Your Answer(君のAnswer〜紅玲菜BSS〜)

今年はまだ雪の残る3月のある日のこと…
「紅玲菜」
「何?…ご主人さま…」
「確か紅玲菜って、もうすぐ誕生日だったよね」
「あ…そうだったっけ…」
「ん?どうしたんだい?」
「ううん、何でもない…最近忙しくて…忘れてたから…」
「そっか、最近色んなことがあったからね」
「うん…」
「それで、今年の誕生日には何かして欲しいことがあるかなって」
「ん…何でも…いいの?」
「まあ、僕のお金が回る範囲ならね」
「それなら…ご主人さまが…欲しいかな…」
「えっ!?」
「ご主人さまに…抱かれたい…な」
「ち・ちょっとそれは、いくら何でも…」
自分の顔が少なからず紅潮していくのが分かった。
「フフッ、ご主人さま…冗談だよ…」
紅玲菜は自嘲的な笑みを浮かべてそう答えた。
「え、あ…まあ私はそれでも良かったんだけどさ」
「う…ご・ご主人さま…」
紅玲菜の頬も少し紅味を帯びてきた。
「でもまあ…」
チュッ
私から紅玲菜の唇への突然の口付け…
「いずれは、してあげるから…さ」
「う…うん…」
「それで、誕生日はどうしたいんだい?」
「んー…アタシはご主人さまが好きなようにして欲しいな…」
「でも、せっかくの紅玲菜の誕生日だしさ」
「うーん…じゃあ………」
「うん、いいよ。紅玲菜がそうしたいならさ」
「ありがと…ご主人さま…」
「どういたしまして」
チュッ
「んっ…ご主人さま…」
私はもう一度、紅玲菜の頬にそっとキスをした。と、そこに…
「あのーご主人さま、紅玲菜姉さん、いい雰囲気のところ悪いんですが…」
「あ…え…あっ…」
ちょっと顔を紅く染める紅玲菜。
「あれ?愛緒美、もうご飯かい?」
「はい、杏珠がお腹を空かせてしまって…」
時刻はもう19時半、よくよく耳を澄まして聞いてみれば…
「うー、お腹空いたよぉ…」
そんな杏珠の声。
「それじゃあご飯にしようか」
「そうだね…ご主人さま…」
私と紅玲菜は食卓へと向かっていった…。
 
そして誕生日当日…
「それじゃあ行ってくるね」
「行ってくるよ…」
「「いってらっしゃ〜いっ」」
ばたんっ
家を出た私と紅玲菜。
「じゃあ紅玲菜、行こうか」
「うん…」
かちゃん かちゃんっ
車のキーが開けられ…
「乗って、紅玲菜」
バタン バンッ
私と紅玲菜は車へと乗り込んだ。
「じゃあ行こうか、この前約束した場所に」
「そうだね…、雅兄」
ブロロロロロロ…
車は市街を西の方へと向かうように走り出した。
 
「着いたよ、紅玲菜」
「うん…」
と、そこは…
ザザーン… パシャンッ…
去年と場所が違えど、海であった。
「でも、どうして海にしようと思ったんだい?」
「え…何となく、この景色が好き…だから」
「…そっか…」
「それに…」
「それに?」
「誰にも邪魔されずに…二人っきりに…なれるから…」
「え…う…そうだね…」
その言葉にちょっと顔を紅くしてしまった私であった。
「じゃ・じゃあ外に出ようか」
「うん…」
カチャッ カチャン バタンッバンッ
私と紅玲菜は車から出て海の方へと向かっていった。
 
ザザーン… ザン…
この日の海はまだ誰もいない、ただ波の音だけが静かに鳴っている場所であった。
「そこら辺に座ろうか」
「うん…」
私と紅玲菜は、前と同じようにテトラポットの上へと腰を下ろした。
「静かだね…雅兄…」
「うん、まあまだ三月だしさ」
「それに…」
ぎゅっ
「く・紅玲菜!?」
紅玲菜が私にいきなり抱きついてきた。
「ちょっと…寒かったから…」
「ま・まあいいけどさ」
「雅兄…恥ずかしいの…?」
「まあね…それにしても、最近何だか積極的だね」
「二人っきりだから…ちょっとね…」
「そうなんだ」
ぎゅうっ
「雅兄…」
私も紅玲菜を抱き返してあげた。
「温かいな、紅玲菜」
「うん…雅兄…」
私と紅玲菜はしばらく何も考えずに、ただただゆっくりと流れる時間を過ごしていった…。
 
そしてお昼も過ぎて…
「それじゃあ例の場所に行こうか」
「うん…」
私と紅玲菜はある場所へと向かうために車へと向かっていった。
カチャッ カチャン バタンッバンッ
ブロルルルルルル
二人を乗せた車は少しだけ南へと向かっていった。
………
そしてとある場所の近くの神社へと、車は停まった。
「ちょっと歩こっか」
「うん、雅兄…」
私と紅玲菜は車を降りて、とある場所へと歩みを進めていった。
………
「ここがご主人さまの…」
「うん、私の出身小中学校だよ」
薄桃色の建物、それこそ私の出身の小学校と中学校であった。
「何も変わってないなぁ…」
「本当に?」
「うん、さすがに私自身は変わっちゃったけどね」
「そうだよね…雅兄…」
さすがにまだ学校は三学期、構内に入るのはやめにした。
「あ、雅兄…」
「何だい?紅玲菜」
「あの大きな樹って…」
紅玲菜はとある大きな樹を指した。
「ああ、あれかい?あれは楠だよ」
「楠…なんだ…」
「うん。私が在学中に、旧校舎のあった場所から移築してきた樹だよ」
「雅兄が…ここにいた頃に?」
「確か家に、これくらいの太さの写真立てがあったでしょ?」
「うん…」
「それはこの樹を移築してくる時に切った枝で、技術の時間に作ったものだからさ」
「そうだったんだ…」
「嫌な事も無かったわけじゃなかったけど、この学校は今となってはいい思い出さ」
「雅兄…」
「それじゃあそろそろ帰ろうか」
「そうだね…」
私と紅玲菜は停めてある車へと戻っていった…
 
そしてその車内…
「紅玲菜。はい」
私はトランクからある紙袋を取り出した。
「ご主人さま…これは…?」
「プレゼントだよ、紅玲菜のためのさ」
「開けてみていい…?」
「もちろんだよ」
ガサガサッ
「えっ…」
それは桜色のスカートであった。
「この前、愛緒美と一緒に買い物に行った時に選んだんだけどさ。気に入ってもらえたかな?」
その答えは…
チュッ
頬へと返ってきた。そして小さく…
「ありがと…」と。
「じゃあ帰ろうか、二人とも待ってるだろうしさ」
「うん…」
私の車のエンジンが静かなる神社の駐車場内に鳴り響いた…
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あとがき
この天使のBSSを書く時期はどうも雪が降りやすいようです、雅です。
て言うか、いつになったら春になるんですか?新潟は。(去年と同じセリフ)
これにて2004年度BSSを本当に完結と致します。
ちなみにオリジナル守護天使のSSタイトルも林原さんの曲名から取りました。
そうそう予告通り来年度4月より、守護天使誕生日小説シリーズを再開致します、お楽しみに。
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2004・03・14MON
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