At the Hill Get a View Ursa Major(大熊座の見える丘で〜紅玲菜BSS〜)

「寒くない?紅玲菜」
「大丈夫…雅兄…」
ここは夜のとある丘、私と紅玲菜は星を見に来ていた。
………
暖冬と言われる中で久しぶりに雪が降った日のこと…
「もう大学卒業か、時が過ぎるのって本当に早いなあ」
「そうだね…ご主人さま…」
「そういえば守護天使に卒業ってあるのかい?」
「ここに来ることが卒業と言えば卒業かも…」
「そうなの?」
「うん…だからどんな人に就くとか…何人目かとかでかなり変わるんだ…」
「紅玲菜って、その前に愛緒美が居たんだよな」
「あれはうん、誕生日もあったから…」
「誕生日って紅玲菜の方が先なんじゃないの?」
「でも、その誕生日の時はまだ…年齢に対しての能力が足りなかったんだ…」
「能力って…どういうこと?」
「炊事とか洗濯とか…護衛とかの能力が…ランク付けされているんだよ…」
「そうなんだ、つまり愛緒美の方が先にそれを満たしたってことなんだ」
「うん…だから最初に行ったのが愛緒美だったんだ…」
「それから紅玲菜、杏珠が来て奏歌が来て…か」
「そういうことになるね…」
「愛緒美が来た年の誕生日に、これがポストに入っていたんだよなそういえば」
と、私は4人の名前が刻印されたタリスマンを取り出した。
「最初は愛緒美の名前だけだったの…?」
「ううん、最初はこれの真ん中にアメジストが入ってただけだったな」
「そっか…ご主人さまの誕生日の時はまだ来てないんだね…」
「うん。それから、愛緒美の名前とルビーが下の方に入ってたんだっけ」
「その次にアタシが来て…」
「その時は、確か紅玲菜の名前とサファイアが上の方に入ったんだっけな」
「杏珠の時は…愛緒美の名前が左側に移動して…あれは不思議だった…」
「うん、杏珠の名前とトパーズだっけ?それが右下の方に入っていったんだよ」
「ご主人さまは…奏歌のときは見てないんだよね…」
「そういえば私が出てたときなんだよな、奏歌のときだけは」
「アタシたちも…あれはびっくりした…」
「そういえばこれは後で分かったことなんだけどさ」
「ん…?」
「どうやら、このタリスマンの位置は守護方位らしいんだよ」
「えっ…!?」
「4人揃って分かったんだけど、名前が移動していった理由もそれらしいんだ」
「それって…アタシが北とかってことなの…?」
「うん。一度4人でこの通りに囲まれた時に何か力を感じたよ」
「あの丘に行った時…だよね…?」
「その時はどうしてかは分からなかったけどさ、後で考えたら納得したさ」
「そうなんだ…」
「でもさ、こんな風に言うのもあれだけど、誰にももう欠けて欲しくないよ」
「………」
「昔さ、4人の前世が死んじゃった時はもう本当に悲しくて…今こうして戻ってきてくれて…」
「ご主人さま…」
いつの間にか私は紅玲菜の胸の中で泣いていた。
「あ、ゴメン…。何だかこれじゃあいつもと立場が逆だね…」
「いいんだよ…癒してあげることも、アタシたち守護天使の役目だから…」
「ありがとう、何だか落ち着くよ…」
と、そこに…
「ご主人さま、どないしたん?紅玲菜姉やんの胸んとこで」
「あー、ご主人さまが紅玲菜お姉ちゃんと何かしてるー」
「どうかされたんですか?姉さんにご主人さま」
3人がお使いから帰ってきたようだ。
「いや…何でもないんだ…ちょっと色々あったから…」
「う、うん。なんでもないよ、みんな」
私と紅玲菜は少しだけ顔を赤らめてそう返した。
「ところで今日の夕ご飯は何になるの?愛緒美」
「え、えっとですね…カレーでいいですか?」
「私は構わないけど、みんなは?」
「ウチはそれでええよ」
「杏珠もいいよー」
「アタシも構わない…」
「それじゃあ今から作りますね」
そうしてこの日の夕方は過ぎていった…
………
その日の夜…
「ご主人さま…どうしたんだい?こんな寒いのにベランダに出て…」
「く・紅玲菜…!?紅玲菜こそどうしたの?」
「何か…ベランダの戸が開く音がしたから…」
「いやさ、空の星を見てたんだ」
「星…?」
「普段の新潟だとこの時期に晴れることは無いんだけど…今年はけっこう晴れてるからさ」
「そういえば…そうかもしれないな…」
「だからさ、たまにこうして空を見上げるんだよ」
「綺麗なんだな…星空って…」
「あ、そうだ。今度の紅玲菜の誕生日だけど…」
「アタシの誕生日…?」
「ここよりもっと綺麗に見えるところに行こうよ」
「ここより…もっと…?」
「うん。ここは、周りに光があるから細かい星が見えないからさ」
「ご主人さまが連れてってくれるなら…どこでも構わないよ…」
「よし、寒いからそろそろ中に入ろう。体が冷えちゃっても困るしね」
「うん…」
………
「えっと、あれがカシオペア座だから」
「どれのこと…?」
「ほら、あの大きくWを描いているやつだよ」
「あ、本当だ…」
「こっから5倍で、北極星だからその反対側に…あったあった」
「ん…?」
「ほら、北斗七星さ。大熊座の一部だよ」
「あんなに綺麗に見えるんだ…綺麗…」
「ここに来るのは久しぶりだけど、晴れてくれて良かったよ」
「うん…」
チュゥゥゥッ
私と紅玲菜は満天の星空の光に包まれながら、静かに永い口付けを交わしていた…
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あとがき
どもども、雅です。
オリジナル守護天使誕生日SS2006の最後です。今回もタイトルの頭には「大」です。
とりあえず研究も一段落しまして、一心地ついているところです。
「大」のチームが4つあって、今回はタイトルは苦慮しましたよ、本当に。
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2007・03・09FRI
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