Growth and Accent and...(成長と口調と…〜杏珠BSS〜)

「初めてだね、お兄ちゃん」
「え…何がだい?杏珠」
「杏珠の誕生日が休みになるのって初めてだったよね?」
「そうだよな…今までは全部平日になってたからなあ…」
杏珠と私は車で少し遠くのある場所へと向かっていた。
………
時は一週間前まで遡る…
「ご主人さまっ」
「ん?何だか嬉しそうにどうしたの?杏珠」
「だってもう来週だよ、楽しみだもん」
「来週って…そうか、杏珠の…何歳の誕生日だっけ?」
「13歳だよ、だってご主人さまと10こ違うんだもん」
「杏珠ももう13か…そうだよな、もう来てから5年経つんだな」
「杏珠が最初に来たのって8歳の時だっけ?」
「うん、私がまだ高専の3年生の時だったかな」
「愛緒美お姉ちゃんも紅玲菜お姉ちゃんも、もう居たんだっけ?」
「そうだよ。来たのは紅玲菜と同じ年だけどね」
「えっ!?そうだったの?」
「そうだけど…杏珠はその話とかは聞いてなかったの?」
「うん、そういえば聞いてなかった気がする」
「確か能力の値が関係するとか言ってたけど、それで愛緒美の方が先に満たしたとか言ってたな」
「あ…思い出したかも。紅玲菜お姉ちゃんの方が向こうに長く居た気がするよ」
「まあここに来たらさ、もうそんなの関係ないけどさ」
「そうだね、でも…杏珠はここに来て成長したかな?」
「それは内面的に?それとも外見が?」
「うーん、両方だよ」
「えっと…外見は背もだいぶ伸びたし、その…さ」
「え?どうしたのご主人さま、顔が紅いよ」
「そのさ、胸とかも成長してるんだなって」
「あっ…ご・ご主人さまっ!」
「だから言うのを躊躇したんだよ」
「でも…どうして分かったの?見せたことは…無いよね?」
「たまに飛びついてくるからさ、背中で感じるんだよ」
「そっか、じゃあ内面的なのはどうかな?」
「難しいな…変わってないと言えば変わってないけどさ」
「それって本当はダメだよね」
「そうかな?私はそれでも構わないと思うけどさ」
「どうして?」
「だってさ、それこそが杏珠が杏珠たるゆえんなんだからさ」
「でも…子供っぽくないかな?杏珠って」
「それが杏珠らしさと言えば杏珠らしさなんだよ。んー、でも口調くらいはそろそろ大人っぽくなって欲しいかな」
「あ…でもそう簡単には治らないよ。だけど…うん」
「あ、そういえば何でこんな話になったんだっけ?」
「…そうだった、杏珠の誕生日の話だよ」
「そうか、それで…何だったっけ?」
「んー…確かまだ何も言ってなかった気がするよ」
「そうだよね、どこか行きたいところでもあったの?」
「それが無いから困ってるんだよ」
「そっか…5年目だもんなあ、色々行ったからね」
「だからご主人さまと相談しようかなって思ったんだ」
「なるほどね、でもそうだな…あ、そうだ。奏歌と愛緒美は連れてったけど…杏珠はまだだっけかな?」
「え?どこのこと?」
「あの温泉だよ、家族風呂がある温泉」
「…うん。杏珠はまだだよ」
「そこに連れてってあげようか?二人で話すことなんてずっと無かったしさ」
「う…うん」
「どうしたの?杏珠、何か顔が紅いけどさ」
「愛緒美お姉ちゃんから聞いたんだけど…その…」
「えっと…その、あの話?」
「うん、たぶんご主人さまが想像したとおりだと思うよ」
「じゃあ止めようか、やっぱり」
「ううん…行きたい」
「えっ…」
「だって愛緒美お姉ちゃんと奏歌ばっかりずるいよ。杏珠だってもう中学生だよ」
「本当に…いいんだね?」
「ご主人さま…うんっ」
「分かった、そこまで杏珠が言うんなら行こうか」
「ご主人さまに杏珠のことをもっと知ってもらいたいからね」
「杏珠のこと…か」
「ご主人さまのことも、もっと知ってみたいよ」
「う…ま、まあいいや」
「じゃあちょっと待ってて、手配してくるからさ」
「うんっ」
………
「お兄ちゃん、あとどれくらいなの?」
「確かあと2時間くらいかな、次のパーキングエリアで休憩取るからさ」
「お昼ごはんもそこで取るの?」
「どうしようかな、昼ごはんよりは早く着きそうだしな…」
「それとも途中で買ってく?」
「うーん、杏珠が決めてくれるかな?」
「じゃあ降りてから途中で食べてこうよ」
「いいけど、どんなところで食べたいか決めておいてね。場所はそれなりに分かるからさ」
「うん」
………
温泉に着き、ここは家族風呂の中…
「杏珠、隣に入りな」
「やっぱり恥ずかしいよ…」
「愛緒美の時と同じだな、しょうがないか」
「でも…」
「あ、でもちょっと愛緒美とは違うかな」
「どうして?」
「だって愛緒美の場合は、ドアから入ってくることさえ躊躇ってたもんな」
「そ・そうなんだ」
「まあ隣に入ることは無理強いしないよ」
「そういう風に言われると…隣、失礼するね」
ザプンッ
杏珠は私の隣へと浸かってきた。
「ご主人さま」
「何だい?杏珠」
「今日は沢山ご主人さまのことを教えてね。杏珠も教えてあげるから」
ようやく秋に入りかけたこの空気と、杏珠の言葉にどこか癒されていった私であった…
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あとがき
ようやく秋めいてきましたね、雅です。
オリジナル守護天使誕生日SS2007の2本目です。
杏珠ももう13歳ということでこういう形にしてみました。
いくら元気っ子とは言え、この辺はやっぱり女の子なんですよ。
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2007・10・06SAT
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