With My Brother(雅兄と一緒〜紅玲菜BSS〜)
それは三月も半ばの頃の事…
「ご主人さま…」
「ん、何だい紅玲菜」
「もうすぐ、あたしの誕生日…なんだけど…」
「あ…そういえばもうそんな時期か」
「あたしの誕生日、ご主人さまは休み…?」
「あ、うん。もう春休みに入ってるから」
「良かった…」
「ん、どうしたんだい?」
「その日…あたし、ご主人さまと出掛けたいんだ…」
「何だ、そんな事ならお易い御用だよ」
「ありがと…ご主人さま…」
チュッ
紅玲菜は突然私の唇を奪った。
「えっ…く・紅玲菜!?」
「あーっ!紅玲菜お姉ちゃんがご主人さまにキスしたーっ!」
「…ん?あ、こ・こらあっ杏珠っ!」
自分でした事の恥ずかしさを漸く分かったのか、紅玲菜は顔を紅くした。
「ま、まあ怒らなくてもいいじゃないですか、紅玲菜姉さん」
「う…まあそうだけど…」
「美味しかったよ、紅玲菜の唇」
「ご主人さままで…」
紅玲菜の顔はもう既に真っ赤だ。
ぴとっ
「私は事実を言ったまでだよ」
そんな事を言いながら私は、紅玲菜の唇を人差し指で塞いだ。
「(ご主人さまの指があたしの唇に…もう…我慢できない…)」
ばっ ぎゅうっ
「く・紅玲菜っ!?」
紅玲菜はいたたまれなくなったのか、座っていた私へと抱き着いてきた。
「あーっ、紅玲菜お姉ちゃんずるーいっ!」
「あ…ごめん、ご主人さま…」
「いいよ紅玲菜、恥ずかしかったんだろ」
「うん…」
「どうしたんだい?何だか今日の紅玲菜は、甘えん坊さんだね」
「…たまにはあたしだって、ご主人さまに甘えたいんだ…」
「ま、いいけどさ」
「それではご飯にしましょうか」
「ごっ飯〜ごっ飯〜」
こうしてこの日の夜は更けていった…。
…そして当日…
「準備はいい?紅玲菜」
「うん、いいよ…」
「じゃあ二人とも、あとは頼んだよ」
「「はーい」」
「じゃ、行ってくるね」
「行ってくるよ…」
「「行ってらっしゃーい」」
バタンっバタンっ ブルルルルル…
車は家から出発していった。
「あ、そういえばどこに行きたいんだい?紅玲菜」
「雅兄、海…行きたいな…」
「え、どうして?」
「静かな所に行きたいから…」
「じゃあちょっと遠くの海にしようか」
「うん…」
そして車は海へと進路を変えていった…。
バタンっ バタン
そして家から少し遠くの海岸へと来た二人…
ザザーンザザーン
「風が気持ちいいな、紅玲菜」
「ん、雅兄…」
「そこに座ろうか」
「うん…」
二人でテトラポットの上へと座った。
「寒くないかい?」
「大丈夫…」
びゅううんっ
突然の風…
「うっ、寒っ…」
「大丈夫かい?」
ぎゅうっ
私は紅玲菜を抱き寄せた。
「あっ・ま・雅兄っ…」
「この方が暖かいだろ」
「そ・そうだけど…」
「だからさ…」
チュッ
私は紅玲菜の頬へとキスをした。
「雅兄、恥ずかしい…」
「ま、私もだけどね」
春の海岸に二人以外の姿は無い。
「でも…」
「ん、でも?」
「こうして、雅兄と一緒に…いられるだけで…幸せだから…」
紅玲菜は頭を私の肩へと乗せた。
「そっか…」
くしゃっくしゃっ
そんな紅玲菜を私は撫でてあげた。
「く・くすぐったいよ、雅兄…」
「そう?」
「うん、でも…気持ちいい…」
「………」
「大きくて…温かくて…」
暫く二人で何をする訳でもなく、唯々ゆっくりとした時の流れを感じていた…。
………
ひゅううんっ
「んっ!」
私は風に起こされた。どうやら二人でそのまま眠ってしまっていたようだった。
ゆさゆさ
「紅玲菜、紅玲菜」
「んっ…ま、雅兄…」
「紅玲菜、そろそろお腹空かない?」
「うん、そうだね…」
太陽はちょうど南中、確かにもうお昼にはいい時間だ。
きゅるるるる
と、そこにお腹が鳴る音。
「あ、恥ずかしい…雅兄に聞かれるなんて…」
「紅玲菜、昼ご飯にしようか」
「う・うん…」
と、車に戻った二人。
「はい、雅兄…」
「えっ、お弁当作ってきてたんだ」
「うん、愛緒美に…手伝ってもらって…」
「それじゃあいただくね」
「うん…あ、ちょっと待って…」
ぽんっ
「あ、おしぼりか…」
「うん…」
きゅっきゅきゅっ
「サンキュ、紅玲菜」
「ん…」
「じゃああらためて、いただくね」
「うん、食べて…」
ひょいっ
私はお弁当箱の中からおにぎりを選んだ。
はむっ んっんぐっ
「どう?雅兄」
真剣な眼差しで私を見つめる紅玲菜。
「うんっ、美味しいよ」
この一言に紅玲菜の顔は笑顔へと変わった。
「よかった…」
「でも」
「でも…?」
チュッ
「ま・雅兄っ!?」
「甘さもこれでいいかな」
「雅兄…」
「ん?」
「あたしも…食べていい?」
「いいよ、紅玲菜」
紅玲菜は照れた様子でご飯を食べ始めた。
夕方…太陽が海に沈んでいく…
「はい、これ」
「何?これ…」
「ん?誕生日プレゼントだよ」
「あ・ありがとう…開けていい…?」
「うん、いいよ」
ぱかっ
「えっ…いいの…?」
「いいんだよ、それは紅玲菜の為のものだから」
その中にはコーラルが入った指輪が入っていた。
「ありがと…雅兄…」
チュッ
橙色の夕日を横目にキスをした…そして車に戻りゆく二人を、夕日は暖かく照らしていた…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
今日、新潟は雪が降りました。
て言うか、いつになったら春になるんですか?新潟は。
3月、ということで紅玲菜のBSSです。
オリジナル守護天使に関しては、来年度もBSSは書く方向でいます。
ま、これからも愛緒美、紅玲菜、杏珠をよろしくです。。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2004・03・04THU
雅