With My Brother(お兄ちゃんと一緒〜杏珠BSS〜)

残暑も終わり、秋の気配も深まりつつある10月のある日…
「ご主人さま〜」
「ん、何だい?杏珠」
「ご主人さまって、杏珠の誕生日は暇なの?」
「え…えっと…うーん…学校があるなあ…」
そう、その日は月曜日。普通の学生である私には、さすがに学校がある。
「えー…」
「しょうがないよ杏珠…ご主人さまだって忙しいんだから…」
「うーん…杏珠って私と一緒に出掛けたいの?」
「うんっ、そうだよ」
「じゃあ出掛けるの、11日まで我慢できない?パーティは杏珠の誕生日にやるからさ」
「う〜…うんいいよ、だってご主人さまのことが好きだもん」
「ありがとう杏珠、変わりに11日は、どこでも好きな所に連れていってあげるよ。でも私がお金を出せる範囲でね」
「え!?どこでもいいの?」
「うん。誕生日に一緒にいられないから、それくらいわけないさ」
「えっとぉ、じゃあねぇ…遊園地っ!」
「うん、いいよ。じゃあ…あの遊園地にしようかな」
そうしてその夜は過ぎていった…。
 
そして杏珠の誕生日の夕方…
「誕生日おめでとう、杏珠」
「ありがとー、ご主人さま〜」
「はい杏珠…あたし達二人からのプレゼント…」
「ありがと〜、お姉ちゃん。開けてもいい?」
「いいわよ、杏珠」
がさがさがさ
杏珠が少し大きめな袋を開けると…
「うわあ…こんな貰っていいの?お姉ちゃん」
「うん…杏珠が一番喜びそうだと思ったから…」
そこには、大きな栗鼠のぬいぐるみが入っていた。
「これ、大切にするっ!」
「杏珠にそう言ってもらえて良かった」
「あれぇ?ご主人さまのは?」
「あ、私のかい?私のは土曜日に渡すから。そっちのほうがいいでしょ?」
「ん〜、うん。杏珠、そっちの方がいいな」
「それじゃあご飯食べようか、せっかくの料理が冷めちゃったら美味しくないしね」
「そうですね。杏珠、今日はいっぱい食べていいのよ」
「え?いいの?」
「いいよ…今日は杏珠のために沢山作ってあるから…」
「それじゃあ…」
「「「「いただきまーす」」」」
こうしてその日の夜は更けていった…。
 
そして時は流れて10月11日の土曜日…
「ご主人さま、朝だよ〜」
「ん…んーー…あ…朝か…」
「おはよー、ご主人さま」
「あ…杏珠、おはよう」
「今日は楽しみだねっ」
「うん、そうだね。よしっ、じゃあご飯食べたら行く準備をしようか」
「うんっ!」
………
「杏珠、行く準備できた?」
「うん、大丈夫だよごしゅ…じゃなくてお兄ちゃん」
「じゃ、行こうか」
「うん」
「それじゃあ紅玲菜、愛緒美、あとは頼んだよ」
「「はい」」
バタン
「よし杏珠、車に乗って」
「うん」
バタン バタン ブルルルル…
私と杏珠の二人を乗せた車は一路、新潟中央I.C.より、磐越自動車道方面へと進路を進めていった。
 
安田I.C.で車は高速を降りて遊園地へと向かっていった。
「お兄ちゃん、あれが遊園地?」
「うん、あともう少しだよ」
「あ、こっちだね」
「よし、敷地の中に入ったし…あ…あそこに停めようかな」
シュー カチャカチャ カチャン
「よし、行こうか」
「うんっ」
バタン バタン タタタタ
「こーら杏珠、勝手に行かないで、迷子になったら困るからさ」
「あ、お兄ちゃんごめんなさい」
「ほら杏珠」
私はそっと手を差し出した。
ぎゅっ
杏珠はその手を2/3位しかない手のひらでしっかりと握ってくれた。
「よし、じゃあ行こう」
「うん、早く行こうよっ」
杏珠は握った手を離さないように私を引っ張っていった。
………
「えっとじゃあ…ゴールデンフリーキップの大人と子供一つずつお願いします」
「はい、7100円になります」
「じゃあこれで」
「10000と100円からですね、それではお釣りの3000円とこれを首から提げてください」
「はい」
「お兄ちゃ〜ん」
「お待たせ、杏珠。これを首から提げてね」
「うん、これでやっと中に入れるんだね」
「そういうことになるかな、」
「じゃ、行こっ」
こうして私と杏珠は遊園地の中で様々な乗り物を楽しんだ…いつまでも握っていた手は離さずに…
………
「はい次の方どうぞ」
「乗るよ、杏珠」
「うん、お兄ちゃん」
そして最後の乗り物「大観覧車」に乗った二人…
「うわあ…ずいぶん高いところまで上がっていくんだね、お兄ちゃん」
「うん、あの辺が日本海ってことは…家はあの辺かな…」
「そうかなあ…杏珠はあの辺だと思うけど」
「ま、いっか。でも…綺麗だね…夕日が…」
「うん、そうだね…」
「…あ、そうだった」
「え、何なの?お兄ちゃん」
「はいこれ、私からのプレゼント」
「開けていい?」
「もちろんさ、それは杏珠のためのものだからさ」
パカッ
「え…これを杏珠がもらっていいの?」
それは小さいながらもトルマリンが入った指輪であった。
「うん、サイズは合ってるはずだよ」
ツツツツツ
それは杏珠の薬指へと綺麗に収まっていった。
「ありがとっ!ご主人さま」
そうして二人の乗ったゴンドラは地上へとたどり着いていった。
 
帰りの車の中…
「杏珠、家に着いたよ。杏珠…」
くぅ…すぅ…
「今日はいっぱい遊んだしな…」
私はそっとその体を抱きかかえて…
チュッ
その可愛い唇にキスをして家の中へと入っていった…。
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あとがき
えー…ただいまテスト6日前です…(現実逃避)
そろそろ杏珠の誕生日が近いので、杏珠のBSSとしました。
実はこの杏珠の誕生日当日は、そんな事やってる場合じゃないほど緊張してるはずなんです…。
次の日に企業実習の報告会なもんで、3・4年生・先生方による聴講らしいんでね…。
テスト前、現実逃避です。
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2003・09・13SAT
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