、愛緒美の誕生日のこと?」
「はい、それで…その日はもう、ご主人さまは冬休みでしたよね」
「あ、うん…そうだけど?」
「それで…あの…」
そこで少し顔が紅くなる愛緒美。
「愛緒美は何をして欲しいんだい?」
「何でも…いいんですよね?」
「え?ん…まあ私のお金が回る範囲ならね」
「それなら…私と…デートして下さい」
「いいよ…それを愛緒美が望むならね」
「あ・ありがとうございます、ご主人さま…」
そんな愛緒美の顔は、これまでに見られないほどに紅い笑顔になっていた。
「あー、愛緒美お姉ちゃん、いいんだーっ」
「こらっ!杏珠、そういうこと言わないのっ!」
「まあまあ、二人とも。そろそろ夕ご飯にしようよ」
「そうだよ…愛緒美、早くしないと焦げちゃうよ…」
「え…あ!お鍋を火にかけっぱなしだった!」
「やれやれ…」
その日はこうして暮れていった…。
 
そして当日…
「愛緒美、準備は良い?」
「はい、兄さん」
「じゃ、行こうか」
「そう…ですね」
「二人とも、あとは頼んだよ」
「「はーい」」
バタン バタン ブルンブルルルブルルルルン
二人の乗った車は街へと走り出した…
 
街の方へと来た愛緒美と私…
「えっと…愛緒美、どうする?」
「どうすると…言われましても…」
「余り…と言うかほとんど経験ないんだよね、デートってね」
「えっと…兄さんの行きたいところでいいです」
「私の行きたいところか…カラオケはみんなで行った方が楽しいしな…」
「んー…そうだとしますと…」
「そうだ!この辺にもあったはずだから…映画にしようか」
「そうですね…行きましょう映画」
「よし。あ、でもその前にご飯にしようか」
「そうですね、もうお昼ですし」
私と愛緒美はお昼を済ませてから、映画館に向かって歩道橋を渡っていった…
 
「えっと…どんなのを見たい?愛緒美」
「そうですね…なるべく怖くないのがいいです」
「え?愛緒美って怖いの駄目だっけ?」
「はい…少しだけ…」
「じゃあ…(実は私も怖いの駄目なんだよな…)」
「え?兄さん、今何か言いました?」
「いや、何にも」
「それじゃあ、これにしようか」
「はい」
………
「すみません、この映画の14時台のやつを中学生1枚と大学生1枚で」
「はい、各1枚ずつで2500円になります」
「じゃあ、3000円でお願いします」
「では、500円のお返しと、こちらが券になります」
「はい」
「では、入口はあちらとなります。ごゆっくり…」
………
「はい、入場券」
「ありがと、兄さん」
「じゃ、中に入ろうか」
「そうですね、あと10分くらいですしね」
カチャッ
二人はこうして中に入っていった。
「あれ?以外と小さいんですね、この映画館って」
「うん、普通の映画館に比べると結構ね」
「そっちの方が良いですけどね」
「え?どうしてだい?」
「人が少ない方が、人目を気にしないで…寄り添えますから」
「う・うん…」
言った愛緒美も、言われた私もすっかり顔を紅くしてしまった。
「…じゃ、あのへんにしようか」
「そうですね」
………
「キャッ!兄さんっ!」
「愛緒美、そこまで怖がるほど怖くはないだろ」
「でも…怖い物は怖いんです…」
「ま、いいけどさ」
「兄さ…キャッ!」
ぎゅうっ
愛緒美は思い切り、私の腕を掴んだ。
「兄さんは…怖くないんですか?」
「ん…まあ少しはね」
「………兄さん…」
「何だい?愛緒美」
「しばらく…こうしていて…いい?」
「…うん、いいよ。愛緒美がそうしたいならね」
「ありがと、兄さん」
 
映画も終わり…
「でも、そこまで怖かった?愛緒美」
「はい、最後はハッピーエンドになって良かったですけど、あの銃撃のシーンは…ちょっと…」
「そっか…こっちはおかげで腕が痺れちゃったよ」
映画中そのまま腕を掴まれ続けた私、少しだけ血の巡りが悪くなっていたようだ。
「あ…ごめんなさい、兄さん」
「いや、いいよ。映画に誘ったのはこっちだしさ」
「あ…これからどうします?」
「うん、そうだなあ…この辺の店、見て回ろうか」
「そうですね」
「欲しいものがあったら買ってあげるよ、私が出せる範囲ならね」
「いいんですか?」
「うん、だって今日は愛緒美の誕生日だしね」
「ありがとうございます、兄さん」
………
「そろそろ…帰ろうか、二人が心配してると悪いしさ」
「そうですね、寒くもなってきましたしね」
ぴとっ
「冷たっ…雪か…」
「綺麗…ですね…」
その雪はまるで、街を包み込むかのように降り出した。
「うん…じゃあ帰ろう」
「はい…」
そして車に戻った二人。
「はい、これ」
「何ですか?ご主人さま」
「何って…誕生日プレゼントだよ」
「ありがとうございます、開けてみていいですか?」
「うん、いいよ」
パカッ
その中には、小さいながらもラピスラズリが入った指輪が入っていた。
つつつつつ
「ありがとうございます…ご主人さま…」
チュゥゥゥゥッ
愛緒美は私の顔をこっちに向けて、永きキスをした。その間、私と愛緒美は車の中で互いを温めあうかの如く抱き合っていた…。
そして車は家へと向けて走り始めた…
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あとがき
はあ…もう11月も終わりですね…
そろそろ愛緒美の誕生日も近くなってきましたので、BSSを出しました。
実は今、裏でちょっとしたプロジェクトが進行中です。
ま、詳しくは次々作くらいのSSで発表します。
ではでは〜。
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2003・11・25TUE
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