Gaze up at Firmament(大空を見上げて〜杏珠BSS〜)
「んー、風が気持ちいいねー、お兄ちゃーん」
「うん、今日がこうして晴れてくれて本当に良かったよ」
私と杏珠の二人はとある高原へと来ていた。
………
「ご主人さまー、えっと…今週の金曜日って大丈夫なの?」
「金曜日か…うーん、ちょっと微妙だな…」
「これで4年連続だよぉ、ご主人さま…」
そう。去年・一昨年・一昨々年と、杏珠の誕生日にはまともに一緒に居てやれていないのだ。
「こればっかりは本当にゴメン…んー…先生さえ許してくれれば今年はなんとかなると思うけど」
「本当?本当に本当だよね?」
「うん、どうせもう授業は卒業研究だけだしさ」
「でもご主人さま本当に大丈夫なの?」
「杏珠に心配されるほどじゃないよ。自分のことは自分が一番分かっているからね」
「それなら良かったあ」
「ん?どうしたの?」
「ご主人さま、連れて行って欲しかった所があるんだ」
「なるほどね、それでどこなんだい?」
「ここなんだけど…ダメ?」
「え…私はいいけど、こんな近くでいいのかい?杏珠は」
「うん」
「こんな近くじゃなくても、もっと遠くでも構わないのに」
「杏珠はご主人さまと一緒に過ごせればどこでもいいんだよ」
「う…うん、分かったよ。杏珠がそう言うのならそうしよう」
「あ、でも…」
「でも、どうしたの?」
「やっぱり何でも無いよ。ご主人さまにも内緒にしておくよ」
「うーん、気になるけどまあいいか。じゃあ当日は朝ちょっと作業してからだから…9時前には出ようか」
「う…そんなに早く起きれるかなあ?」
「おいおい、杏珠。いつも起きてる時間よりずっと遅いんだからさ」
「でも、起きてもご飯食べたりお弁当作ったり、時間が足りないよ」
「何時がいいんだい?私が起きている時間なら起こしてあげるからさ」
「えっと…6時って大丈夫なの?ご主人さま」
「いつも起きてる時間だから大丈夫だよ。そういえば杏珠っていつも7時半くらいだったっけ?」
「うん、だけど最近は7時くらいに起きようと思ってるんだよ」
「そうなんだ、そういえば家を出る前に起きているのをたまに見てたけど…」
「でもなかなか続かないんだよ…うーん、ご主人さまの力は借りたくないけど…」
「いいんだよ、こういう時くらいはさ」
「んー、ご主人さまありがとっ」
スリスリ
杏珠は私の胸へと頬擦りをし始めた。
「こ・こら杏珠、くすぐったいってば」
「でも、ご主人さまの温もりも伝わってきて気持ちいいんだよー」
「まあ別にいいけどさ」
「温かくて…何だか眠たくなってきちゃったよぉ…」
「こらこら。あ、そういえば最近またみんなで夜更かしし始めたでしょ?」
「あ…え…やっぱりバレちゃってるの?」
「聞こえてるからね、もちろん分かってるさ」
「えっと…ゴメンなさいご主人さま」
「いや、私はいいんだけどさ。ちょっと近所迷惑になってるかもしれないから気をつけてね」
「う・うん。あ、でもご主人さまってそんな時も入って来ないよね?」
「それはまあ、4人だけの空間にいきなり入ったら失礼だろうしさ」
「別に杏珠は構わないんだけどなあ」
「杏珠はいいかもしれないけどさ、愛緒美も紅玲菜ももう年頃だしさ…」
「………」
「杏珠だって今年で12歳だよね?いきなり入って来られたら困る事だってあるだろ?」
「う・そう言われてみればあるかも…」
「だからさ、あくまで女の子だけのみんなの部屋には入らないことにしてあるんだよ」
「そっか、ご主人さまって何だか偉いなあ」
「でもよっぽどのことがあれば入ったりはするけどさ」
「え?どんな時なの?」
「多分愛緒美以外は知らないかな」
「え?え?え?」
「私のお酒を飲んだりして寝ちゃったときだよ。愛緒美以外はよくあるからさ」
「あ…う…」
「でもそれで可愛い寝顔が見られたりするからおあいこかな」
「うぅ…」
少し頬を紅く染める杏珠。
「えっと、じゃあ当日は6時に起こせばいいのかな?」
「うん…あ、でもそうするとお姉ちゃんたちや奏歌に迷惑になっちゃうかな?」
「それもそうか…まあ愛緒美は起きてるけど…あ、そうだ!」
「え?どうしたの?ご主人さま」
「杏珠、前日だけ私の部屋で寝るかい?」
「ご主人さまがそうしてくれるなら、杏珠はそれがいいな」
「それじゃあそうしよっか。それが一番いい気がするしさ」
「うんっ」
そう応える杏珠の顔はすっかり笑顔になっていた。
そして当日の朝…
「ほら杏珠、起きて。もう6時だよ」
「んー………くぅ…くぅ…」
「まったく…可愛い寝顔を見せてくれるな。でも起こさなきゃだから…しょうがないな」
チュッ
私は杏珠の唇へとそっと口付けをした、すると…
「ん…んーーーっ!あれぇ?どうして杏珠、ご主人さまの蒲団の中に居るんだろう?」
「おはよう杏珠、昨日のことは憶えてないのかい?」
「おはよう、ご主人さま。あー、うん思い出したよ」
「さあ起きてね。私ももう起きるからさ」
「うんっ!」
そして二人の朝が始まっていく…
………
「お兄ちゃん、気持ちいいねー!」
「うーん。雲一つ無くて綺麗な青空だなー」
私と杏珠の二人は木陰に座っていた。その空は澄み切った真っ青な秋空だった。
「これだけ綺麗な空、久し振りかもなあ…」
と、そこに突然杏珠の顔が…
「お兄ちゃん、今日はありがとだよっ!」
チュッ
私の唇に乗った奏歌の唇は温かく、少し昼に食べた海苔の味がしていた。
「どういたしまして、杏珠」
そのまま見上げ続けた空は、太陽以外に物は無い果てしなく抜けるような蒼い空であった…
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あとがき
ふう、一気に書いてしまえー、雅です。
オリジナル守護天使誕生日SS2006の2本目です。今回もタイトルの頭には「大」です。
タイトルの共通点、そうだなぁ…つばさらへんまで行ったら公表します。
杏珠とはこういう時間を過ごしたい、それを形にしてみました。
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2006・09・13WED
雅